海外ミステリ専門書店。特に、イヌ、ネコ、その他の動物が活躍するのが好き。グルメも紹介。
ミステリ専門書店(翻訳もの限定)
ワニと読むミステリ(消えたカマンベールの秘密)
![]() | 消えたカマンベールの秘密 (コージーブックス) |
エイヴリー・エイムズ | |
原書房 |
![]() | Clobbered by Camembert (CHEESE SHOP MYSTERY) |
Avery Aames | |
Berkley |
読むと、利害はあっという間にひっくり返る。
(エイヴリー・エイムズ著)
チーズ・ショップのミステリ第3弾。
オハイオ州プロヴィデンスは冬祭りの準備中。チーズ&ワイン専門店〈フロマジュリー・ベセット〉の店主シャーロットも出店の準備に大忙しです。そんなところへケイトリンがプロヴィデンスに戻ってきて、農場を買おうとしているようで、さらにシャーロットの両親についても何か知っているらしい。しかし、ケイトリンはシャーロットのアシスタントのレベッカの家で死体で発見され、容疑者はレベッカのボーイフレンドです。彼は養蜂家で、ハエも殺せないような人物です。シャーロットは真犯人を見つけるために奔走します。
もう3作目ですね。今回はたびたび話には登場していたシャーロットの元婚約者チップがプロヴィデンスに帰ってきてシャーロットに復縁を迫り、またレストランを開業しようとしているというややこしい事態が発生します。シャーロットには付き合っている人がいるけど仲はぎくしゃくしている最中。 またシャーロットのいとこマシューの元妻シルヴィが舞い戻って何かとお騒がせで、冬祭りはあるはで混乱気味です。だいたい登場人物が多すぎてワニ頭ではなかなか覚えられず、たびたび人物表のお世話にならないと誰がだれだかわからなくなります。もっと整理して!と叫びたい。ワニだけかな。
犯行現場にはかなり無理があると思われますが、まぁ、目をつぶりましょう。
今回もチーズのウンチクといくつかのレシピがあります。
■既刊
すでに2冊あり。
名探偵のキッシュをひとつ ← 新装開店のときに店の大家が殺されます。
チーズフォンデュと死の財宝 ← ワイナリーを大学に変える試みで殺人が起こります
■ブリアード
シャーロットの飼い犬、ロケットが出てきますが、これは、ブリアード種だそうです。
牧畜犬で、体高60cmちょっと、体重40kg前後、だそうです。
参考:http://www.animal-planet.jp/dogguide/directory/dir03500.html
人気があるようでいろんなグッズがあるようです。かわいいですからね。
![]() | 刺繍ブリードネクタイ ブリアード |
主人公: シャーロット・ベセット(チーズ&ワイン専門店店主)
場所: USA、オハイオ州プロヴィデンス
グルメ: チーズ関連。レシピあり。
動物: ネコ:ラグズ(シャーロットの飼い猫)
イヌ:ロケット(シャーロットの飼い犬。ブリアード種)
ユーモア: 中
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ワニと読むミステリ(A Cat Named Brat )
![]() | A Cat Named Brat (Alice Nestleton Mystery) |
Lydia Adamson | |
Signet |
読むと、ネコを道具にしてはいけません。
(Lydia Adamson著)
女優のAlice Nestletonは、ニューヨークのガイドブックを書いているLuis Montagから頼まれてキャット・シッターをすることになります。週に数時間Montagの家でネコのBratの面倒をみるのです。キャット・シッターの初日、キャット・ウォーカーがBratを連れて帰るのを待っていると、ドアベルが鳴りAliceが出ましたが、何者かに殴られて気を失ってしまいます。Aliceが気がついてみるとMontagは殺されていました。単純な物盗りの犯行かと思われましたが、ネコのBratは行方不明でAliceが調べていくうちに、Montagの書いていたガイドブックにすでに閉店している店がいくつもリストされていることがわかり、おかしなことが起こっている気配があります。
Aliceは友人Samの助けを借りてBratの行方を探し、事件解明をしようとします。
このシリーズはまだ日本語訳になっていないようですね。おもしろいのに残念です。
