偽善エコロジー
「環境生活」が地球を破壊する
武田邦彦 著
幻冬舎新書
内容は、環境に良いとされる行動を、一つ一つ、正しいか、それとも間違っているのかを検証していく。
そして、今、取り組んでいる「エコ」と呼ばれる行いの多くが、地球のためになっていないことを解説している。
無論、だからといって、大量消費を促しているわけではない。
著者は、情報を鵜呑みにするのではなく、疑い、検証してみることが重要と説いている。
さらに、充実した人生を送れば、モノが少なくて済み、結果的に、エコ生活に繋がる、とも述べている。
私は、第一章の最初がレジ袋の話だったので、迷わず購入した。
レジ袋を使用しない生活は、本当にエコな生活なのか?
著者は違うと論じている。
詳しい内容は著書を読んで欲しいが、まず、レジ袋(ポリ袋)は石油成分の内、今まで捨てていた部分を使って作っていること。
レジ袋を製造しなくなると、この成分を捨ててしまうことになる。
さらに、レジ袋よりエコバックのほうが大量に石油を消費しているという事実。
家庭生活では、ゴミ袋として多くのレジ袋をリユースする。
最終的には、市町村の有料ゴミ袋にまとめることになるが、各部屋、キッチンなどのゴミ容器に直接ゴミを入れる家庭は少ない。
ゴミ容器にレジ袋を掛けていることが多い。
レジ袋が全くなくなったら、代用のポリ袋を買うことになり、本末転倒だ。
ここからは私の私見だ。
まず、レジ袋はポリ袋の一つだ。
ポリエチレンからできた袋だから、ポリ袋である。
だが、ポリ袋という人は少ない、もっぱらビニール袋のほうが名の通りが良い。
だから、レジ袋には「この袋はポリエチレン製で焼却しても、有害な塩素ガスは発生しません」と印刷してある。
これは、レジ袋の素材が塩化ビニールだと思い込んでいるからだろう。
そして、ポリ袋は使用目的によって呼び名が変わる。
ゴミを入れる袋はゴミ袋、食品を入れると食品保存袋、開閉可能なポリ袋はチャック付き袋。
また、ポリエチレンは袋に加工されるだけではない。
袋より更に薄く伸ばして、牛乳パックに貼りあわせたり、歯磨き粉のチューブ、さらにはパイプ類、今では自動車の燃料タンクにも採用されている。
できることから始める、ということでレジ袋の削減を取り上げることには賛成だが、日常生活には、これだけ多くのポリエチレン製品が関わっていることを、知ってもらうことが先決だと思う。
現代生活は、ポリエチレン製品なしでは成り立たない。
レジ袋の次はゴミ袋を削減しよう、となったらどうなるのか。
例えば、病院なら、あっという間に感染症が発生するだろう。
日常生活なら、ゴミステーションは、衛生が保てない。
対策としては、強力な薬品を散布することになるだろうから、地球環境にはもっと負荷がかかる。
私はレジ袋を含めたポリ袋の一番の問題は、ポイ捨てだと考える。
レジ袋を餌と間違い誤食して命を落とす生物が多い。
レジ袋は自然環境では分解はしない。
一説ではレジ袋が分解するまで、地上で100年、水中で450年といわれている。
だから、今、風をはらんでさまよっているレジ袋は、皆さんが死んでも、どこかにあり続ける。
これは、非常に恐ろしいことだ。
あと数十年すると、レジ袋で覆い尽くされた世界になるかもしれない。
レジ袋を減らすということは重要だ、だが、現代生活に不可欠であることも事実だ。
さらに、そのレジ袋は自然環境にとって大変な危険物であることも自覚して欲しい。
正しく処理すれば、人間と地球の共存が可能になると思う。
→テクノパック