外国語学習の意味、そして母国語について考えましょう

社内公用語の英語化、小学校での英語の義務化など最近「英語」に振り回され気味ですが、何故、どの程度英語を学ぶか考えます。

とても優れたNHKの英語番組<<旧>>プレキソ

2014年04月25日 | 言葉について:英語から国語へ

 

とても優れたNHKの英語番組、『<<旧>>プレキソ』

プレキソ AZ






2011年に一年間放送され、その後は、再放送とネットで見ることができるNHKの小学生向け英語番組『プレキソ』は、とても優れた番組です。ときどき、NHKは、本当に「世界に出しても恥ずかしくない」、いや、世界の水準をリードするような番組を作ることがあります。

音楽番組の『夕方クインテット』もそうでした。『プレキソ』も『夕方クインテット』も、子供夕方クインテット向け、10分の番組です。しかし、「子供だましでない」という点、「並みの大人向け番組より大人にとっても面白い」という特徴があります。『夕方クインテット』は海外で賞をとったと聞きます。

ところが、この『プレキソ』が再開されるというので見たら、その水準があまりに……なので驚いてしまいました。ネット上で「批判」ということははばかれるのでいたしませんが、以下の如何に『<<旧>>プレキソ』が優れているか、その一端を示しますので、「新」にはそれが欠けている、いや、はっきり申し上げて、その「逆」と

お考えになれば、「新」のことをどう私が見ているか分かると思います。

まず、多少抽象的ですが、プレキソの優れた点を箇条書きで述べます。

(1) 人が学ぶ際の心理を把握している。

(2) 言語学的に、第二外国語学習がどういうものか洞察している。

(3) 映像的に美しい。

(4)ユーモアのセンスがあふれている。

(5) 子供だけでなく、大人も、そして、日本人以外の関心も呼ぶ。


いかがでしょう。まだプレキソを見ていない方は、ぜひ見て確かめてください。冒頭の可愛いキャラクター、"A"と"Z"というのが番組をリードします。実写とアニメーションの組み合わせは、美術的にも、タイミングの面でも一流です。

プレキソプラネット冒頭には『プレキソ・プラネット』という地球が現われます。このプレキソプレネット地球のどこかをクリックすると音がしたり、ゲームに導かれたりします。人間の好奇心のよい面を狙っています。

右上の『ムービー・日英対訳』という部分をクリックすると、2011年の毎週の番組が4月から一年分見ることができます。最初は、「What color is this?
これは何色?」、二回目は、「How do you make purple? むらさきはどう作る?」です。色という普遍的なものに注意を向けながら、国によって「違う」という面にも気づかせます。

何も考えていない教師だと、「私は日本人です」、「私は10歳です」という、知的動機に結びつかない例文を暗記させたりします。「ぼく、何歳?」に答えられるようにしておくのは大人の都合であって、子供は言いたくて答えているわけではありません。「私は日本人です」を言う必要を感じるのはもっと先です。ちなみに、4月1ヶ月の「さまざまな色」は、それだけでも楽しいものです。

プレキソ ポスト以前、私は欧州の子は「近所に全く違う言葉を使いながら、しかし、同じような生活をする人を身近に見ているのに、日本人の子はそういう経験が少ないのではないか」という言ったことがありますが、この視点と同じものを感じます。

さらに言うと、「何」、「どうして」という因果関係の展開が、人の心の発展をよく取らえていると思います。そのことは、5月のEpisode 8「How do you make it? これ、どうやって作る?」にとてもよく現われています。

このEpisodeでは、正三角形(equilateral triangle)をどのように作るかとい正三角形う課題が与えられます。赤い折り紙が中心に展開します。ああでもないこうでもないという過程に習う側を参加させることで、テレビの一方性の危険を減じようとしているかのようです。前半に正三角形が完成します。

その直後、番組の中間に、この記事の最後に触れる、抜群に優れた2分のアニメーションがあります。『マイクロ。ストーリー』と名づけられています。世界的アニメーター、山村浩の作品です(アニメーション直前の寸劇も卓越!)。これを挟んで、後半の、「カウ童子」が教室を訪問する場面に移ります。

そこでは、サッカーボーカウ童子ル形を作るという課題が生徒に与えられます。美術作品のように、直観的にそれを作ることはできません。まず、正三角形を作るという課題を解決します。その後で、正六角形(hexagone)、そして、最後にサッカーボールを全員で完成します。その過程には、あることを達成するためには①分析をし、段取りを粘り強く踏んでいく②みんなの協力が必要だ、というメッセージがあるように思います。

さて、最後に、番組中ごろの『マイクロストーリー』というアニメーションに触れないマイクロストーリー4月わけにはまいりません。作者は山村浩さん。ジブリとは違う、もう一つの日本の優れた伝統、短編アニメーションの世界的大家です。言葉書きはアーサー・ビナードさんという日本語で詩を書くアメリカ人。一見、英語を始めたての人には難しい表現もあります。5月には仮定法も登場しました。しかし、習う側が、映像から、こういう表現も必要なのだなという方向へ心が動けばよいのです。作者はそう考えていると思います。そういう言語学習の機微をNHKの人は理解していないのでないかと邪推したくなります。

プレキソ くま今、日本の番組の世界への発信などということが言われていますが、日本語を用いていない、この『<<旧>>プレキソ』など、アジア各国に受け入れられる可能性は大いにあるでしょう。英語を学びながら、アジアの子供たちが日本の繊細な文化に触れることができたらとてもすばらしいことだと思います。マイクロストーリー ロンドン

 


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