『今日の一冊』by 大人のための児童文学案内人☆詩乃

大人だって児童文学を楽しみたい、いや、大人こそ読みたい。
ハッとする気づきのある絵本や児童文学をご紹介♪

地味だけれど伝えたい

2016-11-13 21:33:20 | 絵本


『にぐるまひいて』ドナルド・ホール作 ババラ・クーニー絵 もきかずこ訳 ほるぷ出版
コールデコット賞受賞


先日ご紹介した『ウエズレーの国』のほか、もう一冊5年生の読み聞かせで読んだのが、こちらの『にぐるまひいて』。

バーバラ・クーニーが大好きなんです(正統派好き)。以前ご紹介した『ルピナスさん』もこの方の絵。
この『にぐるまひいて』は、昔のアメリカの山奥で暮らす一家の一年の様子を描いたもの。一年かけて家族みんなで作物育て、収穫し、加工し、色んなものを作って父さんが町へ売りに行きます。そして、また生活に必要なものとちょっとしたお楽しみ、はっかキャンディなんかを買って帰る。今ってなんでも買っちゃうでしょう?だからこそ、今の子たちにこういう暮らしもあったのよ、ってことをなんか伝えたくて・・・。
静かです。地味です。ハッキリ言って読み聞かせで、いわゆる「ウケる」絵本ではありません。でも、なんとも言えない良さを感じるのは、自然のサイクルとの“つながり”を感じるからなのかも。暮らすって本来こういうことよね、って

何にビックリって、お父さんってばホーントに持ち物全部売っちゃうんです。牛も!荷車も!!で、歩いて帰ります。10日かけてね。たくましい。そして、冬の間、また新しいくびきを削り、新しい荷車を作るために板をひくのです。荷車まで作るんかい!?と最初に読んだときはびっくりしました。農家なら農家だけ、牧畜なら牧畜だけ、木工なら木工だけ・・・じゃなくて、なんでもできちゃうトータルなんです。
「ウケる」絵本だけが、いい絵本じゃない。地味だけれど伝えたい絵本もある。文字数こそ少ないけれど、中高生、大人にも勧めたいシンプルな美しい絵本です