後足の指が6本というネコが出てくるのですが、こんなのが店にいたら都市伝説の1つになりそうですね。ニューヨークのレストランにはネコを飼っているところが多いそうで、ネズミ対策というのですが、こういうのは日本のレストランでもあるのでしょうか。ネズミ対策に飼い猫というのはなかなか良い響きです。ネズミ捕りコンテスト、とかあったりして。
■既刊
これまでに読んだのは、その他1冊です。シリーズは20冊以上あるようです。
A Cat of One's Own
主人公: Alice Nestleton(女優。キャットシッター)
場所: USA、ニューヨーク
グルメ: なし
動物: ネコ:Pancho & Bushy (Aliceのネコ)
Pickles (ベンガルキャット、Samのネコ)
ユーモア: 中
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ワニと読むミステリ(九十歳の誕生パーティ )
![]() | 九十歳の誕生パーティ (創元推理文庫) |
レスリー・メイヤー | |
東京創元社 |
![]() | Birthday Party Murder: A Lucy Stone Mystery (Lucy Stone Mysteries) |
Leslie Meier | |
Kensington Pub Corp (Mm) |
読むと、年はとっても油断はしません。
(レスリー・メイヤー著)
元司書のミス・ティリーはもうすぐ90歳を迎えます。ティンカーズコーヴは町をあげてのお誕生祝いをしようとその準備に大忙しです。ルーシーもパーティの計画を練りますが、それとは別に加齢との戦いを開始する決心をします。目じりのシワにぽっちゃりお腹。しかしもっとも必要なのは強力なシワとりクリームのようです。
町のもっとも古い事務弁護士シャーマン・コブが死んでいるのが発見されますが、病気を苦にしての自殺と思われます。それに納得のいかないボブ・ゴールドマン(シャーマンのジュニア・パートナー)はルーシーに調査をしてくれるように頼みます。断りきれないルーシーは調査を約束しますが、犯罪の証拠を見つけることができるでしょうか。
ミス・ティリーのお世話をしているレイチェルの心配は突然現れたミス・ティリーの姪というシャーリーとその息子スネークのことです。彼らはミス・ティリーの家に住みつき、ミス・ティリーを誰にも会わせないようにしています。どうも怪しいと思うレイチェルはルーシーに助けを求めます。
ミス・ティリーは無事に90歳の誕生日パーティをお祝いすることができるでしょうか。
主婦探偵ルーシー・ストーンのシリーズ第9弾です。もう9冊めなんですね。もう本国では新しい作品が出版されているようですので、このあともティンカーズコーヴのミステリが楽しめそうです。
今回はミス・ティリーが大変な目にあいますが、持ち前の不屈の精神と鋭い知性で闘うところはあっぱれです。
お話の中でボブが参加している南北戦争再現グループの解説が巻末にあり。今年はゲティスバーグの闘いから150周年記念ということで7月4~7日までゲティスバーグ郊外の国立軍事公園で6千人が参加して大々的に戦闘の再現がおこなわれるそうです。
■既刊
だんだんと子どもたちも大きくなり、思春期の難しい時期に入りました。
最初は通信販売の会社で臨時雇いをしていたルーシーは、今では週刊新聞『ペニーセイヴァー』新聞記者としての仕事が板についてきました。
メールオーダーはできません
トウシューズはピンクだけ
ハロウィーンに完璧なカボチャ
授業の開始に爆弾予告
バレンタインは雪あそび
史上最悪のクリスマスクッキー交換会
感謝祭の勇敢な七面鳥
はた迷惑なウェディング
主人公: ルーシー・ストーン(ミステリ好きの主婦)
場所: USA、メイン州ティンカーズコーヴ
グルメ: なし
動物: イヌ:クードー
ユーモア: 中
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ワニと読むミステリ(ベンスン殺人事件)
![]() | ベンスン殺人事件 (S・S・ヴァン・ダイン全集1) (創元推理文庫) |
S・S・ヴァン・ダイン | |
東京創元社 |
![]() | The Benson Murder Case |
S. S. Van Dine | |
Hesperides Press |
読むと、残された状況の語ることに耳を傾けましょう。
(S・S・ヴァン・ダイン著)
