皮膚呼吸しか知らない蛙

アスペルガー症候群当事者が、2次障害に溺れることもありながら社会に適応していく道のりを綴っていきます。

ダーウィンの悪夢(Darwin's Nightmare)

2008-10-01 18:25:10 | 映画・書籍・芸術作品

久しぶりに心にズキンとくる映画を観ました。

監督・構成・撮影:フーベルト・ザウバー

『ダーウィンの悪夢(Darwin's Nightmare)』

ダーウィンの悪夢公式WEBサイト

アフリカ中東部。世界で二番目に大きな淡水湖ヴィクトリア湖周辺の町ムワンザでのドキュメンタリー映画です。

ヴィクトリア湖には元々幾多の在来種が生存しガラパゴスと並んで進化論の湖とも呼ばれていたが、ある欧州人半世紀前に放流した「ナイルバーチ」という肉食魚が生態系を破壊する有様。
日々刻々とヴィクトリア湖の生態系を死滅させていく中、タンザニアという国として外貨を稼ぐ手段となった「ナイルバーチ」の輸出。
ナイルバーチの異常繁殖により、そのナイルバーチ自体も生息出来なくなるほどの危機的状況まで追い込まれてしまった。
そのことを国際ワークショップで語ろうとしても、国のお偉いさんは「ナイルバーチ」を如何に売り込むかという事に執着。
その生産工程に資金を援助する欧州諸国。
資本主義社会の枠組みが機能しだしたと賛辞を送る背景で、一部の特権階級だけが富みを獲るシステム。
そんな状況でもなおナイルバーチに生活の糧を求め続ける人々。

飢餓・貧困・エイズ・マラリアという環境の中、男達はヴィクトリア湖で釣れる魚を収入源とするため湖周辺まで出稼ぎにくる。
キャンプをくみ採れるかどうかも分からない魚を探し求める日々。
そこにエイズに感染した女性が売春の手を差し伸べる。
彼女たちもそれでしか生きていく方法がないのである。
出稼ぎ中、エイズ等で死去すると生きて故郷を踏むよりも賃金がかかるとの理由でその場に埋められる人々。
女性はエイズで伴侶が亡くなり、ここでも稼ぎが必要なため売春行為に。
主な売春相手はヴィクトリア湖で採れる魚を欧州へ空輸する輸送機パイロットのロシア人。
そこで暴行を受け、代わりにエイズを感染させる。
教会の神父は語る。
「村では1月に10~15人がエイズで命を落とす」
「それでもカトリックの教えとしてコンドームは薦められない」

多くの人間が漸く口に出来るのは、工場から残飯として搬出される魚の頭。
これをトラックいっぱいに積み込み、村へ搬送。
その魚の頭を揚げ物にするのもどうやら特権階級。
腐乱した残骸からはアンモニアガスが噴出し、眼球が落ちてしまった女性もいる。
子供達はナイルバーチの梱包用の発泡スチロールを火で炙り、ドラッグの変わりとしてラリッている。本人達はラリッているのを自覚している。
彼らはこう答える「空腹や虐待という現実から逃避するために吸ってるんだ」
「たまに死んじゃう子もいるけど、こうしている時は忘れられるんだ」と

空輸の為に使われる輸送機にも裏がある。
アフリカ諸国で生産される食料を欧州に輸送する際に使用される輸送機はコストの安いロシア機。
タンザニアの空港に着陸する際に持ち込まれる積荷は「武器」
タンザニアのとある空港は監視体制が緩く、武器の密輸ルートとなっている。
その武器はアンゴラやコンゴなどの民族紛争地帯に送られる。
民族紛争地帯では主な働き口が兵士しかない状態となり、武器弾薬を使う事を歓迎する。
そして多くの人間が殺されていく。

警備員をしているラファエルは呟く
「戦争があれば金になるのに………皆戦争を望んでいるはずさ」


今まで殆どの人が表現しなかった(あえて公表しなかったと言うべきか)もの凄くリアルな話だと思う。


先進国と呼ばれる国々に住む人間は、「援助・援助」と傲慢な言葉を口にする。
しかしその実態は己の利益のためにあらゆる者を犠牲にするエゴがまざまざと見える。

この様な連鎖は様々な形で世界各国で起こっていると思う。

今こんなことを語っている間にも、日本の食卓に「ナイルバーチ」があがっている。
何をすることが必要なのか、根本的に考えなくてはならない。

 

まさに悪夢だが、これが現実だ。



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