海外ミステリ専門書店。特に、イヌ、ネコ、その他の動物が活躍するのが好き。グルメも紹介。
ミステリ専門書店(翻訳もの限定)
ワニと読むミステリ(深い疵)
![]() | 深い疵 (創元推理文庫) |
ネレ・ノイハウス | |
東京創元社 |
![]() | Tiefe Wunden |
Nele Neuhaus | |
Ullstein Taschenbuchvlg. |
読むと、過去は隠そうとしても頭を出す。
(ネレ・ノイハウス著)
刑事オリヴァーが家族との朝食を終えたところへ警部ピアから、ユダヤ人の老人が殺されたという電話がはいります。老人はホロコーストを生き残り、アメリカで大統領顧問を務めたという重要人物です。使われた拳銃は第二次大戦中のもので、事件現場の鏡には「16145」の数字が残されています。92歳になる老人がなぜ殺されなくてはならなかったのか。解剖してみると老人の遺体にはナチスの武装親衛隊員だったということを示す刺青が発見されます。それはさらなる殺人の発端であり、これら複数の殺人は被害者たちの遠い過去にその理由がありそうです。オリヴァーとピアが隠された被害者たちの過去を掘り起こしていきますが、それはまた次の殺人へとつながっていきます。
刑事オリヴァーとピアのシリーズ第1弾です。ワニは2巻目(白雪姫には死んでもらう
)から先に読んでしまいました。まぁ、どれから先に読んでも構いませんが。
とにかく殺される人が多く、全部で15人にもなります。現在の人と過去の人と。隠されていた過去が現在によみがえってそれが殺人を呼ぶのですが、筋は込み入っているので注意深く読みましょう。しっかり把握しながら読めば、関連が見えてきます。が、ワニはぼんやりしているので、とっても難しかったです。
だんだんと事件は追い詰められていくのですが、真相に迫る刑事ピアは何がなんでも過去を隠そうとする犯人たちに絶体絶命の危機に立たされます。後半になると息詰まるようで、やめられなくなるので夜更かしは覚悟しましょう。
オリヴァー&ピアのシリーズはすでに5作が発表されているようです(2011年)。一気に日本語版を出してほしいですね。
“訳者あとがき”によると、ノイハウスが音頭をとって、子どもの読み書き力の向上や障害をもった子どものための乗馬教室や盲導犬の育成を目指す、ネレ・ノイハウス財団が設立されたそうです。社会貢献にも力をそそいでいるのですね。
■既刊
日本語訳の2冊目は、これです。
白雪姫には死んでもらう
主人公: 1.オリヴァー・フォン・ボーデンシュタイン(ホーフハイム刑事警察署首席警部)
2.ピア・キルヒホフ(警部)
場所: ドイツ
グルメ: なし
動物: なし
ユーモア: 小
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ワニと読むミステリ(泣きっ面にハチの大泥棒)
![]() | 泣きっ面にハチの大泥棒 (コージーブックス) |
ハンナ・リード | |
原書房 |
![]() | Plan Bee (A Queen Bee Mystery) |
Hannah Reed | |
Berkley |
読むと、欲の結び付きは壊れやすい。
(ハンナ・リード著)
はちみつ探偵のシリーズ、第3弾。
モレーンの町は年に一度の“ハーモニー・フェスティバル”で浮かれていますが、ストーリー・フィッシャーにとっては少しも面白くありません。なぜなら、今年の“はちみつ女王”の栄冠を万引き常習犯の女に奪われ、さらに母はストーリーの店がだしているミツバチの巣の展示をやめさせようとしているからです。
町のいたるところで、12歳の天才化学少年は爆弾の実験をしていますし。
ストーリーはディンキー(チワワの雑種)を散歩中に墓地で死体につまずき転んでしまいますが、助けを呼んでいる間に死体は消えうせていました。しかし、フェスティバルのパレードが行われている最中にまた発見してしまいます。
ストーリーの母は殺人の第一容疑者と付き合い始めているようだし、天才化学少年は行方不明という状況ではストーリーはこの謎を自力で解くしかありません。モレーンの町が空高く吹きとばされる前に事件解決にいたるでしょうか。
今回はモレーンの町がフェスティバルで大賑わいの最中に起こる事件です。
恋人ハンターとの仲はちょっぴり前進のようです。
作者のハンナ・リードは本名Deb Bakerでもミステリを書いていますが、こちらはまだ日本語に翻訳されていないようですね。こちらの方はちょっと高齢の主人公のようです。“海の上のカムデン”のシリーズのように元気いっぱい、好奇心旺盛の人たちの話でしょうか。気になります。
ハンナという名前は、一番のお気に入りの名前だそうで、リードは祖祖母の結婚前の姓だそうです。
巻末に、ワイルド・クローバー通信とレシピがあります。
■既刊
すでに2冊出ています。
ストーリーはだんだんと養蜂家として成長していますね。
ミツバチたちのとんだ災難
