リキデンタルオフィス 医療関係者向けブログ

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開業を目指す若手歯科医

2022-01-24 08:02:45 | Weblog

開業の準備をしているある先生が、私の医院で勉強をさせてほしいと、
昨年の秋から、高給待遇の職場をやめ、他院でのバイトで食いつなぎながら
当院に週2で来られている。
この先生は開業医でずっと常勤として勤務されていたが
たくさん来院する患者達をさばく、いわゆる流れ作業的な治療をしていたとのこと。
この様に売り上げをあげることに重きをおいた歯科治療への苛立ちや、
学んできた知識を活かせない現場に焦りを感じたらしい。

そんな彼に私は、テクニック的なことだけでなく、
何気ない気遣いも学んでほしいと思っている。
個々の患者さんの全身的な背景や社会的背景を考えた治療や
車椅子の患者さんや歩行が大変そうな高齢の患者さんなどに対しての配慮など、
当院がずっと行っている何気ない気遣いに、彼は驚いていたが
当たり前のことをしているだけである。
そんな彼に、バスで来られる高齢の患者さんが来院されたとき
小雨が降ってきたのでバス停までエスコートしてあげるようお願いした。
                     (写真がその時のもの)
普段は手の空いるスタッフが行うことであるが、今回は彼にお願いした。
営業思考ではない寄り添う姿勢の感性を彼には磨いてほしい。

医院経営ノウハウ、患者とのコミュニケーション能力アップ、
信頼関係を上げるコミュニケーション などなどの類の講演や勉強会が
巷にはあるが、それらを否定するつもりは毛頭ないが
私的にはそんなものに興味をもったり、学ぶ必要の以前に
『義』を意識した生き方をすべきであろうと考える。
この心構えは日常の姿勢や考え、治療の質、すべてに繋がってくるからだ。
私は彼に、技術的、学術的なことだけでなく、これを大きく伝えたい。
経営的なことなんて、かじる程度でよいと彼には諭している。

当院の治療スタイルは、彼は以前からよく見学に来られていたので
ある程度は分かっていたらしいが、実際来るようになって
思いやりのある治療と医療というものに、以前の自分への反省をおくる毎日らしい。
そして彼はここに来るたび、昼休みに技工、家に帰っても課題の技工などがある。
愚痴一つ言わず、黙々と私に言われたことをこなす姿勢は見上げたものである。
「若い内の苦労は買ってでもしろ」という心構えがある若い人は
昨今どれほどいるであろうか…

誠実な者に対しては、より誠実に接してあげなければならない。
彼が良い医療人になることに、私は大いなる期待をもっている。