ラヂオアクティヴィティ[Ra.] 第一部ブロック・バスター 049茸雲 ![]() 博士はむっとしながらも発言する。 「僕は残虐な行為は好まない……。 残虐な行為を支持するやつに、残虐行為を非難することはできない」 博士はマイクをさらに睨みつけて、さらに話す。 「ドイツ人であろうと、アメリカ人であろうと、悪いやつは悪い」 あまりにも、睨まれたので、マイクはむかついていた。 マイクは一歩前に出て、博士に近づいた。 その間に勇気は入った。 喧嘩になりはしないかと心配した。 「平和公園で喧嘩はしないでよ」 輝代は泣き叫ぶように懇願した。 「そうだとも、僕も、そう想うさ……」 マイクは手を出した。 博士も出し、二人は握手した。 「そんなことするつもりはない」 「しないさ!」 マイクはウィンクした。 それにしても十四万人以上が、たった一発で殺されたという……。 科学は人類の幸福に貢献するものだと信じていた博士にとっては、 この悪魔のような科学との対決のために日本に来ることを望んだのだ。 そして、今、博士はこの狂った、人類を破滅へとむかわせる核戦争の第一歩をまざまざと見たのだ。 「この茸雲がアメリカの記念切手になろうとしましたが、 アメリカの良識ある人たちが、それを食い止めてくれました。 もちろん、私たちも、反対しましたが……」 「内政干渉だ……」 マイクは怒る。 南部の古い伝統がまだ残る地区から来たマイクにとっては、内政干渉なのだろう。 それは、大人たちが話していることでもあるのだ。 カメラはしっかりと、二人の表情を捕らえていた。 「マイク!それは非科学的だ!」 「非科学的?」 みんなは、こんな時にも科学的思考をする博士が不思議でならなかった。 「そうだとも、この茸雲は何でできていると想う」 「広島の爆弾はウラン235だったよな……」 マイクも負けずに科学的思考をしようとした。 「それはそうだが……。この茸雲はね……。人間の骨や血、髪や肌、肉でできている……」 「うん……」 マイクは言葉をつまらせた。 博士は博士自身が冷静でないことに気づいた。 こう科学、科学というのは、実は、そう僕の感情が動揺しているから、 科学という思考に頼っているのだと内省している。 早くも冷静になった博士は自分自身をそう分析した。 そう、心も科学する時代なのである。
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