家出ミツバチと森の魔女
主人公: ストーリー・フィッシャー(〈ワイルド・クローバー〉の店主。養蜂家)
場所: USA、ウィスコンシン州モレーン
グルメ: ハチミツ関連(レシピ有り)
動物: イヌ:ベン(ベルジアン・マリノア。警察犬)
ディンキー(チワワの雑種)
ユーモア: 中
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ワニと読むミステリ(永久に刻まれて (リディア&ビル短編集))
![]() | 永久に刻まれて (リディア&ビル短編集) (創元推理文庫) |
S・J・ローザン | |
東京創元社 |
読むと、謎解きには苦しみもある。
(S・J・ローザン著)
短編7編。日本独自の短編集。これは2つめの短編集で、第一短編集は、「夜の試写会」です。
小柄な中国系アメリカ人女性のリディア・チンと、いかついアイルランド系アメリカ人のビル・スミス、2人は組んで、あるいは単独で捜査にあたります。
さらに、この短編集では、リディアとビルだけでなくリディアの母と美術品専門探偵のジャックが探偵として活躍します。
1.永久に刻まれて: 探偵はビル。地上げの対象となったライブハウスに絡む事件。
2.千客万来の店: 探偵はリディア。幼なじみの弁護士ピーターから行方不明の中国系不法移民を探す。
3.舟を刻む: 探偵はリディア。カリブ海クルーズの最中に行方がわからなくなった中国系の令嬢を捜すため、同様のクルーズに参加する。
4.少年の日: 探偵はビル。メイン州の田舎町で保安官をしている海軍時代の旧友が子供の溺死事件の真相を探る手伝いをして欲しいと頼まれます。この話は切ないです。
5.かけがえのない存在: 探偵はビル。NBAのニューヨーク・ニックスのスター選手が殺された。容疑者にされた人物から助けをもとめられる。
6.シン・ヨンユン乗り出す: 探偵はリディアの母。友人の孫息子が誘拐される。いつもはリディアの探偵という職業を嫌っているようですが、いつのまにかリディアの捜査方法を会得していたようです。
7.春の月見: 探偵はジャック・リー、美術品専門の私立探偵。ちいさなアジア美術館の館長モリーが偽物を掴まされた。
■既刊
リディアとビルが交替で主人公の探偵として活躍します。
春を待つ谷間で
冬そして夜
夜の試写会 ← 第一短編集
ピアノ・ソナタ
新生の街
天を映す早瀬
シャンハイ・ムーン
この声が届く先
主人公: 1.リディア・チン(私立探偵)
2.ビル・スミス(私立探偵)
3.チン・ヨンユン(リディアの母)
4.ジャック・リー(美術品専門の探偵)
場所: USA
グルメ: なし
動物: なし
ユーモア: 中
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ワニと読むミステリ(オーガニック・ティーと黒ひげの杯)
![]() | オーガニック・ティーと黒ひげの杯 (コージーブックス) |
ローラ・チャイルズ | |
原書房 |
![]() | Scones & Bones (Wheeler Large Print Book Series) |
Laura Childs | |
Wheeler Pub Inc |
読むと、激しい興味を持つ人はちょっと警戒。
(ローラ・チャイルズ著)
チャールストンの町ではヘリテッジ協会が主催する大海賊展が行われようとしている。日曜の夜のオープン初日、セオドシアたちは海賊の略奪品の展示を見ようと出かけて行った。会場で突然ガラスの割れる音がし、悲鳴が聞こえた。セオドシアたちがかけつけると、研修生が刺されて横たわり、大海賊展のもっとも有名なダイヤモンドの埋め込まれた髑髏の杯が消えうせた。セオドシアたちは、またもやこの謎の解明に奔走することになる。
今回は海賊がテーマ。「黒ひげ」と呼ばれた大海賊の頭蓋骨で作られたとされる髑髏の杯をめぐる謎です。財宝のありかを示すと言われる暗号が刻まれているのですが、セオドシアたちはその謎を解くことができるでしょうか。
チャールストンでは実にいろいろな催しがありますね。いったいどんな街なのか、だんだん気になってきます。行ってみたいですね。
刑事バートは黒澤映画のファンであることが判明しました。少しずつバートのひととなりが明かされますね。
セオドシアの恋人関係にも変化がありそうです。ビストロのオーナー、パーカー・スカリーと付き合っていましたが、新たにギブズ美術館の広報部長がセオドシアに接近してきました。さて、どうなることでしょうか。
これもレシピ付きです。
■既刊
インディゴ・ティーショップのシリーズは、いつのまにかもう12巻まででています。
もう一つのシリーズは、卵料理のおいしい店〈カックルベリー・クラブ〉のスザンヌ・デイツがなぞ解きをします。
インディゴ・ティーショップはこちら。
1.ダージリンは死を招く
2.グリーン・ティーは裏切らない
3.アール・グレイと消えた首飾り お茶と探偵 3
