ringoのつぶやき

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鳥貴族、28年ぶり値上げ 脱デフレへ転換告げるか

2017年08月28日 21時57分38秒 | 気になる株

「全品280円均一」でデフレ時代を駆け抜けてきた焼鳥店チェーンの鳥貴族がついに値上げを決めた。デフレ環境下で28年間も280円にこだわり業績を伸ばしてきた業界の勝ち組が、人件費などのコスト増に耐えかね苦渋の値上げを迫られた格好だ。熱烈ファンらの嘆き節が相次ぐ一方、同社の株価は上昇し、悲喜こもごもの状況だ。今回の値上げという「鶏鳴」は脱デフレ時代を告げているのだろうか。

圧倒的な安さに学生、サラリーマンの支持

 鳥貴族は28日朝、全品280円(税別)均一としていた価格を10月からすべて298円(同)に引き上げると発表した。「28とりパーティー」と名付けた2時間食べ放題・飲み放題の料金も2800円から2980円に上げる。一部店舗に残っている「280円均一」と表記された看板も順次新しいものへ切り替える方針だ。

 もともと焼き鳥は庶民の味の代表格だ。そのなかでも鳥貴族は、ボリュームはありながら安価な価格で学生やサラリーマンの支持を得てきた。何も飲まなくても焼き鳥を11品食べれば元が取れる食べ・飲み放題のファンも多い。値上げ発表の直後から、ツイッター上では「泣いちゃう」「失望した」「悲報」と嘆く声が相次いだ。一方で「それでも安い」「徐々にデフレ脱却を感じる」と値上げを理解し、前向きにとらえる声もあった。

 鳥貴族は1985年に大阪で1号店を開業。95年から「鳥貴族」に絞った単一ブランド展開を始め、近畿圏だけでなく首都圏や中京圏にも店舗網を広げた。2017年7月時点で567店舗を展開している。

 順調に業績を伸ばしてきた同社に暗雲が広がり始めたのは昨秋。30周年記念の値下げキャンペーンで想定を上回る客が来店したことが採算悪化を招き、人件費や野菜の仕入れ価格の上昇が追い打ちをかけた。今年6月には2017年7月期の通期業績の下方修正を発表。前期は5期ぶりに営業減益となったもようだ。

 もっとも値上げまでの道は平たんではなかった。これまで同社は品質・サービスを維持しながら利益率を向上させることを目指し、社内で「280円(税抜)均一を守ろうプロジェクト」を立ち上げて努力を続けた。同社の経営企画室は「28年間、いろんな努力をして価格を守ってきた。直近も店舗にタッチパネルを導入して人件費を抑えるなど全社横断的に無駄の削減に取り組んできた。しかし、それ以上に外部環境の影響が厳しかった」という。苦渋の決断だ。

外食は値上げ、小売りは値下げ

 外食業界ではほかにも値上げの動きが出ている。ペッパーフードサービスが7月に立ち食いステーキ店「いきなり!ステーキ」で一部メニューを値上げし、長崎ちゃんぽん店を展開するリンガーハットも西日本の店舗で8月から値上げを実施。すかいらーくも10月から全ブランドで一部メニューの値上げを検討し、平均客単価を15円程度上げる計画だ。

 リクルートジョブズ(東京・中央)の調べでは、レストランや居酒屋などフード系職種の17年7月のアルバイト・パート時給は平均973円と前年同期比2.5%高い。人手不足から前年同月比ベースで伸びが続いている。「人件費の上昇で値上げを検討せざるをえない」(すかいらーく)環境だ。

 外食業界で値上げが目立つ一方、小売業界では値下げの動きが相次いでいる。今春セブン―イレブン・ジャパンなどコンビニエンスストア各社が値下げし、今月に入ってからはイオンやイケア・ジャパンが値下げに踏み切った。消費者の節約志向は続き、すべての業界が値上げに動いているわけではない。

値下げ銘柄の株価は軟調

 今回の鳥貴族の値上げについて株式市場は好反応だ。28日の東京株式市場で同社の株価は午前中に一時前週末比10%高の水準まで上昇。終値は8.2%高の2815円と2カ月半ぶりの高値となった。値上げで利益率の改善が期待できるとの見方から個人投資家などの買いが広がった。

 株式市場では値上げに踏み切る「脱デフレ」銘柄を評価する傾向がある。8月3日に家庭用オリーブオイルの値上げを発表した日清オイリオグループの株価は急ピッチで上昇し、28日には年初来高値を更新した。ペッパーフードの足元の株価は値上げする前の6月末に比べ6割高い。

 逆に値下げに動く銘柄の株価は軟調だ。23日に食品や日用品の値下げを発表したイオンの株価は発表前に比べて小幅安。傘下のコンビニが4月に値下げしたセブン&アイ・ホールディングスの株価もさえない。値下げは目先の客数は増えやすいものの中長期でみると利益を圧迫する懸念があり、市場は持続的な収益成長につながる「値上げ力」を求めているといえる。

 鳥貴族が280円均一を続けた期間は、1998年からとされる日本のデフレ期にも重なる。足元の物価の伸びは依然として弱い。個人消費の回復や雇用逼迫など物価上昇の条件は整っているのに、なかなか上がらない背景には企業や個人のデフレ心理があると日銀は分析する。

 業界や企業によって価格戦略は様々で今後の物価見通しはなお不透明だが、鳥貴族に代表される「デフレの申し子」の値上げが広がればデフレ脱却の一助となる可能性はある。鶏の鳴き声は歴史の転換点を告げることがある。鳥貴族が決断した28年ぶりの値上げはその象徴となるかもしれない。

(佐藤史佳、栗原健太、福岡幸太郎)



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