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読書感想文【華日記】

2006年02月08日 01時55分23秒 | 読書感想文
ついさっき読み終わったばかり。華道界を描いた、異色の小説。あとがきによればノンフィクション8割、フィクション2割、登場人物はひとりを除いて全員実名。
昭和20年8月15日の終戦から昭和55年に主要人物がほとんど死ぬまでをテンポよく描いている。

ストーリー:
明治まで池坊しかなかった華道流派は、明治以降に多くの流派が池坊から独立し、独自の形を作り門弟の奪い合いが繰り広げられた。

戦争で世間の表舞台から消えた華道は、戦後急速に復興した。
中でも草月流創始者・勅使河原蒼風はGHQの関係者に受け入れられ、関東において急激な発展を遂げた。”オブジェ”と呼ばれた、花にこだわらない超前衛的な作品は世界にその勢力を広げていく。
戦前は関東で最も勢力のあった安達式挿花は、家元の安達潮花が疎開先から戻ってくるのに躊躇したため草月流に対し決定的な遅れをとった。
関西の雄・小原流の3代目家元・小原豊雲は草月流と、東西から池坊を包囲しようと画策していた。
四国の田舎で育った中川幸夫は池坊流を習いつつも、その形式主義に疑問を持ち池坊を脱退。自らの流派を解散した半田唄子と二人、華道界から完全に抹殺されながらも極貧の中で自分たちの生け花を追求していく。
そして京都の池坊は先代家元の義兄・山本忠男という怪物的な経営者の手腕によって、流派内の反対勢力を抑えて圧倒的な勢力を築いていく。

やがて各流派は後継者の問題で悩む。草月流は蒼風の死後、娘の霞が後を継ぐがたった一年で死去。安達式は潮花の死後、2代目家元となった長男も10年後に死去。潮花の長女で、後継者と目されながらも家を出て自らの生け花”花芸安達流”を創設して独自の生け花を追及したトウ子が家元を継ぐ。そして池坊はついに男子の後継者を得ることができなかった。

感想:
副題に「昭和生け花戦国史」とあるように各流派のしのぎを削る戦いがメインになっている。また各流派内におけるドロドロした人間関係、脱税など、どぎつい話も多い。小説としては35年間をかなり駆け足で進めていくためどんどん場面がかわるのだが、かえって飽きさせない構成になっている。
また登場人物はみんな実在だからその後どうなったかなどを知ることもでき、これがまた興味深い。


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