4.イングリッシュ・ブレックファスト倶楽部 お茶と探偵4
5.ジャスミン・ティーは幽霊と
6.カモミール・ティーは雨の日に
7.ブラッドオレンジ・ティーと秘密の小部屋
8.ロンジン・ティーと天使のいる庭
9.ホワイト・ティーは映画のあとで
10ウーロンと仮面舞踏会の夜
11.ミントの香りは危険がいっぱい
カックルベリー・クラブはこちら。
あつあつ卵の不吉な火曜日
チェリーパイの困った届け先
ほかほかパンプキンとあぶない読書会
主人公: セオドシア・ブラウニング(インディゴ・ティーショップのオーナー)
場所: USA、サウスカロライナ州チャールストン
グルメ: ティとお菓子
動物: イヌ:アールグレイ(セオドシアの愛犬、セラピー犬)
ユーモア: 中
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ワニと読むミステリ(アーサー王の墓所の夢)
![]() | アーサー王の墓所の夢 (創元推理文庫) |
アリアナ・フランクリン | |
東京創元社 |
![]() | Relics of the Dead: Mistress of the Art of Death 3 |
Ariana Franklin | |
Bantam Books (Transworld Publishers a division of the Random House Group) |
読むと、父と子、愛情がつらい。
(アリアナ・フランクリン著)
1154年、グラストンベリーは大地震に襲われ、グラストンベリー大修道院も大きな被害を受けます。それから20年ばかりたった1176年に大修道院は今度は大火に襲われ焼失し、そこから2体の骨が発見されます。それは伝説のアーサー王と妃グウィネヴィアのものではないかとのうわさが流れます。ヘンリー二世は、アーサー王の遺骨であることを確かめるため、医師アデリアを差し向け、遺骨の鑑定をさせようとします。しかし、それを阻止しようとする者があり、アデリアたちに危険が迫ります。さらに、アデリアの友人エマは、息子がウルヴァーコート男爵の正式な跡取りであることを証明しようとしているその途中で消息を絶ってしまいます。アデリアには遺骨の鑑定とエマの行方を探すというもう一つの使命も加わります。
今回、アデリアは、宗教裁判所に召喚されそうになり、それから逃れるために娘アリーや召使のアラブ人マンスールを連れて住み慣れたウォータービーチの家を離れることになります。その途上で友人エマの一行に会いますが、エマは息子が正式なウルヴァーコート男爵であることを証明しその財産を相続するために城をめざしています。権利を獲得するためどうするのかというのが驚きです。エマは腕自慢の闘士を連れ、試合に臨むのです。権利を主張する者同士が、それぞれの闘士を闘わせて、勝ったものが権利を得るというシステムになっているのです。力ずく、ですね。現在の法から考えると、なんじゃそりゃ、って感じですが、そのころは当然だったわけで、その状態から現在の法制度にどのように移行していったのか、それも興味がありますね。
次回作は、この作品で一掃したと思った盗賊の生き残りがアデリアたちをつけ狙うというのが話の一部のようで、ちょっと怖くてぞくぞくしますね。
■既刊
アデリアのシリーズはたくさんありますが、ワニはあまり読んでいませんね。
ロザムンドの死の迷宮 ← 迷路が謎の1つです。
主人公: ヴェスーヴィア・アデリア・レイチェル・オルテーゼ・アギラール(医師)
場所: イギリス、グラストンベリー
グルメ: なし
動物: なし
ユーモア: 小
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ワニと読むミステリ(シンデレラの罠)
![]() | シンデレラの罠【新訳版】 (創元推理文庫) |
セバスチアン・ジャプリゾ | |
東京創元社 |
![]() | Piege Pour Cendrillon |
Sebastien Japrisot | |
Messageries du Livre |
読むと、自分でもわからない。
(セバスチアン・ジャプリゾ著)
“わたし”は火事に遭い、全身火傷を負った状態で発見された。幸い命は取り留めたが、顔や手をひどく損傷し、皮膚移植が必要だった。目が覚めたとき、“わたし”は誰なのか、記憶をなくしていた。一緒に屋敷にいたド(ドムニカ)は焼死したと知らされた。ならば“わたし”はみんなが言うようにミ(ミシェル)なのか。傷はだんだんと回復し、火事の中からどうやって助けられたのかを聞かされても、なぜ“わたし”はそんなところにいたのか何をしていたのか、まったくわからない。“わたし”が無意識にした署名は“ドムニカ”。はっとしたが、ドの恋人に会っても何も感じないし思い出せない。ミドラ伯母さんは死ぬ間際に遺言書を書き換えたらしい。莫大な財産を相続するのは、ド?それともミ?
