窓際日記・福島原発

窓際という仕事の雑感

ウクライナ戦争1年、西側メディアが伝えない「それでもロシアが戦争をやめない訳」

2023-02-22 03:57:14 | Weblog

『ナルイシキン率いる「歴史改ざんによりロシアの国益を損なおうとする企てに対抗するための大統領委員会」は、プーチンの15年ほど前の発言に沿う形で、文字どおりロシアの歴史教科書を書き換えた。

その発言の中で、プーチンは「ロシアの歴史にロシア人が恥ずべき点はない。誰もわれわれに罪悪感を持たせることは許されない」と述べた。この考え方に従い、子供たちが「祖国に誇りを抱けるようにする」ことが歴史教員の役割だとされた。

ナルイシキンはロシアの歴史教育を転換させ、ロシアがナチス・ドイツと緊密に協力した過去を完全に消し去り、旧ソ連の最高指導者だったヨシフ・スターリンによる残虐行為の多くをなかったことにした。さらに、ロシアが征服した地域や影響下に置いた国々に対して行った苛烈な支配も隠蔽した。

こうした歴史教育の転換がロシア人の考え方に大きな影響を及ぼしたことは明らかだ。歴史上の残忍な独裁者であるイワン4世(イワン雷帝)とスターリンの人気が高まり、2人の銅像の再建を求める声まで上がっている。

プーチンの政敵として知られる元石油王ミハイル・ホドルコフスキーは、プーチン体制下のロシアの時代精神を、愛国主義と国家主義と集団主義の混ざり合いと評している(ホドルコフスキーは10年間投獄された後、現在はロンドンで事実上の亡命生活を送っている)。

その精神の下では、ロシア人が祖国への誇りを忘れれば、ロシア国家は存在しなくなるとされる。そして、誇るべき偉大なロシアは強力な国家抜きには維持できない。また、ロシア人は集団主義的な国民であり、ロシア人の未来を明るくできるのは個人よりも国家だと考えられている。

・・・

私がこうした「プーチン主義」の発想を明確に認識したのは、あるリベラル派のロシア人と話したときだった。その人物によれば、リベラル派のロシア人も、ロシアが超大国ではないという考えは受け入れられず、反プーチン派も内心ではウクライナの敗北を望んでいる。ロシア人はほぼ全員、自国が特別な国であり、帝国のように振る舞う資格があると考えているというのだ。

しかし現実には、ロシア人の祖国への誇りを揺るがす事態が起きている。国境を接する隣国の中国は、GDPも人口もロシアの10倍、軍事予算は5倍に達する。しかも、欧米はロシアになんの相談もなく、ロシアの長年の同盟国であるセルビアに空爆を行い、ロシアの抗議をあざ笑うようにイラクをたたきのめした。

この状況では、筋金入りのリベラル派ですら、国際社会におけるロシアの地位向上を望まずにはいられない。その点、ウクライナとの戦いに勝てば、ロシアの強い意志と徹底した冷血さ、さらには常軌を逸したまでの非合理さを欧米に印象付けることができる。その上、ロシア国民はロシアが超大国の後継国なのだと確認できる。

私は当初、この人物がリップサービスでわざと過激なことを言ってみせたのだろうと思っていた。しかし、ロシアの大学の同僚の中でも最も頭脳明晰で、不思議な予測能力を持っている人物の言葉を聞いて、考えが変わった。

その人物いわく、プーチンはウクライナだけでなくモルドバものみ込むつもりでいて、その後はさらに東欧も支配下に置き、ヨーロッパに冷戦時代の「鉄のカーテン」を復活させようとしているというのだ。

この見解を聞いた私は、ロシア国内ではこうした動きを支持するムードが高まっているに違いないと思うようになった。もっと言えば、プーチンが権力を保ち続けるためには、そのような行動が不可欠な状況になっているのかもしれない。

・・・

元同僚たちに戦争の見通しについて尋ねると、強硬な反戦論者からも戦争支持派からも共通の答えが返ってきた。最終的にはロシアが完勝するか、少なくともウクライナが国家の機能を完全に停止する形で停戦するので、いずれにせよロシアの勝利で終わるというのだ。ウクライナは欧米の援助で一時的に支えられているだけで、欧米から送られる大量の武器や資金がなければ消滅する、というのが彼らの共通見解だった。

