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井伏鱒二(1898-1993)「川原の風景」(1948年、50歳):戦争後3年、生活も落ち着いてきた!

2018-04-12 21:29:09 | 日記
 川原の風景    A scene of a riverbank

去年の水害に 流されそこねた
川土手のひとかたまり
あたり一めんの小石原
誰いひ出したともなく敗戦島と呼ぶ

There is a part of bank which is left without flown away in spite of last year's flood.
All around it, there is a wide field of small pebbles.
It is called an island of defeated war.

けふはその島に山羊がゐる 
一株の ひよろひよろの梅の木に
なぜか山羊は癇性に頭をこすりつけ
梅の花を散らしてゐる

Today, there is a goat on the island.
Against one thin tree of plum, the goat strangely rubs its head with impatience and scatters around flowers of plum tree.

《感想1》
水害は去年の秋。すでに今は梅の花が咲き、春だ。
流され損ねた土手は、あたかも空襲に焼け残った建物の残骸のよう。
かくて「敗戦島」だ。

《感想2》
詩が発表されたのは1948年。敗戦から3年たつ。
山羊が、いらいらしている。敗戦直後の日本の人々の苛だちに似る。
だが梅は花をつけ、山羊は元気に飼われ、土手も洪水に耐え、ここだけ、かろうじて残った。

《感想3》
戦争後3年、生活も落ち着いてきた。安堵感が生れた。
苛立ちを残しつつ、今、時は春だ。
人々は必死に生きながらも、少し、希望を見ている。
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