記憶喪失ものです。自分がだれかわからないというのはどういう感じなんでしょうね。ひどく奇妙?
火傷治療のため皮膚移植をして顔の造作も変わっているから、昔の写真を見ても同じ人なのかわからないわけだし。ずーと“わたしはだれ?”、と自分探しをしながら事件の真相も少しずつわかってくるわけですが、『こんなん今ならDNA鑑定ですぐわかっちまうよなぁ』と別の私が言い、『なんだと、1962年刊だろ、その頃のミステリとして楽しめよ』ともう一人が言う。『でも、謎にもならないぜ、今なら』と、反論があり、『ミステリ・ファンだろ? そのくらいその時代に入りこめよ』とまた言い返し。アタマの中の言い合いは終わりません。
■記憶喪失もののミステリ
コニス・リトルの作品。
記憶をなくして汽車の旅
もっとあるかと思いましたが意外とないですね。
ミステリではないですが、記憶喪失ものの傑作はこれでしょ。
![]() | 心の旅路 [DVD] |
クリエーター情報なし | |
ファーストトレーディング |
主人公: ミシェル・イゾラ(ミ)(20歳の娘。ミッキー)
場所: フランス
グルメ: なし
動物: なし
ユーモア: 小
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ワニと読むミステリ(ジューンブライドはてんてこまい)
![]() | ジューンブライドはてんてこまい (創元推理文庫) |
クリスタ・デイヴィス | |
東京創元社 |
![]() | The Diva Takes the Cake (A Domestic Diva Mystery) |
Krista Davis | |
Berkley |
読むと、過去は追ってくる。
(クリスタ・デイヴィス著)
妹ハンナがまた結婚しようとしている!
イベントプランナーのソフィは妹の結婚式の計画を立てていますが、いろんな邪魔が入りなかなかスムーズには行かないようです。しかも。花婿は白馬の王子様とはいいがたく、ソフィの心に浮かんだのは、もしかして殺人者? 彼の前の妻が訪ねてきて、その直後に四何からぶら下がってるのを発見されたのなら誰もがそう考えてしまう。怪しげな花婿の親戚が到着し、ソフィの容疑者リストは結婚式のゲストのリストと同じようなメンバーになってしまい、犯人は花嫁側か、花婿側か、はたまた祭壇の前に立つ人物か? ハンナを守るため、ソフィは事件を解決しなくてはならない。
ハンナの結婚は3度目になるのですが、それでも結婚式は盛大にやるのですね。またハンナの前の夫2人もやってきて結婚式に出ようとしたり、混乱に輪をかけますね。
しかしなんといっても魅力的なのは、ずっといろんな料理が出てきて、お菓子もどんどん焼かれたり作られたり、そして誰かがいつもそれを食べていること。
巻末のレシピは、
ソフィの簡単プルドポーク
ビール缶チキン
酔っぱらいの新婚マティーニ
ナターシャの恋に落ちるケーキ
です。
■結婚式が事件のミステリ
結婚式に重なって事件が起こるミステリは結構たくさんありました。ここではそのうちから数点を紹介します。結婚式はおめでたいけれど、同時にうらみ、ねたみも呼ぶのかも。
ローラ・ダラム作品のアナベル・アーチャーはウェディング・プランナーです。
ウエディングプランナーは眠れない
クレオ・コイル作品のクレア・コージーは、元夫の結婚式の手伝いをします。
エスプレッソと不機嫌な花嫁
ケイト・キングズバリーのペニーフット・ホテルのシリーズです。メイドのガーティの結婚式があります。
マクダフ医師のまちがった葬式
G・M・マリエットの作品では結婚式で相続人が減っていく。
コージー作家の秘密の原稿
主人公: ソフィ・ウィンストン(イベントプランナー)
場所: USA、ヴァージニア州北部アレクサンドリア
グルメ: 料理レシピあり
動物: ネコ:モチー(ソフィの飼い猫)
イヌ:デイジー(ソフィの飼い犬)
ユーモア: 中
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ワニと読むミステリ(泥棒は几帳面であるべし )
![]() | 泥棒は几帳面であるべし (創元推理文庫) |
マシュー・ディックス | |
東京創元社 |
