チョーク、チョーク!
ワン、ツゥー、スリー、フォーとジョー樋口のカウントが始まり、ファイブとカウントが入る寸前で反則攻撃が止まる。
これで終わったかと思いきや、両手が相手の喉元に伸びて再び反則攻撃が…
何故なら5秒以内の反則は認められるって事で、ヒールの反則攻撃は延々と続くのである。
あれ、コレってデジャブ? なんとなく何処かであったような….
そうビートルズに対するキャピトルの連続反則技である。
アメリカでVJレーベルを経てキャピトルから仕切り直しとして再デビューを果たすも、当時のアメリカの音楽業界でのローカル・ルールだったLPレコードの曲数制限をいい事に、英オリジナル盤の制作コンセプトを全く無視するかの如く、アルバム制作においてマスター・テープからの独自のミキシングや別アートワークなどなど反則技が次々と繰り出された。
さらに曲数制限によってできた余剰の曲とわざとアルバムに収めなかったシングル曲で余剰にアルバムの制作敢行。
それに業を煮やしたビートルズが今までの反則に対するカウント・ダウンを示したのかどうかは定かではないが、少なくとも彼ら特有のシニカルなジョークとして、ブッチャー・カバーと知られるグロい写真をアメリカで発売されるアルバム、Yesterday & Today用に差し出したと思えるのだが...
その結末はよく知られている通り、レコードの回収及び既に生産されたアルバムは廃棄処分ではなく新たな写真(トランク・カバー)をジャケの上から張り付ける大ごとな突貫工事と相成り、セカンド・プルーフと呼ばれたその修正盤はレア物としてマニアの間でいまだに高額で取引されているそうな。
その事が影響したのか、禁じ手封じのため次作のペッパー軍曹のアルバムは同じ内容で世界同時発売と相成った。
コレに懲りて反則技封印と思いきや、何のこんな事ではへこたれないキャピトルはイギリスでEP2枚組で発売されたマジカル・ミステリー・ツアーになんと当時大ヒットしたシングル盤3枚からの曲を付け足し、1枚のLPを制作!
(当時買ったレコードにはもれなく曲目が印刷された紙切れが付いてきた。)
ここで ジョー樋口の反則技禁止のファイヴ・カウントが遂に入ると思いきや、絶賛大好評で英盤オリジナルEP2枚組がリングからの退場処分で米盤LPのマジカル・ミステリー・ツアーがオリジナルに逆転認定を果たす燕返しの秘儀。
確かにI Am The WalrusとカップリングされたHello Goodbye、 両サイドA面扱いのStrawberry Fields ForeverとPenny Lane、そしてBaby You’re A Rich ManがB面のAll You Need Is Loveが一枚のLPに収録されればほぼ中期のベスト・アルバムその1みたいなもので文句無し。
(反則技の数々がレーベルに記載されている。えーっと、Hello Goodbyeってどんな反則技だっけ? それは試合前のリング上でハローと友好の握手を交わし、その隙に急所蹴りを繰り出してリングから素早くグッバイと立ち去る高等な技じゃなかったけ...)
ワン、ツゥー、スリー、フォー、ファイヴ! 毒霧攻撃で反則負け!
ワシ、リング・ネームはブッチャーだけどブッチャー・カバーと関係ないしん、それに毒霧攻撃はしないってば! グレート・カブキに言ってよ。