「アビス」
原題:THE ABYSS
1989年 アメリカ 140分
■監督:
ジェームズ・キャメロン
■出演:
エド・ハリス
メアリー・エリザベス・マストラントニオ
マイケル・ビーン
●あらすじ
「アバター」の原点というべきジェームズ・キャメロン入魂の深海大作!
暗黒と寒冷と恐るべき水圧で人類を拒むアビス〈海溝〉。
行方不明になった米・原子力潜水艦救出指令を受けた深海油田発掘基地
“ディープ・コア”のクルーと海軍ダイバー・チーム“シール”は、
その地球上の未知なる場所へと足を踏み入れた……。
(20世紀スタジオより)
★感想など
1989年に”深海SF映画ブーム”と言うのが、似たような設定の映画が何本も89年に公開されたのだ。
タイトル的には以下の4本が有名だし、それしかないと思っていた。
「アビス」「ザ・デプス」「リバイアサン」「新リバイアサン/リフト」
このうち「アビス」以外の3本は当時観ている。
何故「アビス」だけ観なかったのかと言うと、他の3本がモンスタームービーなのに対し
「アビス」だけはそうじゃなくて友好的なエイリアンが出てくる牧歌的な内容なのと
公開当時にあまり良い評価ではなかったからだ。
そして当時から35年近く経ち、1989年の”深海SF映画ブーム”には
実は「マンタ」と言う映画もラインナップに加わっていた事が判明したのだ。
そこで「マンタ」を観ようかと思った時に、どうせなら1989年の”深海SF映画ブーム”作品を
全部観るかと思い立ったのであります。
どうせ観た作品も、内容なんてほとんど忘れているし。
まあ公開順に観ても良かったんだけど、まずは当時観てなかった「アビス」からスタートする事にしました。
まず当時”深海SF映画ブーム”なんてものが発生した原因は、「アビス」が原因だったらしいし。
と言うのは当時ジェームズ・キャメロン監督は注目の監督の一人だった。
「ターミネーター」「エイリアン2」と立て続けに大ヒット作を連発した新進気鋭のクリエーターが
次に作る作品は、深海を舞台に謎の生命体を遭遇する作品。
と言った情報が業界内に流れれば、そりゃ二匹目のどじょうを狙ったハリウッドの山師たちがこぞって似たような映画を製作した。
それが1989年に発生した”深海SF映画ブーム”だったのだ。
海千山千の業界人たちが、あの手この手で作り上げた二匹目のどじょうが次々と公開される中
ついに公開された「アビス」は、主に脚本面で色々と叩かれ、ついにはジェームズ・キャメロンの失敗作とまで言われる始末に。
しかし本作公開から3年後に、約32分程の未公開シーンを追加した「アビス 完全版」が製作。
これはのちのディレクターズカットのはしりであった。
この完全版で多少評価を上げたらしく、どのレビューを読んでも「完全版」で良くなったと書かれている。
しかし今回初めて観るにあたって、完全版ではなく劇場公開版を観る事をチョイスしました。
その理由は、流石に完全版は長いよ!
失敗作とまで言われている作品のさらに長いバージョンなんて、誰が選ぶんだよ。
と言う気持ちから短い方をチョイス。
不安な気持ちを抱えながら本作を観始めましたが
出だしから凄い面白かったよ!
まず私はジェームズ・キャメロンがSF大好きなところが、とても気に入ってるんですね。
特にそれを一番強く感じるシーンは、「ターミネーター2」の冒頭で描かれる未来世界。
あそこで描かれるスカイネットの兵器の映像など、正にキャメロンのSF好きが炸裂しているシーンだと思っている。
他にも「タイタニック」の製作時でも、どうもタイタニック号をSFに出てくる宇宙戦艦か何かと勘違いしていないかと
感じるフシがあったし。
そんな隙あらばSFマインドをぶっこんできたがるジェームズ・キャメロンが、最初からもうSF全開なところが堪らないのだ。
映像美もやってる事も、「エイリアン2」をブラッシュアップさせたような内容で好き放題やっている印象。
舞台が宇宙から深海に変わっただけのように錯覚してしまうような映像。
しかしここで描かれるSF的映像は、とてもワクワクさせられる素晴らしいものだった!
のちに「ターミネーター2」で大きく花開くCGの使い方にしても、すでに本作でも素晴らしい出来栄えで
今の目で見ても全然遜色ない出来栄えなのは、全くもって素晴らしいの一言しか出てこない。
あと気付いたのが、キャメロンって上から下に下がっていく時に、上から見守っている人を下から撮るアングル好きだよね。
例えば「ターミネーター2」のラストで、シュワちゃんが溶鉱炉に落りて行く時に上から見守るコナー親子のショットとか
「タイタニック」で救命ボートに乗って下に降ろされるローズを上から見守る、ジャックとローズの婚約者のシーンなど。
本作でも同じアングルがあるんだけど、これを書いていて気付いたのは、上から見守っている人たちは
いつも下に降りていく人を愛している人たちなんだね。
流石本作でも愛を重要視していたキャメロンだけはある。
とまあ脚本的にはアレな評価なので、映画全体の出来があまり良くはない印象を持つ人が多いのかも知れないが
SF映画が大好きな人には、それだけでも何倍もご飯が食べられるくらいの作品ではないかなあと思いますよ。