![]() | Something Missing: A Novel |
Matthew Dicks | |
Broadway Books |
読むと、 几帳面な観察が大事。
(マシュー・ディックス著)
マーティンは年季を積んだ泥棒で、この道では最高の技術をもっていると自負している。何年もの間同じ家から頂戴しているが、まったくバレていない。なぜならば彼は完成されたビジネスモデルを持ち、その家の人たちが盗られたと気づかないものを盗んでいるから。トイレット・ペーパー1巻、使い途中のメープル・シロップ、ホコリをかぶった陶器、など。もちろんその家の住人には会ったことはなく、決まった時間を彼らの家で過ごすだけだ。しかし、アルバムを見たり日記を読んだりするうちにいつの間にかある種の友情を覚えるようになる。そして少し彼らの生活に立ち入るようになり、守護聖人のような気分になってくるが、それはマーティンの几帳面な泥棒規律を逸脱することだ。そして、彼のこれまでの秩序だった生活は突然大事件に巻き込まれ。
マーティンは表向きはスタバのバリスタ。このあたりは“今”って感じですね。そろそろスタバが犯行現場というミステリが出てきても良いですね。
マーティンの泥棒理論はしっかりと確立されていたのに、ひょんなことからそれが崩れていくところが、この先どうなっちゃうのかなぁとドキドキしてきます。泥棒の決まりを破ってしまったマーティンの人生に素敵な女性がかかわることになり、また彼の“お得意様”の危難を救うことにもつながります。
これがマシュー・ディックスの作家としてのデビュー作だそうです。ただしこれは作者の体験ではないそうです。ちょっぴり残念。マーティンの続きはないようでそれも残念。
泥棒にはいるところは読みながら緊張しますよ。
■泥棒が主人公は
ローレンス・ブロック作のバーニイ・ローデンバー(古書店主兼泥棒)は行く先々で事件に巻き込まれます。
泥棒は深夜に徘徊する
D・E・ウェストレイク作のジョン・ドートマンダーのシリーズ。いつも予期せぬできごとから泥棒計画が崩れていきます。
泥棒が1ダース
ホット・ロック
主人公: マーティン・レイルズバック(泥棒。スタバのバリスタ)
場所: USA、コネティカット州ウェスト・ハートフォード近郊
グルメ: なし
動物: なし
ユーモア: 中
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ワニと読むミステリ(白雪姫には死んでもらう )
![]() | 白雪姫には死んでもらう (創元推理文庫) |
ネレ・ノイハウス | |
東京創元社 |
![]() | Schneewittchen muss sterben |
Nele Neuhaus | |
Ullstein Taschenbuchvlg. |
読むと、友人?それとも?
(ネレ・ノイハウス著)
トビアスは連続少女殺害事件の犯人として11年間の刑期を終え、故郷の親の家に戻ってきた。父の繁盛していた店は壊れが目立ち、町の人たちは激しい敵意を隠そうともしない。そして空軍基地跡地にあった空の燃料貯蔵槽から人骨が発見され、それが殺害された少女のものとわかると、町の人たちの憎悪が再燃され、トビアスは何者かに襲われ、母も歩道橋から突き落とされる。捜査にあたったピア警部はトビアスは本人の主張するように無実ではないかと思うようになり、悩みを抱えるオリヴァー首席警部とともに事件を見直す。彼らの捜査は町の人たちが隠していた過去を掘り起こすことになり、いくつもの過ちや暴挙があぶりだされる。
読み進めるのが怖くなるくらいに普通の善良そうな人たちの中にある悪魔が描かれています。次々と過去の事実が明らかになるので少しも気を抜けません。登場人物も多いので、いったい誰が何をして、なんと言ったのか、ワニはだんだん混乱してしまいました。でもどんどん事実が暴かれていき、それがまた思ってもいない展開でついのめり込んでしまいます。読み応えがあるというのはこういうことでしょうか。
オリヴァー首席警部とピア警部の私生活も丁寧に書かれていて、彼らのその後がどうなっていくのかもこのシリーズのみどころですね。オリヴァーとその妻コージマの仲はどうなっていくのでしょうねぇ。ピアも元夫で法医学者のヘニングとはあいまいな関係が続いているようで、オリヴァーともども悩みがつきませんね。だから二人に共感を覚えるのかもしれません。
