どうぶつ番外物語

手垢のつかないコトバと切り口で展開する短編小説、ポエム、コラム等を中心にブログ開設20年目を疾走中。

家出した猫の真実(下)

2008-12-14 01:49:04 | 短編小説
 明け方になって「白亜」は不思議な静寂の中に居た。  いつの間にか霧が樹間にただよい、下草を覆いはじめていた。  解放された悦びの一方、かすかな後ろめたさを感じていた。冷静になった記憶の中で、彼を呼ぶ主人の声が甦ったのだ。  はっきりとは分からないが、森の空気が重く沈みはじめた頃だから、それほど時間が経ってはいない。  主人の悲しげな呼びかけが、いまになって「白亜」の心を揺らした。 「猫って、何を . . . 本文を読む
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