夜、何気なくつけたNHK教育テレビ「私のこだわり人物伝」で「山頭火」をとりあげていた。コピーライターの仲畑貴志さんが人物を語る、という構成だ。
TOTOウォシュレットのコピー「おしりだって、洗ってほしい」や「反省だけなら猿でもできる」(大鵬薬品工業のチオビタドリンク) そして「目のつけどころが、シャープでしょ」で知られるコピーライターが俳人・山頭火を知ったのは20歳の頃、と紹介される。
ああ、同じくらいの年齢だったんだ、とちょっとうれしくなる。学生時代、オンボロ木造アパートで、種田山頭火の評伝や句集にはまったことを思い出した。度の強い眼鏡、編み笠にぼろぼろの墨衣をまとい鉄鉢を手に放浪する雲水。漂泊の旅人。「後姿のしぐれてゆくか」を思わせる山頭火の後ろ向きのモノクロ写真の前で句を分析する仲畑さんによると、短い言葉に凝縮されたコピーと山頭火の自由律俳句は構造が似ているという。
たしかに、とも思うけれど、でも違うよなとつぶやく。山頭火の残した「俳句作りのポイント」には、
1 情に溺るるなかれ
2 添えるよりも捨つべし
3 言ひすぎは言ひ足らないよりもよくない
4 道として、行として、句作せよ
5 ぐっと掴んでぱっと投げる
とあり、4番目以外は、コピーを書く自分の仕事と同じだと分析していた。なるほど、とも思うけれど、でも違うよなとつぶやく。それよりもこの「ポイント」はまさに我田引水だけれど水墨画の表現方法にふさわしいような気がした。おっ、と感じたからデジカメで紹介文を撮影しておいたのだ。
情に溺れるというのは、つまりは対象との距離、見方の関係だし、2と3は描きすぎるなということだ。道として行としては修行のことだから、これはまだ百年先のこととしても、最後の「ぐっと掴んでぱっと投げる」など、そうそうそんな感じで対象に向きあえたら面白いだろうなあと思った。
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