これはシリーズ第4作目。
■既刊
ワニはこの作品が初ですが、3作目は、「深い疵」です。その前は自費出版だそうです。最初の2冊も翻訳なりますように。
![]() | 深い疵 (創元推理文庫) |
ネレ・ノイハウス | |
東京創元社 |
主人公: オリヴァー・フォン・ボーデンシュタイン(ホーフハイム刑事警察署首席警部)
ピア・キルヒホフ(ホーフハイム刑事警察署警部)
場所: ドイツ
グルメ: なし
動物: なし
ユーモア: 小
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ワニと読むミステリ(アガサ・レーズンの完璧な裏庭)
![]() | アガサ・レーズンの完璧な裏庭 (コージーブックス) |
M・C・ビートン | |
原書房 |
![]() | Agatha Raisin and the Potted Gardener |
M. C. Beaton | |
Robinson Publishing |
読むと、気を引くのはほどほどに。
(M・C・ビートン著)
アガサ・レーズン、恋敵現る。しかもかなり強力。アガサが長い一人旅から帰って来ると、村には新しい住人メアリーがいて、これが実に魅力的。美しく、家事も完璧にこなし、ガーデニングも得意としているらしい。アガサの隣人のジェームズはどうやらメアリーと付き合っているらしい。長くアガサが気を引こうとして、なかなか成功しないのに、これでは太刀打ちできない。ガーデニング・コンテストがあると聞き、アガサはなんとしても入賞して自分の存在をアピールしようとする。が、アガサにガーデニングができるはずもなく、またもや『ズル』をすることに。おりしも村ではいろいろな人の庭が荒らされるという事件が続き、アガサはジェームズをひきつれて調査をはじめるが、発見したのは、植えられているメアリーの死体だった。
アガサ・レーズン、またもや『ズル』をします。懲りませんね。ガーデニングなんかやったことないのに、コンテストで入賞してやろうというたくらみで、造園業者に庭を作ってもらうことにしますが、誰かのいたずらもあってあっさりと『ズル』がばれてしまうのはアガサにとっては残念なことですね。しかも造園を頼んでその代わりにPR会社で半年働かなくてはいけないのですから、アガサには高い代償でした。
でも、だんだんと地域に溶け込んでいるようで、村の人たちがアガサはどうしたと聞いてくれたりするのは、ちょっとうれしくなります。
一番おもしろかったのは、アガサとジェームズが調査の一環でカレッジの学監に会いに行くところです。この学監がいやらしく、アガサに膝を押しつけてきたり、二人のおごりだと大食いをして、どんどんワインを注文し、すっかり酔っぱらってしまうところです。こういう人いるなぁ、と笑ってしまいました。
アガサがロンドンで働く半年間、ネコたちはジェームズが預かってくれるそうで、少しは二人の中の発展に寄与するのでしょうか。それは次の作品でわかるのでしょう。まぁ、そううまくはいかないでしょうが。
■既刊
すでに2巻が出版されています。アガサ・レーズン、押しが強くて憎たらしく、でもお人好しでかわいいところがある、シリーズが楽しみです。
アガサ・レーズンの困った料理 ← 料理コンテストでズルをします
アガサ・レーズンと猫泥棒 ← 獣医が殺されます
主人公: アガサ(アギー)・レーズン(元PR会社経営者)
場所: イギリス、コッツウォルズ
グルメ: なし
動物: ネコ:ホッジ(サバトラ猫)、ボズウェル(トラ猫) (両方アガサの飼い猫)
ユーモア: 中
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ワニと読むミステリ(高慢と偏見、そして殺人)
![]() | 高慢と偏見、そして殺人〔ハヤカワ・ミステリ1865〕 (ハヤカワ・ポケット・ミステリ) |
P・D・ジェイムズ | |
早川書房 |
![]() | Death Comes to Pemberley |
P.D.James | |
Faber and Faber Ltd. |
読むと、殺人まで犯すか?
