DIARY yuutu

yuuutunna toki no nikki

「朝の歌」(Morning Song)by シルヴィア・プラス(Sylvia Plath)(1932-1963):産まれた赤ん坊の新たな存在に対する不安が、母親になった晴れやかさと自信へと転換する!

2018-08-22 00:00:53 | 日記
 ‘Morning Song’ 「朝の歌」

Love set you going like a fat gold watch. 愛があなたを分厚い金時計のように始動させた。
The midwife slapped your footsoles, and your bald cry  産婆があなたの足裏をひっぱたく、するとあなたのむき出しの泣き声が
Took its place among the elements.  宇宙の4元素のうちに所を得る。

《感想1》詩人は、自分の赤ん坊の出産(この世への赤ん坊の出現)について歌う。あなた(赤ん坊)を始動させたのは確かに愛。あなたの心臓が金時計のように規則的に鼓動する。あなたは金のように貴重で、その上、分厚く存在する。
《感想1-2》「産婆があなたの足裏をひっぱたく、するとあなたのむき出しの泣き声が、宇宙の4元素のうちに所を得る。」あなたはこの世の現実の不可分の一部となる。赤ん坊の空虚だったイメージが、なによりも、赤ん坊の泣き声によって現実の存在として充実される。母親の心を、現実の赤ん坊が圧倒する。
 
Our voices echo, magnifying your arrival. New statue. 私たちの声が響き、あなたの到来を強める。新しい彫像。
In a drafty museum, your nakedness 隙間風が通る美術館(産室)で、あなたの裸体が
Shadows our safety. We stand round blankly as walls. 私たちの安全に影を落とす。私たちは壁のようにぽかんと周りに立つ。

《感想2》私たちがあなたを取り巻き、何事か語ることで、あなたの到来が強化される。あなたはまだ何者か謎(未決定)だ。新しい彫像のように質量として存在するだけだ。産室はまるで不安な隙間風が通る美術館のよう。あなたの未決定な存在が、私たちには不安だ。「私たちは壁のようにぽかんとあなたの周りに立つ。」

I’m no more your mother 私はあなたの母親だが、せいぜい雲と同じだ。
Than the cloud that distills a mirror to reflect its own その雲は、風の手で自分自身が
   slow ゆっくり消されていくのを映す一つの鏡を
Effacement at the wind’s hand. 放出する。

《感想3》赤ん坊は、母親の似姿(鏡)だ。赤ん坊という似姿は、しかし今や、母親とは別の自立した存在者だ。赤ん坊は、もはや母親を必要としない。赤ん坊は、母親(雲)にとっては、あたかも「風の手で自分自身(雲)がゆっくり消されていくのを映す一つの鏡(似姿)」だ。その赤ん坊(鏡or似姿)を、母親が放出(distill)した。

All night your moth-breath 一晩中、あなたの蛾のような息が
Flickers among the flat pink roses. I wake to listen: 平らなピンクの薔薇の模様の間をちらちらする。私は目覚め、耳をすます:
A far sea moves in my ear. 遠い海が耳の中で動く。

《感想4》一晩中、産まれたばかりの赤ん坊の息が聞える。平らなピンクの薔薇の模様の間をちらちらする蛾のような息だ。不気味で不安な蛾!だがその息の音は、なつかしい「遠い海」の音のようでもある。赤ん坊の存在への不安が、赤ん坊に対する愛情へと転換していく。

One cry, and I stumble from bed, cow-heavy and floral 赤ん坊が泣く、私はベッドからよろめき出る、乳房は牛のように重く
In my Victorian nightgown. ヴィクトリア朝の寝間着を着て私は花のようだ。
Your mouth opens clean as a cat’s. The window square あなたの口が猫の口のようにあざやかに開く。

《感想5》自分と別の存在である赤ん坊に不安を感じた母親が、今や、赤ん坊に授乳する慈愛ある母親に変化する。「赤ん坊が泣く、私はベッドからよろめき出る、乳房は牛のように重く、ヴィクトリア朝の寝間着を着て私は花のようだ。」一方で、母親としての育児の責任を引き受け、重い乳房!他方で子どもの母親になった晴れやかさと自信!
《感想5-2》「あなたの口が猫の口のようにあざやかに開く。」このような赤ん坊の無条件の母親に対する信頼と依存が、一層、母親に責任感と自信をもたせ、赤ん坊への愛情を深める。

Whitens and swallows its dull stars. And now you try まどの四角い枠が白んで、どんよりした星々を飲み込む。そして今、あなたは
Your handful of notes; いくつかの声音(コワネ)を試みる:
The clear vowels rise like balloons. くっきりした母音が風船のように立ち上る。

《感想6》すでに夜が明けようとしている。あなた(赤ん坊)は母乳が欲しくて声を立てる。「くっきりした母音が風船のように立ち上る。」あなたは、かわいい!こうして「朝の歌」が成就する。
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