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「山口 青邨(セイソン)」『日本詩人全集31』(新潮社、1969年):都市中産階級であり近代的教養を身につけた知識人的な俳句の愛し方!

2021-05-31 13:35:36 | 日記
山口青邨(セイソン)(1892-1988)は岩手県盛岡市出出身。二高(仙台)より東京帝大へ。東京帝大教授(鉱山学)となる。都市中産階級であり近代的教養を身につけた知識人的な俳句の愛し方と言える。S4(37歳)『ホトトギス』同人、S5主宰誌『夏草』を創刊。S17(50歳)日本文学報国会俳句部会常任幹事。社会人・学者・俳人いずれも順調に功なり名遂げた人として、健全で剛毅な句脈を形成している。

(1)『雑草園』(S9、42歳)
★「大久保も繁華となりぬ梅の花」:戦前、戦災前の大久保。まだ畑も多く、新開地だった。
★「みちのくの雪深ければ雪女郎」:盛岡の雪。「雪女郎」は「雪女」の別称。みちのくの雪は深い。
(2)『雪国』(S17、50歳)
★「時雨れつつ鋸山の歯に夕日」:夕日が見えているが、こちらは時雨(シグレ)。冬の通り雨。
★「沈みゆく海月(クラゲ)みづいろとなりて消ゆ」:クラゲがかわいい。
★伯林(ベルリン)「舞姫はリラの花よりも濃くにほふ」:香水の「3大フローラル」はジャスミン、すずらん(ミュゲ)、バラ。これにライラックを加え「4大フローラル」。舞姫の香水!
★オランダ「河骨(カウホネ)の上に撥橋(ハネバシ)撥ねてかゝる」:跳ね橋が開いている。河骨は黄色い花。
★「月の夜は狐の檻の暗かりし」:明るい月夜なのに狐の檻は暗い。毛皮用に狐を飼育した。

(3)『露団々』(S21、54歳)
★「稲妻の燃ゆれば柳一樹あり」:明るい稲妻、柳が光る。
★「ニコライの鐘ぶら下がり春の雁」:御茶の水のニコライ堂。鐘の塔が高い。その横を雁が春、北に帰る。
(4)『花宰相』(S25、58歳)※花宰相は「芍薬」(シャクヤク)!
★「寒鯉のかたまりをればあたゝかさう」:少しだけ温かいかもしれない。
★八月十五日承詔必謹「泣く時は泣くべし萩が咲けば秋」:天皇の詔(ミコトノリ)を承り(ウケタマワリ)、必ず謹んで行う。敗戦。やがて時が過ぎ秋になる。
★「世の中がかはりつゝあり花吹雪」:敗戦し翌年の春。Cf. S21.4/10 衆議院議員総選挙: 婦人議員39名当選。
★「真青に海は枯木を塗りつぶす」:冬の真青な海。枯木は(印象において)消える。
(5)『庭にて』(S30、63歳)
★「子供うれし赤き旗もち労働祭」:Cf. S21.5/1メーデー復活。
★東条大将以下刑につくと思はるる日「凩(コガラシ)や人のいのちの消ゆるとき」:S23(1948)/12/23巣鴨拘置所で死刑執行。
★牛久沼「遠ければ蝶のごとくに鷺とべる」:茨城県の牛久沼は広い。
(6)『冬青空』(S32、65歳)
★「裏白(ウラジロ)のちりちりちりと燃え了る」:正月飾りを燃やす。小正月(1/15)。「左義長」「どんど焼き」などと呼ばれる。
★「枯芭蕉なほ人かくすべく並ぶ」:芭蕉の葉が大きい。枯れても大きい!
★「血の海と言はばおそろし落椿」:赤一面の落椿。
★「月見草だんだん昼となりゆく黄」:黄色い月見草の朝。だんだん昼になってゆく。
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