アメリカ、イギリス、フランスなどによるシリアへの軍事介入が現実味を帯びています。他国が軍事力を持ってシリアに介入する正当性、根拠はあるのでしょうか。シリア内部の政府、反政府軍による戦闘で多くのシリア市民が犠牲になっていることはあきらかです。だからといってアメリカなどが軍事介入する正当性にはならないはずです。また、アメリカオバマ政権が化学兵器を使ったことが許せない。だから軍事介入は正当性があるとしていますが、いかなる紛争、戦争においても化学兵器の使用は非人道的であり、使用しない。このことは当然であり、戦争であっても許すことは出来ないものです。しかし、だからといってアメリカ、イギリス、フランスがシリアへの軍事介入が正当性を持つことにはなりません。
国連安全保障理事会の常任理事国ロシア、中国がシリアへの軍事介入に反対を表明しています。国連の決定がすべてではありませんが、常任理事国の中でも意見が一致しない軍事攻撃、介入はルールから言っても行ってはならないものです。
同時に、化学兵器使用があったかどうかも国連調査団の調査、報告を待つ必要があります。その調査結果を待って、国連、当事国などが政治的に話し合いを持つ必要があります。
紛争行為を軍事的に解決することができる考えることは傲慢であり、間違いです。現実にアメリカブッシュ政権がイラク攻撃、フセイン政権を転覆してもイラクにおける問題は解決していません。該当国における民族対立、紛争を解決するとしたら、その代表者が話し合いを通じて、結論を導き出す以外、その国の将来は政治的に安定することはありえないことが歴史が証明しています。
<報道記事>
国連安全保障理事会の5常任理事国(米国、英国、フランス、ロシア、中国)は28日、英国が提示した対シリア安保理決議案をめぐり協議したが中ロが反対を表明、物別れに終わった。米政府はこれを受け、決議案採決の必要性はないとの考えを表明。決議なしで軍事介入を最終決断する姿勢を鮮明にした。
オバマ米大統領は同日、米公共放送PBSのインタビューで、シリアでの21日の大規模な化学兵器攻撃をアサド政権が実行したと「結論付けた」と明言した。
化学兵器を使用した疑惑でシリアに対する米欧の軍事介入圧力が強まっている。外交手段は尽きたのか。人道介入であれ、武力行使の被害を受けるのは常に弱い一般市民であることを想起したい。
<社説>
シリアに対する米軍介入の動きが日々現実味を増している。
ダマスカス近郊で多数の子供を含む千数百人の市民が化学兵器により殺害されたとの反政府勢力の訴えを受け、ケリー米国務長官が「アサド政権の責任」を明言したのに続き、ヘーゲル国防長官は、軍事行動の準備を整えたことを明らかにしている。ロシアと中国の介入反対で国連安保理決議の承認が得られる可能性は少ない。念頭に置かれているのは、一九九九年のコソボ紛争型介入とされる。北大西洋条約機構(NATO)軍のユーゴスラビア空爆は、ミロシェビッチ大統領によるコソボ自治州のイスラム系住民に対する虐殺をやめさせる人道介入と位置付けられた。ロシアが国連憲章違反に当たるとする安保理決議案を提出したが、大差で否決された経緯がある。
コソボはその後、国際司法裁判所での独立合法判断を得て、欧州連合(EU)への加盟交渉へ道を開いた。欧米社会では介入の正しさを示す成功例とされている。しかし、欧州のコソボと、中東のシリアでは全く事情が異なる。オバマ政権は、アフガニスタンとイラク二つの戦争の負の遺産からようやく抜けだそうという段階にある。英仏など欧州主要国も、厳しい財政状況を背景に、武力行使にはできれば踏み切りたくないのが本音だ。空爆を限定的に行ったとしても、地上軍の派遣の可能性が排除されている以上、アサド政権に及ぼし得る効果は疑問だ。
現状での武力行使は度重なる警告に耳を貸さなかったアサド政権への懲罰的意味合いにとどまる可能性が高い。出口戦略なき武力介入の悲惨は米国が経験したばかりだ。60%が介入反対という米世論調査もそれを裏付けている。曲がりなりにも、国連調査団が現地入りするところまで外交努力は進んでいる。米側は明らかな証拠があるとしているが、イラク戦争での大量破壊兵器をめぐる教訓もある。まずは調査団の報告を待つのが筋ではないか。
ロシア、中国とて化学兵器使用が人道上許されない国際法違反行為であることに異論はあるまい。その一点でも合意できれば、外交の糸口は残されている筈(はず)だ。