(P・D・ジェイムズ著)
エリザベスとダーシーの住むペンバリー館では舞踏会の準備にさざめいている。夜も更けてみなが寝に就こうとするとき、激しく疾走する馬車の音が響き、駆け下りてきたのはエリザベスの妹リディアだった。リディア・ウィッカム夫妻は招待されていないのに何が起こったのか?救助隊を編成し森に分け入ってみると、血まみれの死体と、そのそばで「ぼくが殺したんだ!ぼくがいけないんだ」とつぶやくウィッカムがみつかった。ウィッカムは第一容疑者として拘束されるが、ダーシーたちは容疑を晴らそうと、いったい本当は何が起こったのか調べ始める。
『高慢と偏見』のその後に起こるミステリです。
原作での出来事がいろいろと出てくるので、原作を読んでいると楽しみが増すでしょう。大事件だったリディアとジョージ・ウィッカムの結婚にいたる出来事を知っていれば、この作品中の2人に向けられる疑いなどもより理解できるでしょう。
1803年の出来事ということでその頃の裁判のやり方が出てくるのですが、こんな方法だったのかと、ちょっと衝撃のようなものも受けます。
P・D・ジェイムズは、1920年8月3日生まれだそうで、もう93歳ですね。それでもまだこんな作品が書けるというのは頼もしい限りです(原作は2011年刊)。
■『高慢と偏見』
元になった原作は、ジェイン・オースティンです。DVDもあります。
ワニは本も読んで、DVDも見ました。
![]() | 高慢と偏見〔新装版〕 (河出文庫) |
ジェイン・オースティン | |
河出書房新社 |
![]() | 高慢と偏見 [DVD] |
クリエーター情報なし | |
IVC,Ltd.(VC)(D) |
主人公: フィッツウィリアム・ダーシー(ペンバリー館の当主)
エリザベス・ダーシー(ロングボーンの地主であるベネット夫妻の二女。ペンバリー館の女主人)
場所: イギリス
グルメ: なし
動物: なし
ユーモア: 小
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ワニと読むミステリ(チャーチル閣下の秘書)
![]() | チャーチル閣下の秘書 (創元推理文庫) |
スーザン・イーリア・マクニール | |
東京創元社 |
![]() | Mr. Churchill's Secretary: A Novel |
Susan Elia MacNeal | |
Bantam |
読むと、 かわいい冒険活劇という感じ
(スーザン・イーリア・マクニール著)
チャーチルが首相に就任し、戦争は激しくなる様相をみせるロンドン。
祖母の残してくれた屋敷を売却するためだけにロンドンに滞在していたはずのマギーは、いつのまにかロンドンが好きになり、ハウスメイトをおいて屋敷に住まうことにしました。数学の能力に秀でたマギーですが戦時下のロンドンで得られた職はチャーチル首相の秘書。数学の能力を生かせない仕事に不満を覚えながらもチャーチルの口述筆記の仕事をこなすうちに、いつのまにか国家を揺るがす謀略の渦に巻き込まれてしまうのです。爆破や殺人、解けない暗号。マギーは暗号解読という才能を持つことに目覚めます。
陰謀の中をつき進むうち、秘められた家族の秘密が扉を開け始め、マギー自身にも危険が迫ってきます。
1940年のロンドンが舞台です。戦時下ですね。
首相官邸のあるダウニング街10番地の戦時下の体制が描かれています。訳者あとがきによると、戦時には爆撃を避けるため、内閣戦時執務室という戦時用の施設が大蔵省の地下に置かれていたそうです。現在は、『チャーチル博物館・内閣戦時執務室』として一部一般公開されているそうです。ロンドンにいったら見学してみるとおもしろいでしょうね。
もうすでに次回作の出版が決まっているそうです。若き日のエリザベス女王が登場するそうでそれを聞いただけでもちょっと興味がわきます。
■時期的に近いのは
1940年ごろでロンドンが舞台になっているミステリを探してみました。
リース・ボウエンの作品は、1932年が舞台です。ちょっと前ですね。
貧乏お嬢さま、メイドになる
マージョリー・アリンガムの作品は1940年代のロンドンです。
霧の中の虎
ポール・アルテの「殺す手紙」1946年ロンドンです。
殺す手紙
主人公: マーガレット(マギー)・ホープ(チャーチルの秘書)
場所: イギリス、ロンドン
グルメ: なし
動物: なし
ユーモア: 小
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ワニと読むミステリ(ムーンズエンド荘の殺人)
![]() | ムーンズエンド荘の殺人 (創元推理文庫) |
エリック・キース | |
東京創元社 |
![]() | Nine Man's Murder |
Eric keith | |
Ransom Note Press |
読むと、しかけたトリックは予期せぬ結末に。
(エリック・キース著)
犯人はおれたちの中にいる。一人、二人と減っていく仲間たちは、ドアにも窓にも鍵をかけ、警戒を怠らなかったはずなのに。アンダースン探偵学校の卒業生9人が同窓会に集まったのは人里離れた校長ダミアンの別荘で、吹雪に閉ざされ、外界に通じる跳ね橋も破壊された。同窓会のホスト、ダミアン校長はどこにいる? 恐ろしい悲鳴の先にあったのは無惨な死体。自分以外の誰も信じられない状況で、生き延びることができるのか。犯人は誰かとみな必死に考えるのだが。
