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池田晶子『知ることより考えること』第3章「人間の品格」(★30-32):語り継がれるのは「体験」でなく「物語」!「学力」は「情報」、「思考力」は「知識」を得る!「哲学」は「救い」と無縁!

2025-07-27 12:07:59 | 日記
※池田晶子(1960-2007)『知ることより考えること』2006年(46歳)新潮社
★30「戦争体験を語り継ぐ」:「体験」は「語り継ぐ」ことが定義により不可能だ!語り継がれてゆくものは「体験」でなく「物語」だ!
☆「体験者」は「置かれた環境や状況から出てくる言葉」を語る。この場合「思想の普遍性」はどうなるのか。(97頁)
☆「『体験』としての『思想』をもとう」などと言うのは「戦後民主主義の寝言」だ。(98頁)
・「父親の戦死」が「名誉」か「犬死に」かは、「体験者」が「どう思いたいか」の問題である。(98頁)
・だが「戦争というものそれ自体」は正しいのか、正しくないのか、どっちなのか。(98頁)
☆「体験」は「語り継ぐ」ことが定義により不可能だ。語り継がれてゆくものは「体験」でなく「物語」だ。(99頁)
☆「『体験』から発生した『物語』」は「普遍的な思想」にはなっていない。(99頁)
☆だが「『体験』から発生した『物語』」を聞くことは、「普遍的な思想」をめざす人の「批判精神を鍛える」から無意味でない。(99頁)
・「物語」において、この人は「大げさ」に言ってはいないか、「嘘」を言ってはいないかを確かめる。(99頁)
・「一つの物語」しか聞いていない中国人の歴史認識を見てみれば、この間の事情はよくわかるはずだ。(99頁)

★31「学力いらない」:「学力」とは「情報」の多寡であり、「いかに自分で考えないか」という技法だ!
☆「知る」とは、「ゼロから自分で考えて知る」ことであり、そうして知った事柄を、「知識」と呼ぶ。対して「外から与えられなければ知ることのできない」事柄、また「外から与えられたことで知ったような気になっている」事柄は、「情報」と呼ぶ。(101頁)
☆「情報」と「知識」の違いが、「学力」と「思考力」の違いだ。(101頁)
・「学力」とは、「情報」の多寡であり、これに対して「思考力」とは「(文章を読み)自分で考え」、そして「知識」を得る力だ。(101頁)
・「学力」とは「いかに自分で考えないか」という技法だ。「自分で考えない人間」は「賢い人間」でない。(101頁)
☆「賢い人間」になるためには「学力」などなくてよい、極論すれば「字など読めない方がよい」。われわれは「字が読める」ために「自力で考える」ことをほとんどしない。(101頁)
☆「言葉」は両刃の剣で、「人を考えさせる」と同時に、「考えさせなくする機能」を併せ持つ。(101頁)

《感想》「字」が読めなくとも「口」(クチ)がある、つまり「語る」ことができる。「口」(クチ)つまり「語る」ことを介して様々の「情報」(⇔「知識」)が伝えられる。「口」(クチ)(or「語る」こと)があるために「自力で考える」ことをしないとも言える。語られる物語、噂話により「情報」(⇔「知識」)が広がる!

★32「景気のいい話」:「哲学的思考」は、いかなる「救い」も与えるものでない!「哲学的思考」の動機は「この『存在』がどうなっているのかを知りたい」という、たんにそれだけだからだ!
☆バブルの時代の崩壊は、「外面の時代」から「内面の時代」への移行、「人がものを考え始める」、「『哲学』が復権する」と言われる。(103頁)
・「景気の悪い時代をどう生きるか」みたいな「人生訓」は「哲学」でない。(104頁)
☆「本来的な『哲学的思考』というのは、いかなる『救い』も与えるものではない。」「哲学的思考」の動機は「この『存在』がどうなっているのかを知りたい」という、たんにそれだけだからだ。(104頁)
☆さて今(2005年)、再び「景気がよくなる」という。(104頁)
・「IT長者」、「何じゃらセレブ」の出現、「勝ち負け」の選別はいよいよ鮮やかで、「景気のよくなり方」は「前」(バブルの時代)より悪いんじゃないのか。(104頁)
・「六本木ヒルズ」なんて「醜悪で危ういもの」、「選別の象徴」として羨望の的になっている「野暮」なもの。「みっともない」。「節操を知らない」。(104頁)
☆「哲学」と「生活」or「景気」は全然関係ない。「哲学なんてのは、生活に困らない人がするものだ」というのが「哲学をしない人」の常套句だ。しかし「あんなにも生活に困らない人々」(Ex.「IT長者」、「何じゃらセレブ」)が「哲学」する気配に一向にならないのはどういうわけか。(105頁)
☆「負け組」の皆さん、「哲学」始めてみませんか。「時代も人生もしょせんこの世の出来事だと見えてくるのは、なかなかイイものですよ」。(105頁)
・「失われた十年」なんて笑わせちゃいけません。「『存在』は不滅です」。(105頁)
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