アマチュア探偵ファイロ・ヴァンスのシリーズ最初の作品です。ファイロ・ヴァンスを最初に読んだのはいつなのか、どの作品なのか、もう記憶にございません。
これは新訳です。
1926年刊。
証券会社の経営者アルヴィン・ベンスンは、ある朝射殺体で発見されます。くつろいだ部屋着姿でいかにも読書中だったように見えました。すぐに有力な容疑者が見つかり、事件は容易に解決すると思われましたが、そこへファイロ・ヴァンスが登場です。彼は、警察には見えない手掛かりを指摘し、事件は複雑な様相を帯びてきます。
このころの探偵役の人物はみな博識ですね。やたら知識をふりまわすディレッタントのタイプ。ウンチク満載といったところでしょうか。ファイロ・ヴァンスは、「心理的探偵法」を唱え、「真相を知るには犯罪の心理的要因を分析して、それを人物に適用する。」という方法をとります。今だと、プロファイリングと言われる手法がこれに近いのでしょうか。
地方検事マーカムと親しく、実際の事件をぜひ見てみたいとファイロ・ヴァンスが望むので、マーカムはベンスン殺害の現場にファイロ・ヴァンスを伴うのですが、現在ではこんなことはできないですね。こういう捜査のしかたの過去・現在の違いも見つけると読んでいてうれしくなります。今だったら、ヴァン・ダインはベンスン殺人事件をどう描いたでしょう。DNA鑑定なんかも取り入れたのかなぁ。
間違いなくなぞ解きを堪能できる作品です。
ずっと以前に読んだミステリ、また読み返そうかなぁという気になっています。
■映画化されたもの
S・S・ヴァン・ダインの作品はずいぶん映画化されているようです。残念ながら一つも見たことがありませんが。本の解説によると以下の作品は映画化されています。しかし、映画ではずいぶんと内容が変わっているらしいです。見たら失望するかもしれませんね。でも見たい。
カナリア殺人事件
グリーン家殺人事件
ベンスン殺人事件
僧正殺人事件
ケンネル殺人事件
主人公: ファイロ・ヴァンス(アマチュア探偵)
場所: USA、ニューヨーク
グルメ: なし
動物: なし
ユーモア: 中
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ワニと読むミステリ(貧乏お嬢さま、メイドになる)
![]() | 貧乏お嬢さま、メイドになる (コージーブックス) |
リース・ボウエン | |
原書房 |
![]() | Her Royal Spyness (A Royal Spyness Mystery) |
Rhys Bowen | |
Berkley |
読むと、富への道はけちらして。
(リース・ボウエン著)
ジョージーのとんでもなく長い名前は、レディ・ヴィクトリア・ジョージアナ・シャーロット・ユージーニー、ラノク公爵の娘で、王位継承順位34番目。そして一文無し。習ったことといえば、ほんの少しで、膝を曲げてのお辞儀の仕方くらい。異母兄のピンキーが彼女のお小遣いをカットしてしまうと、彼女はスコットランドを離れ、魚みたいな顔の男との婚約を逃れて、ロンドンへ行きます。
ジョージーは化粧品売り場で働きはじめますが、そこは5時間で首になり、身分を隠してメイドとして働き、王妃からプレイボーイの息子をスパイするように命令されます。
しかし、傲慢なフランス人が彼女のファミリーの800年の歴史ある屋敷を手に入れようとしますが、ロンドンの屋敷のバスタブの中で死体となって発見されます。ジョージーの最重要な仕事は歴史ある一族の潔白を証明することになりました。
貧乏貴族のお嬢さまミステリのシリーズ第一弾です。本国では、もうすでに5巻まで刊行されているようですので、まだまだ楽しめそうです。
1932年が舞台です。ジョージ5世の時代で、プレイボーイの息子とはのちのエドワード8世でシンプソン夫人との恋で王位を捨て、エリザベス2世誕生のきっかけとなった人物です。そのあたりの事情もこのミステリの中に描かれていて、ちょっとおもしろいですね。 このころの社交生活を覗き見る機会はなかなかありませんからね。
■貧乏お嬢さまたち
キャロライン・ヘインズのダリアハウスの女主人サラのシリーズ。
屋敷を維持するために四苦八苦してます。
ダリアハウスの陽気な幽霊
ダリアハウスの困った聖夜
アラン・ブラッドリーのバックショー荘に住むフレーヴィア・ド・ルースのシリーズです。化学大好き少女はいろいろな事件に遭遇します。
人形遣いと絞首台
パイは小さな秘密を運ぶ
水晶玉は嘘をつく?
