プラスチックの現実と未来へのアイデア
高田秀重監修
東京書籍
大地、海を次の世代に汚さずに綺麗な状態で引き継ぐ。
そのためにはどこから手をつけていくのか?
本書ではプラスチック製品の削減を提唱しています。
プラスチックの削減でまず思い浮かぶのはレジ袋です。
現在ではレジ袋は有料化になり、大幅な削減に成功しています。
しかしレジ袋の国内流通量より大きく上回るのがペットボトルだそうで、使用済みペットボトルは年間約50万トン、これは国内のプラごみ量の5.5%に当たります。
レジ袋は約20万トン(本書レジ袋有料化直前の発刊)
ペットボトルも最近では薄肉化が進み、改善が見られますが、現在の生活にはなくてはならないものになっていますので、大幅な減少には時間がかかると思います。
なぜプラスチックが自然界に流失すると問題になるかと言えば、自然分解されないことです。
発泡スチロール製の容器は、消えてなくなるまで数千年かかり、その間、水と土壌を汚染し続けるという指摘もあります。
レジ袋や発泡スチロール製の容器は海洋に流失してしまうと、海面を漂い紫外線と波で細かく砕かれます。
海洋生物にとっては餌と間違って食べてしまうことは当然のことでしょう。
そして死に至らしめる。
本当に1000年経てば消えてなくならそれまで待つしか手立てはないでしょうが、それまで海洋生物に誤食されない保証はありません。
大切なのはこれ以上プラごみを海洋流失させないことと、海洋に漂うプラごみの回収方法を生み出すことです。
Chapter02の07では日本の使い捨てプラスチック使用量とそのリサイクルについて書いてあります。
なんと日本の使い捨てプラスチックの使用量は米国についで世界2位。
資源のない国ですのでもっと使用量を減らさなければならないと思います。
しかし、ポリ袋や使い捨ての食器を販売する身とすれば、衛生面にプラスチックが役立っている面も見逃せません。
病院でプラスチック製のゴミ袋や医療器具、感染症発生時に使用するディスポ食器などプラスチック製品使用が役立っているのではないかと思います。
さて、最近問題となっているマイクロプラスチックについてもchapter03の21に記載があります。
マイクロプラスチックとは微細なプラスチックごみの総称で、5ミリメートル以下のものを言います。
マイクロプラスチックによる健康被害が懸念されているプラスチックは化学的に安定した物質であるため、基本的には人本への影響が少ないと考えられています。食べたとしても分解されずに排泄されるからです。ただし、プラスチック製品に配合されている添加剤の健康への影響、具体的には環境ホルモンなどについては要注意です。さらに、海水中に微細なプラスチックの粒、マイクロプラスチックが想像以上に存在することが広く知られるようになったことで、別の角度から健康への影響が心配されるようになりました。プラスチック自体に毒性がなくても、有害物質を吸着したり運んだりすることが明らかになって来たからです。
本文より
マイクロプラスチックは小さな海洋生物が餌と誤認して食し、食物連鎖によって大きなダメージを与えると認識していましたが、有害物質を吸着するとは思ってもみませんでした。
マイクロプラスチックには洗顔剤に配合されるスクラブなどを一次的マイクロプラスチック、プラスチック製品が微細化してできたものを二次的マイクロプラスチックと呼びます。
一次的マイクロプラスチックは企業努力により代替え品ができるでしょうが二次的マイクロプラスチックをなくすことには多大な時間と人々の努力が必要です。
日本ではレジ袋の有料化が始まるとバイオマス原料入りのレジ袋が増えました。
バイオマス原料は植物由来の原料でレジ袋に混入してあるものの多くはサトウキビの搾りかすを原料としていますので、食料になる作物を使用しているわけではありませんのでご安心ください。
そして、さらに自然界に流出しても時間経過とともに自然分解するのが聖分解プラスチックです。
現在はコストが高く普及にはもう少し時間がかかりそうですが、早く普及して欲しいものです。
本書ではもちろん、それらにも解説があります。
再生可能な大替素材の開発と個人がプラスチックをできるだけ使わない、リユース、リサイクルを徹底することが海洋、大地を汚さずに次の世代に渡すことになりそうです。