近頃は閉ざされた場所を作るのは実に難しいですね。この状況も、吹雪で、別荘に通じる跳ね橋は落とされ、電話線は切られ、さらに山の中とあって携帯電話も圏外です。したがって外に助けを求めることはできません。だんだんと探偵学校の昔々の卒業試験の事件が今に関係があるのではないかと思われて来るのですが、それが今の殺人とどう結び付くのかわかりません。みんな過去に自分が何をしたのか、忘れていますからね。
作者のエリック・キースは、ゲーム会社のパズルデザイナーとして活躍後、2011年に本書で小説家デビュー。
■「そして誰もいなくなった」
アガサ・クリスティーの「そして誰もいなくなった」。先に読むべきか、後にするべきか。
まぁ、ワニははるか昔に読みましたが。それは衝撃でした。
![]() | そして誰もいなくなった (ハヤカワ文庫―クリスティー文庫) |
アガサ・クリスティー | |
早川書房 |
主人公: ブライアン・ウエスト(私立探偵)
場所: USA、ロサンジェルスから500キロ
グルメ: なし
動物: なし
ユーモア: 小
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ワニと読むミステリ(お菓子の家 )
![]() | お菓子の家 (創元推理文庫) |
カーリン・イェルハルドセン | |
東京創元社 |
読むと、甦る恨みは大きいかも。
(カーリン・イェルハルドセン著)
何十年もたってふと見つけた男。こっちは鮮明に覚えているのに向こうはまったく気づきもしない。あとをつけても警戒する様子もない。そしてその頃の恨みをぶつけても、怪訝な顔をするばかり。しまった、もっと苦しめて殺せばよかった。次はもっとそうしよう。
男の死体は、しばらく入院していた老婦人の留守宅から見つかり、老婦人は男に覚えはないといいます。事件を担当したショーベリ警視は、被害者の身辺を探り殺人の動機となりそうなものを見つけようとしますが、ごく平凡な生活をしていた男が事件の犠牲者になるようなきっかけがありようもなく捜査は難航します。さらに事件は続き、その凄惨さは増して連続殺人事件のようですが被害者に共通点を見いだせず、動機も探り出せません。
ショーベリ警視のシリーズ第一弾です。スウェーデンのミステリはまだ2冊目です。なじみのない名前がたくさん出てくるのでそれがつらいところです。男性か女性かもわからない。これからスウェーデン・ミステリが増えてくればだんだん慣れるのでしょう。
ハンマルビー署の刑事たちそれぞれの事情もたんねんに書かれていて、サイドストーリーとしても興味がもてますが、刑事自身がレイプ事件に巻き込まれたり、不正があったりでなかなか刺激的です。
それにしてもスウェーデンの子どものいじめには驚きました。スウェーデンはもっと落ち着いた国というイメージを持っていたので(単なる漠然としたイメージですが)、これがほんとに幼稚園の子どもたち?と疑ってしまいます。さらに先生もまったく無関心で見てもなんの感情もなしです。現状なのか作者による誇張なのか、またはその中間?
知らない間にどんどん引き込まれて、途中でやめるのが難しいミステリです。
もうすでに6冊が出ているそうなので、ハンマルビー署の刑事たちと親しくなれそうです。
■スウェーデンのミステリ
マイ・シューヴァル、ペール・ヴァールーによる作品。市内循環バスでの大量殺人です。
笑う警官
主人公: コニー・ショーベリ(ハンマルビー署刑事課の警視)
場所: スウェーデン、ストックホルム
グルメ: なし
動物: なし
ユーモア: 小
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ワニと読むミステリ(骨董屋探偵の事件簿 )
![]() | 骨董屋探偵の事件簿 (創元推理文庫) |
サックス・ローマー | |
東京創元社 |
読むと、人智を超えているように見えるだけ。
(サックス・ローマー著)
10篇の短篇集です。語り手はサールズ。友人のマーティン・コラムが館長を務めるメンジーズ博物館で起こった不思議な事件の時モリス・クロウと出会い、それからはともに怪事件の解決に向かいます。
モリス・クロウは、ロンドンのウォッピングに住む骨董商です。事件現場で寝ると周囲の大気から最後の心象風景を再現することができるのです。クロウの美しい娘イシスは父に寄り添い、調査に同行します。
超自然的な事件をどうクロウは紐とくのか、友人サールズはつぶさに記録します。
クロウの骨董店にはオウムがいて、客が来ると、「モリス・クロウ!モリス・クロウ!悪魔があなたを迎えに来たよ!」と叫ぶのですが、客としてお店に入ったときにこんな叫び声が聞こえたらコワイですね。
バーベナの香りのスプレー缶を帽子から取り出して額に一吹きするのですが、これがどうもよくわかりません。帽子のどこにどうやって隠しているのか、そんなに大きな帽子なのか、とても不思議です。映像化するとどうなるんでしょうね。
ちょっとオカルトっぽい作品です。これからも翻訳が出るのを期待します。
■既刊
サックス・ローマーというとこちらの方が有名ですね。
怪人フー・マンチュー
主人公: モリス・クロウ(骨董屋)
場所: イギリス
グルメ: なし
動物: なし
ユーモア: 小
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