サンタクロースは雪のなか
主人公: ジョージアナ(ジョージー)(ラノク公爵令嬢)
場所: イギリス、バークシャー(スコットランド)、ロンドン、サセックス州メイフィールド近く
グルメ: なし
動物: なし
ユーモア: 中
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ワニと読むミステリ(予期せぬ結末1 ミッドナイトブルー )
![]() | 予期せぬ結末1 ミッドナイトブルー (扶桑社ミステリー) |
ジョン・コリア | |
扶桑社 |
読むと、大逆転のチャンスはいつでもあり。
(ジョン・コリア著)
短篇集です。1933~1960年にかけて発表された作品、16篇です。
どの話もとんでもない結末で、唖然とさせられたり、笑わせられたりで少しも飽きることなくどんどん次の話を読みたくなります。たった16篇しかないのが実に残念。
媚薬を買いに来た若い男、彼が次に来るときはどの薬を求めるのか。
とても現実味を帯びた夢。
殺された夫は犬に化身したのか。
警察が訪ねて来たのは犯行がばれたからか。
チョコレートに殺された婦人。
などなど。天使と悪魔の話もあります。
意地の悪いブタもいます。
最初の一話を読んだら、もうジョン・コリアの虜になること間違いなし。
話の展開に触れることができないのがもどかしいですが、それは読んで味わってください。
もっとジョン・コリアの作品が翻訳されて読む機会が増えることを切に希望します。
こんなおもしろい話、もっともっと読みたいです。
■ジョン・コリア
本の解説によると、ジョン・コリアは、1901年ロンドン生まれ、1979年アメリカのサンタモニカ近郊で亡くなりました。
曾祖父は国王の侍医で一族からは医師や文人が輩出していたそうですが、ジョンの時代になると生活はけっして豊かではなかったそうです。ジョンは詩人を志しましたが、認められたのは創作のほうでした。1930年代後半、ハリウッドのシナリオ・ライターになるために渡米。以来、アメリカとイギリスを行ったり来たり。
1951年に発表した短篇集で、NWA(アメリカ探偵作家クラブ)のエドガー賞と世界幻想文学大賞を受賞。
主人公: 短篇集
場所: いろいろ
グルメ: なし
動物: なし
ユーモア: 中
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ワニと読むミステリ(黒い壁の秘密)
![]() | 黒い壁の秘密 (創元推理文庫) |
グリン・カー | |
東京創元社 |
![]() | Youth Hostel Murders |
Glyn Carr | |
Electric Power Storage |
読むと、シェークスピアはお見通し。
(グリン・カー著)
1952年刊です。俳優兼舞台監督のアバークロンビー・リューカーが探偵役のミステリです。
アバークロンビー・リューカーは『リチャード三世』の公演を終えて、妻で女優のジョージーとゆっくり過ごそうとバーカーデイルの湖水地方にやってきます。居酒屋で土地の出来事についての話に耳を傾けていると、若者たちが駆け込んできて友人の一人が帰ってこないので捜してほしいと頼んできます。多くの村の人たちが捜索に出ますが、遺体で発見されます。ロッククライミング中に亡くなった事故のように見えましたが、いろいろな人がいろいろなことを言うのを聞いているうちにアバークロンビー・リューカーは疑問を持つようになります。若者たちが滞在するユースホステルに勉強のためと称して宿泊するうちに怪しい出来事を見聞きし、ますます疑問は増します。そして新たな死体が発見され、連続殺人の様相を帯びてきます。第二次大戦直後のイギリスはまだ戦争の影響が色濃く残り、大戦中に隠ぺいされた出来事が少しずつ顔を出してきます。
随所にシェークスピア劇についての言及があります。内容がわかっているととても楽しめるでしょう。イギリスのミステリではシェークスピアを知っているともっともっと内容の理解が深まるでしょうね。ワニももうちょっとシェークスピアを勉強した方がよさそうです。
若者たちがユースホステルに滞在しているのですが、このころはユースホステルが良く使われていたのでしょうか。むかしむかしユースホステルのドラマがあったのを思い出しました。主演が森繁久彌でユースホステルに泊まりに来た人たちのいろいろなドラマが語られていいたような気がしますが、内容はまったく覚えていません。ミーティングとかいうのがあって、そこで自分の悩みとか語ってそこからドラマが発展したような記憶があります。今でもあるのでしょうか。
グリン・カーのミステリはまだまだたくさんあるようです。どんどん翻訳してほしいです。
グリン・カーについての解説が巻末にあります。
■演劇つながり
パトリック・クェンティン作のピーター・ダルースは演劇プロデューサーです。
迷走パズル
俳優パズル
人形パズル
