さりげないひと時

さりげない風景の移ろいに自然の気配を感じたり。
静かに流れて来る音楽を聴きながら、コーヒーをのんびり愉しんだり。

あの日の記憶

2015-08-22 21:39:34 | Kさんへ

近くで花火の音が聞こえてきます。

 

11年前の今頃、Kさんにとって医師からの宣告は青天の霹靂でした。

二人は無言のまま駐車場の車に戻った。

自宅に向かったが、Kさんはどこでもいいから車を走らせてと言う。

自宅前を通り過ぎ、会話もなく東に向かってあてもなく車を走らせた。

 

1時間ほど走り、友人が川遊び用に使っている別荘を思い出した。

しばらく田園の中の道路を走り、川沿の建物が見える場所に着くと、意外にも車が

駐車していた。

偶然にも友人のAさん夫妻が滞在していた。

 

これからプレジャーボートを出そうとしていたところでした。

私たちを快く歓迎しボートに乗せてくれた。

横利根川を進み、霞ヶ浦に出ると夕陽が落ちかけた西に向かい一気に加速した。

全速力で進むエンジンの音と波しぶきに驚いた魚のボラたちが飛び跳ねた。

夕闇が迫って来るまで、思いのままに湖上を走り回り横利根川に戻った。

ボートの繋留場所を通り越し、暗闇の中をライトの明かりを頼りに、ゆっくり進んだ。

花火大会が見える場所まで移動してくれたのでした。

真っ暗な川面に停泊し、しばらく打ち上がる花火を眺めた。

 

数時間前のことを忘れさせてくれたひと時でした。

いつまでも何処となく車を走り続けていたに違いないあの日。

Aさん夫妻が別荘に滞在していたことが、とても救いだった。

Kさんの病気のことは告げなかった。

あの日のAさん夫妻に感謝している。

 

思い出すと辛いが、あの日のことは忘れられない。

 


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