そしてロシア側にはまだ、欧米がいずれ疲弊して降参するか、核戦争へのエスカレートやNATOとロシアの全面対決の可能性に怯えて立ちすくむという期待がある。ジョー・バイデン米大統領の再選を予想するロシア人は1人もいなかった。バイデンが最高司令官でなくなれば、米軍がウクライナへの支援を止める可能性はあるというわけだ。

さらに戦争が長引けば長引くほど、ロシアとウクライナの軍事力の非対称性がはっきりすると、彼らは言う。戦争が膠着状態になると、数の力でロシアが圧倒的優位に立つ。ウクライナはいずれ兵員が底を突くが、ロシアはウクライナが耐え切れなくなるまで兵力を投入し続けることができるというのだ。

ロシア人は国家を守るためなら、兵士の命を完全に使い捨てにする底なしの能力がある──この覚悟は自分たちのアイデンティティーの一部になっていると、ある元同僚は言った。第2次大戦の死者2700万人という数字は、勝利と名誉の象徴とされている。欧米では同胞の死は心を痛める出来事だが、ロシアでは勇気と信念の証しとして祝福に近い扱いを受ける。国家の存亡を懸けた戦争であることが明らかになった今、ロシアはウクライナでの敗北を決して受け入れないだろう。

・・・

武器の製造能力という点でも、ロシアはウクライナと違い、外国に頼り切りではない。私が話したなかで、ロシアの敗北を想像できると答えたロシア人は1人もいなかった。

私は反戦派のロシア人からも、ロシア経済が制裁を乗り切ったことへの誇りに近い感情を強く感じた。彼らに言わせれば、ロシアの経済状況はドイツとほぼ同じで、将来の見通しはイギリスよりいい。22年は10%以上のマイナス成長という予測だったが、実際は3%弱のマイナスにとどまった。通貨ルーブルの価値も住宅市場や個人消費も、労働者の賃金も大きくは下落していない。

ロシアの大学で私の同僚だったグリゴリー・ユージン教授は最近、和平交渉に対する世論の支持の高まりと部分動員令の関連を指摘した。彼の見解によると、ロシア人は昨年秋に「日常生活の崩壊と危機感」を経験した。さらに、「勝利に対する信頼の喪失」と「具体的な勝利への道筋に関する説得力ある説明の欠如」も世論の変化につながったという。

ナルイシキン率いる「歴史改ざんによりロシアの国益を損なおうとする企てに対抗するための大統領委員会」は、プーチンの15年ほど前の発言に沿う形で、文字どおりロシアの歴史教科書を書き換えた。

その発言の中で、プーチンは「ロシアの歴史にロシア人が恥ずべき点はない。誰もわれわれに罪悪感を持たせることは許されない」と述べた。この考え方に従い、子供たちが「祖国に誇りを抱けるようにする」ことが歴史教員の役割だとされた。

ナルイシキンはロシアの歴史教育を転換させ、ロシアがナチス・ドイツと緊密に協力した過去を完全に消し去り、旧ソ連の最高指導者だったヨシフ・スターリンによる残虐行為の多くをなかったことにした。さらに、ロシアが征服した地域や影響下に置いた国々に対して行った苛烈な支配も隠蔽した。

こうした歴史教育の転換がロシア人の考え方に大きな影響を及ぼしたことは明らかだ。歴史上の残忍な独裁者であるイワン4世(イワン雷帝)とスターリンの人気が高まり、2人の銅像の再建を求める声まで上がっている。

プーチンの政敵として知られる元石油王ミハイル・ホドルコフスキーは、プーチン体制下のロシアの時代精神を、愛国主義と国家主義と集団主義の混ざり合いと評している(ホドルコフスキーは10年間投獄された後、現在はロンドンで事実上の亡命生活を送っている)。

その精神の下では、ロシア人が祖国への誇りを忘れれば、ロシア国家は存在しなくなるとされる。そして、誇るべき偉大なロシアは強力な国家抜きには維持できない。また、ロシア人は集団主義的な国民であり、ロシア人の未来を明るくできるのは個人よりも国家だと考えられている。』

https://archive.md/erhCf

 

 

 

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