主人公: アバークロンビー・リューカー(俳優兼舞台監督)
場所: イギリス、バーカーデイル
グルメ: なし
動物: なし
ユーモア: 中
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ワニと読むミステリ(探偵ダゴベルトの功績と冒険)
![]() | 探偵ダゴベルトの功績と冒険 (創元推理文庫) |
バルドゥイン・グロラー | |
東京創元社 |
読むと、事件は深く、表層だけで判断してはいけません。
(バルドゥイン・グロラー著)
短篇集です。9篇。
ダゴベルトは音楽と犯罪学を趣味とする素人探偵です。友人のグルムバッハ夫妻との晩餐のあと、喫煙室でコーヒーを飲みながらダゴベルトのかかわった事件について夫妻に語ります。
大きな美しいルビー、それを6個の素晴らしいダイヤモンドが周りを囲む高価なアクセサリーを偽物とすり替えたといいがかりをつけられお金をだましとられそうになったのをどう解決するか。
ある時計職人の出自を探りだすのは、ダゴベルトの休暇中の出来事です。
公使宅から消えたダイアモンドの首飾りを盗んだとして逮捕された青年はなぜ黙秘をするのか。
などなど。
ちょっとひねりが効いた話、上流階級の醜聞を恐れる話、など、どれもつい引き込まれてしまう話ばかりです。この一篇を読んだら小休止しようと思うのですが、次の話を読まずにはいられなくて結局休みなしに読み終わってしまいました。
いつもダゴベルトが話をするのはグルムバッハ夫妻の喫煙室で、これでアイザック・アシモフの「黒後家蜘蛛の会」を思い出してしまいましたが、グロラーの方が先だそうです。
これらの作品が書かれたのは、1910-1912年で、第一次世界大戦の直前、ハプスブルグ家が崩壊するころです。ヨーロッパの不安定な状態や貴族階級の生活など、そのころの社会情勢などがなかなか興味深く感じられます。
この一冊にとどまらず、もっとグロラーの作品を出版してもらいたいですね。
■バルドゥイン・グロラー
巻末に作者グロラーについての解説があります。
それによると、グロラーは、1848年にハンガリーのアラド生まれ、1916年死去。
ベルリンの大学卒業後ウィーンのジャーナリズムの世界に入り、軽妙洒脱なコラムで人気を博したそうです。フランツ・ヨーゼフ騎士十字勲章を授与されているそうです。
詳しくは本書の巻末解説を参照してください。
余談ですが、1912年にタイタニック号が沈没していますね。
主人公: ダゴベルト・トロストラー(道楽者)
場所: オーストリア、ウィーン
グルメ: なし
動物: イヌ:フローラ(ポインター)ダゴベルトの捜査犬
ユーモア: 中
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ワニと読むミステリ(蒸気機関車と血染めの外套)
![]() | 蒸気機関車と血染めの外套 (創元推理文庫) |
アランナ・ナイト | |
東京創元社 |
![]() | Deadly Beloved (An Inspector Faro Mystery No.3) |
Alanna Knight | |
メーカー情報なし |
読むと、愛しすぎるのも問題。
(アランナ・ナイト著)
ファロ警部補は警察医のケラー家で行われる晩餐会への招待状を受け取ります。ケラー家にはメイドが足りないようで、家政婦はひどい歯痛で十分なおもてなしができないようです。晩餐会から二週間後に、警察医の妻が行方不明であるとの報告が入ります。妹のところを訪ねるといって家を出たまま姿を消してしまったのです。そしてさらに線路脇で、血染めの毛皮のコートとナイフが発見されます。ファロは奇妙な晩餐会の模様を思い出していました。事件はこのころから始まっていたのか? 手掛かりが乏しいなか、ファロは義理の息子ヴィンス(新米医師)とともに事件の調査を進めます。
ファロ警部補のシリーズ第3弾です。
ファロの義理の息子ヴィンスは、警察医の妻にすっかりまいって憧れているのですが、純真な青年の賛美には思わず微笑んでしまいます。1870年ごろのヴィクトリア朝が舞台に設定されています。蒸気機関車での旅の様子がかなり詳しく語られています。客室の様子、乗り降りの仕方、など。現在のものとの違い、日本の客車との違い、それらを比較しながら読むのも楽しいです。
ファロのシリーズは本国ではたくさん出版されています。翻訳本がさっさと刊行されるのを期待します。
■既刊
すでに2巻出版されています。
修道院の第二の殺人 ← 修道院で殺人
エジンバラの古い柩 ← エジンバラ城の崖下で死体が発見されます
主人公: ジェレミー・ファロ(エジンバラ市警察警部補)
ヴィンセント(ヴィンス)・ボーマーチャー・ローリィ(新米医師。ファロの義理の息子)
場所: イギリス、エジンバラ
グルメ: なし
動物: なし
ユーモア: 中
