どうぶつ番外物語

手垢のつかないコトバと切り口で展開する短編小説、ポエム、コラム等を中心にブログ開設20年目を疾走中。

眼の風邪

2007-08-02 00:15:08 | 短編小説
 陣内眼科医院の待合室は、花粉症で悩む患者で溢れかえっていた。  毎年この時期になると患者が増えるのは仕方がないのだが、院長の陣内はいつにも増してあからさまな仏頂面を崩さなかった。  診療報酬が伸びるからといって単純に喜ぶ男ではないから、そのこと自体は理解できないことではなかった。  しかし、看護師の玉枝に命じて待合室のレザー張り長椅子をエタノールで拭かせる行為は、陣内が実は患者の増加を内心怖れて . . . 本文を読む
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