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ワニと読むミステリ(雪のドーナツと時計台の謎)
![]() | 雪のドーナツと時計台の謎 (コージーブックス) |
ジェシカ・ベック | |
原書房 |
![]() | Sinister Sprinkles: A Donut Shop Mystery (Donut Shop Mysteries) |
Jessica Beck | |
Minotaur Books |
読むと、ペラペラしゃべってはいけません。
(ジェシカ・ベック著)
光り輝く雪がノースカロライナ州エイプリル・スプリングズの通りを覆っています。ちょうどウィンター・カーニバルに間に合いました。それを見て、〈ドーナツ・ハート〉のオーナー スザンヌ・ハートは、甘くておいしいフロスティングを思い出してしまいます。しかし甘いプラムへの思いは急速に冷え込みことになります。スザンヌの元夫マックスの浮気相手ダーリーンが死体で発見され、しかも別の女性の服を身につけていたとあっては。マックスは容疑者の一人となり、スザンヌは事件にかかわることになります。
ドーナツの店のオーナー、スザンヌ・ハートのシリーズ第3弾です。今回は冬の雪の中、ウィンター・カーニバルのイベントの最中に殺人事件が起こります。それもスザンヌの宿敵ダーリーンが被害者で、ダーリーンが着ているのがミュリエルのもので、そのミュリエルが行方不明となればスザンヌが調査に乗り出さざるをえないでしょう。
ナイジェリア人による詐欺事件も起こって、今の犯罪状況がわかりますね。スザンヌの親友、グレースも相変わらず積極的に調査にかかわり、被害者宅をこっそりのぞいたりします。このあたりはちょっといくらなんでもそれはないだろ、と思ってしまったりもしますが。
スザンヌがつきあっていたジェイクはなんとなくよそよそしく、スザンヌは少々二人の前途に不安を覚え、元夫マックスは復縁を迫り、スザンヌの恋愛生活は複雑になっています。
またまたおいしそうなドーナツ満載です。巻末にレシピがあります。朝食用のマフィンにそそられました。
■既刊
スザンヌのシリーズはすでに2作品が出版されています。いずれもレシピ付きです。
午前二時のグレーズドーナツ ← 店の前に死体が投げ出されます
動かぬ証拠はレモンクリーム ← キッチンツアーで殺人
主人公: スザンヌ・ハート(〈ドーナツ・ハート〉のオーナー)
場所: USA、ノースカロライナ州エイプリル・スプリングズ
グルメ: ドーナツ
動物: なし
ユーモア: 中
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ワニと読むミステリ(りんご酒と嘆きの休暇 (パリのグルメ捜査官))
![]() | りんご酒と嘆きの休暇 (パリのグルメ捜査官) |
アレクサンダー・キャンピオン | |
原書房 |
![]() | Crime Fraiche (Capucine Culinary Mysteries) |
Alexander Campion | |
Kensington |
読むと、おいしいものはどうしておいしいのか。
(アレクサンダー・キャンピオン著)
カプシーヌとその夫で著名なレストラン評論家のアレクサンドルはカプシーヌの伯父のアメリの16世紀に建てられた城を訪問することになりますが、その前に起こった狩猟での事故がのどかな風景に影を落としています。カプシーヌたちが楽しみしていた郊外への旅や田園の中のピクニック、草原でのディナー、それにちょっとカルヴァドスをすすって楽しむことは、さらなる事件の勃発でだいなしです。しかし憲兵隊は事件解決への手腕に欠け、カプシーヌは事件解決に乗りださざるをえません。事件は著名なビーフ牧場へと波及し、フランスの食文化にも影響しそうです。
今回はカプシーヌは2つの事件を同時に追います。路上に倒れている女性を助けた人々が金品を盗まれるという事件、それとカプシーヌの伯父のアメリ伯爵の地方で起こる殺人事件です。カプシーヌの休暇中の事件ということで前作品で個性を発揮したカプシーヌの部下たちは出番がないのかと心配になりましたが、しっかり潜入捜査もします。それもモモ巡査部長は大変な災難にあいます。気の毒に。
フランスの田園地帯の生活や、牧場経営の現状など、フランスの地方を理解するのに役立ちそうです。環境保護運動家の激しい活動ぶりが出るのは現代ならではでしょうか。
前作でやたらとカプシーヌにちょっかいを出していたいとこのジャックは、アメリ伯父の息子ということでこの作品中でもアレクサンドルに歯がみをさせます。
1作目より楽しく読めます。
■既刊
すでに1作品が翻訳されています。
予約の消えた三ツ星レストラン ← 三ツ星レストランでルノーの社長が殺されます
主人公: カプシーヌ・ル・テリエ(パリ警視庁の警視)
場所: フランス、ノルマンディのサン・ニコラ
グルメ: フランス料理
動物: なし
ユーモア: 小
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ワニと読むミステリ(青雷の光る秋)
![]() | 青雷の光る秋 (創元推理文庫) |
アン・クリ-ヴス | |
東京創元社 |
![]() | Blue Lightning |
Ann Cleeves | |
Pan Macmillan |
読むと、殺人には準備が必要。
(アン・クリ-ヴス著)
ジミー・ペレス(シェトランド署の警部)は婚約者のフランを連れてフェア島に帰ることになります。両親にフランを紹介するためですが、なかなかこの帰郷は難しいことになりそうです。フェア島は小さな島でみんな知り合いで、よそから来た人は不審の目で見られるからです。さらに秋の嵐が吹き荒れて島は孤立してしまいまい、人々のイライラはつのります。そしてフィールドセンターで高名な監視員の女性が殺されているのが発見されます。髪にたくさんの羽毛を飾られて。ジミー・ペレスは本島からの支援がえられず、科学捜査も頼めず、ただフランの助けを頼りに捜査を進めていきます。ペレスはこの殺人は激情にかられたものでなく冷酷な計算されたものであるがわかります。嵐が過ぎ去るまではフェア島から出ることはできないので殺人者は島にいるはずでペレスは捜査を急ぎますが、さらなる殺人が起きてしまいます。
シェトランド四重奏の最終章です。これまではシェトランド島、ウォルセイ島での事件でしたが、今回はペレスの故郷であるフェア島での事件です。小さな島で誰もが知り合いという狭いコミュニティでの生活が、婚約者として島を訪れたペレスの婚約者フランの目からよくわかります。生まれたときからみんなが知っているというのはどういう感じなんでしょうね。
フェア島には熱狂的なバードウォッチャーが滞在して、珍しいトリを見つけようとしているのですが、彼らの手柄争いやら最初の目撃者としての名誉を得るためにはなんでもするという捨て鉢な行動が語られていて、びっくりすることもあります。
しかしなんといっても驚くのは事件解決の瞬間です。それはいくらなんでもないだろうと目を見張ってしまいます。ペレスの嘆きがつらい。
■既刊
四重奏の残り3作品です。
白夜に惑う夏 ← 白夜の殺人
大鴉の啼く冬 ← 黒髪のキャサリンが殺されます
野兎を悼む春 ← 刑事サンディ・ウィルソンは祖母の死体を発見します
主人公: ジミー・ペレス(シェトランド署の警部)
場所: イギリス、フェア島
グルメ: なし
動物: なし
ユーモア: 小
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ワニと読むミステリ(夏を殺す少女)
![]() | 夏を殺す少女 (創元推理文庫) |
アンドレアス・グルーバー | |
東京創元社 |
![]() | Rachesommer |
Andreas Gruber | |
Goldmann Tb |
読むと、関連を見つけるのは至難の業。
(アンドレアス・グルーバー著)
ウィーンで、弁護士エヴェリーン(リニー)・マイヤースは元小児科医がマンホール落ちて亡くなったのは工事現場が安全対策を怠ったからだと建設会社が訴えられている件を調べています。その前には自動車事故の原因はエアバッグが誤作動して膨らんだせいだとエアバッグの会社が訴えられた件がありましたが、それは衝突が先だったというので終わりました。
ライプツィッヒで、ライプツッィヒ刑事警察の刑事ヴァルター・プラスキーは病院で少女が自殺したと思われる死亡事件を調べていました。単純な自殺事件と思われましたが、ヴァルターは不審なところを発見しさらに調査を進めることにしました。そのほかにも同じような自殺事件が起きていることがわかるとヴァルターがこれらに関連があるのではないかと疑問に思います。
ウィーンとライプツィッヒで起きた何の関係もなさそうな事件ですが、二人が独自に調査を進めるうちに思わぬ接点が明らかになってきます。
引き込まれますね。ウィーンとライプツィッヒで起こる事件が交互に話されるのですが、最初はまったく関連が見えないので、まだかまだかと先を急いでしまいます。殺人の件数はたくさん。登場人物も多数で、だんだんと誰が誰か混乱してきますが、そんなの確認している時間もおしいような気がしてきます。
それにしても作品中で語られるある事件があるのですが、それは気分が悪くなるような内容で、これも現代ミステリの特徴でしょうか。小児性愛、しかも暴力的。こういう事件は多発しているのでしょうか。あまり日本では報道されないようですが、水面下に隠れているのでしょうか。
この作品中には社会的地位の比較的高い人たちが多数事件に関係してくるのですが、その地位を利用して隠ぺいを図ったり、おぞましい性癖にふけったりと皮肉な扱いを受けています。
次の翻訳も期待します。
主人公: エヴェリーン(リニー)・マイヤース(ウィーンの弁護士)
ヴァルター・プラスキー(ライプツッィヒ刑事警察の刑事)
場所: オーストリア、チェコ、ドイツ
グルメ: なし
動物: なし
ユーモア: 小
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ワニと読むミステリ(悪魔と警視庁)
![]() | 悪魔と警視庁 (創元推理文庫) |
E・C・R・ロラック | |
東京創元社 |
読むと、欲のためなら何でもするか。
(E・C・R・ロラック著)
霧のロンドン。マクドナルド首席警部は深夜に帰路の途中でひったくりを目撃し、追跡してバッグを取り返して女性に返します。車を警視庁に置いて帰宅したマクドナルドは翌日その車の後部座席にメフィストフェレスの仮装をした男の死体を発見します。昨夜は休戦記念日で多数のパーティが開かれ、メフィストフェレスの格好をしたものは多数いました。さらに高名なオペラ歌手の車に短剣と楽譜がはさっまており、何かの暗示と思われます。しかし関係者は口を閉ざし、または誤魔化し、真相はなかなか明らかになりません。そしてさらなる殺人が起こりますが、最初の殺人との関連があるのか、その動機はなんなのかマクドナルド首席警部は関係者のウソを暴きながら捜査を進めていきます。
1938年刊です。
このころはロンドンは深い霧に覆われていたのですね。人影を見分けることも難しい霧のロンドンは犯罪にはもってこいのようです。おまけにこの夜は仮装パーティがあり、悪魔メフィストフェレスが多数歩き回り、その中の一人が犠牲者になるのですから、のっけから引き付けられます。
周到に張り巡らされた伏線やミスディレクションに翻弄されないようにしっかり読みましょう。
こういう本格推理がもっとたくさん新訳になると本当にうれしいです。
■E・C・R・ロラック
1894-1958年。
巻末の解説(森英俊氏)によるとロラックが女性作家であることは存命中は公表されていなかったそうです。英国本格黄金時代の後期に活躍した推理作家で、他の筆名で書かれたものも含めると70作以上の作品があるそうです。これからの翻訳がとても楽しみです。
主人公: マクドナルド(首席警部)
場所: イギリス、ロンドン
グルメ: なし
動物: なし
ユーモア: 小
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ワニと読むミステリ(人形パズル )
![]() | 人形パズル (創元推理文庫) |
パトリック・クェンティン | |
東京創元社 |
![]() | Puzzle for Puppets (Peter Duluth Mystery) |
Patrick Quentin | |
Intl Polygonics Ltd |
読むと、筒抜けには理由がある。
(パトリック・クェンティン著)
ピーター・ダルースは演劇プロデューサーの仕事をしばらく離れ海軍中尉として従軍しています。久しぶりに休暇がとれ、ピーターは最愛の妻アイリスの誕生日を一緒に過ごすためサンフランシスコに来ています。アイリスも映画の仕事をちょっとお休みです。宿はどこも満室で困っていると親切に譲ってくれる人があり、ホットしたのもつかの間、軍服を盗まれるという災難にあい、アイリスの従姉を訪ねたら死体を発見し、おまけにピーターが犯人であるかのように細工されています。ピーターとアイリスは私立探偵コンビの力を借りて犯人の追跡をしますが、さらにピーターの目の前で事件が起こります。サーカスのゾウに威嚇されたり、散々な休暇ですが、無事にアイリスの誕生日を祝うことができるでしょうか。
パズルシリーズの第三作目です。
迷走 → 俳優 → 人形 → 悪女、の順ですが、ワニは順番を無視して読んでいます。
サーカスが事件の舞台になるのですが、演技中に事故を装って細工するというのはちょっと怖いです。
それに事件でゾウが大きな役割を果たすというのはほかに例を知りません。ゾウが犯人逮捕に貢献します。とても頼もしいですね。“ゾウは忘れない”ということでしょうか。
これまで探偵役で活躍していたレンツ博士はちょっと名前がでてくる程度で出番はなし。1944年刊のこの本ではドイツ系のレンツ博士は出しにくかったのでしょう。
こういう本格ミステリを読むと、なんだか懐かしいし、緻密な筋でしっかり構成されているので、読後、とても満足です。
■既刊
パズルシリーズはすでに3巻あります。
悪女パズル ← 大富豪ロレーヌの邸宅で殺人が
迷走パズル ← 療養所で殺人
俳優パズル ← いわくつきの劇場(ダゴネット劇場)で殺人
主人公: ピーター・ダルース(海軍大尉、演劇プロデューサー)
アイリス・ダルース(その妻、女優)
場所: USA、サンフランシスコ
グルメ: なし
動物: ゾウ:エドウィナ(サーカスのゾウ)
ユーモア: 中
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