ウィトゲンシュタイン的日々

日常生活での出来事、登山・本などについての雑感。

慶派仏教彫刻探訪 伊豆編

2014-03-10 20:00:57 | 仏教彫刻探訪

理由は何でもよかったのだが、出版記念ということにして伊豆に行ってきた。

というのも、吾妻小舎で読みふけっていた副島弘道『運慶 その人と芸術』で紹介されていた
北条時政の依頼で運慶が作った阿弥陀如来坐像と不動明王三尊立像、毘沙門天立像が
伊豆の国市願成就院に伝えられており、なんとしても行ってみたくて仕方がなかったのだ。
『運慶 その人と芸術』の表紙の写真が、その毘沙門天立像である。
当初は、願成就院の仏像を拝観した後、近くの葛城山から発端丈山への登山を目論んでいたが
このところの書店回りや本の発送などで根を詰めたせいで少々疲れ気味だったので
友人のぽぴさんと2人、登山はやめて、温泉といちご狩りを加えてののんびり旅となった。



ぽぴさんとは7時30分に上野駅で待ち合わせ、山手線・東海道線を乗り継いで三島駅に到着。

三島駅で伊豆箱根鉄道駿豆線に乗り換える。

韮山駅で電車を降り、駅でパンフレットをもらい、道標の指し示す方へと歩く
鎌倉古道を歩きながら、北条時政や義時、政子、源頼朝らが
840年ほど前には、この辺をウロウロしていたのだと思うと、感慨深い。

寺の境内で咲いている梅から、とても良い香りが漂ってくる。
梅はー咲いーたか、さくーらーはまーだか

咲いていた―
これは河津桜だろうか。
既に満開の桜の花の蜜を吸いに、メジロの大群が花から花へと飛び回っている。

韮山駅から歩くこと15分、文治5(1189)年に北条時政が
奥州藤原氏討伐の戦勝を祈願して建立した願成就院の大御堂が見えてきた。
背後の守山の麓一帯には、北条氏邸跡や北条政子産湯の井戸などがあり
この地がかつて北条氏の勢力範囲であったことがわかる。
大御堂とその背後の寺宝を収めた建物は、ボランティアガイドの方の案内で
楽しい会話つきの、大変有意義な拝観ができた。
それにしても、やはり毘沙門天立像と不動明王三尊立像をまじまじと見るにつけ
この時運慶は大胆な冒険に出たものだ、と、つくづく思う。
それを受け入れた鎌倉武士の、これまでとは違う世の中を武士の手で作っていくのだ
という気概のようなものが、新しい表現者を受け入れる素地になったのだろうか。
願成就院にある運慶作の諸仏は、京都の公家が見たら醜悪だと忌避されるような表現だ。
公家達は、大番役で東国から来た武士達を、野蛮で醜悪な「あずまえびす」と蔑んでいた。
鎌倉武士の台頭は、世の中の価値観や美意識が大きく変わった
時代の大転換点であったと言えるだろう。

諸仏を拝観した後は、願成就院境内にある北条時政の墓所に行ってみた。
あまりにも露骨な政敵の追い落としに見かねた息子・義時に引導を渡され
表舞台からの引退を余儀なくされた時政は、78歳で没するまで、この地で過ごしたと言われている。


願成就院から伊豆長岡駅に向かう道すがら
頼朝が政子と結ばれる前に、子まで成した伊藤佑親の娘・八重姫にまつわる寺があり
そこにあった由緒書きを皮切りに、歴史の苦手なぽぴさんに、頼朝の挙兵前後から
北条氏が執権として権力を握るようになった過程と、頼朝死後の源氏の末路をざっくりレクチャー。
すると、ぽぴさんは、権力者がこぞって寺を建立した動機や
権謀術数を巡らして政敵を追い落とす権力闘争、同族での殺し合いに気分が悪くなり
「なんだー、人間って、結局そうなわけー。
 ドラマとかでなんかかっこよくやっているけれど、ドロドロじゃん…
そうそう、日本の歴史、というより、人間の歴史は血塗られているのだよ。
「こんなんだったら、うっすら知っているくらいで良かった。
 どうしてこんなに日本には権力者が建てた寺がいっぱいあるのかと思っていだけど
 これじゃあ、祟られるわけだよ、オバケ、出るよ
 ぴすけはどうしてこんなの学んで(一応史学科卒)、嫌にならないの?」
と、なぜか攻撃の矛先が、平然として話していたぴすけに向かってきた。
「うーん、『いつか来た道』という過ちを繰り返さないためかな。」
そう、だから今、とてもきな臭い、いやーな気分になっているのだよ
先の選挙で衆参のねじれが解消し、自民党が与党に返り咲いたことで
ますます「いつか来た道」になだれ込んでいく様相を呈している
2人で、よく晴れた温暖な伊豆に似合わない暗い気持ちになって駅まで歩き
バスに乗ってランチと日帰り温泉のあるホテルサンバレー富士見に向かう。



おおーっ
ホテルサンバレー富士見のロビーには、大きな雛飾りが所狭しと飾られていて壮観。
先ほどのまでの暗い気持ちが少し晴れて、和やかな気持ちになる。
ホテル内の古奈青山という中華レストランでランチを予約し
1名につき500円を追加すると日帰り入浴ができるプランを利用する。
ホテルサンバレー富士見はかなり年季の入った建物で、風呂も広いとは言えないが
PH9.0のアルカリ性単純泉は、肌がつるつるすべすべになる、なかなかいいお湯だ


ホテルサンバレー富士見から韮山いちご狩りセンターまでは少々距離があるので
ここは贅沢にタクシーを利用。

いちご狩りセンターの周辺では菜の花が満開。
大勢の人が受け付けに並んでいて、駐車場には観光バスが停まっている。
受付を済ませると、センターで用意してくれた車で指定されたハウスまで移動する。

このようなハウスがいたるところに立ち並んでいて、この時期の韮山の一大観光地となっている。

ハウスに入る前に、練乳入れとへた入れがセットになった容器を渡され
ハウス内は一方通行で、畝を跨いではいけない旨を注意され
ぽぴさんとぴすけは、隣同士の畝を、いちごを摘みながらゆるゆると進む。

真っ赤ないちごはたくさんあるのだが、真っ赤だからおいしいとは限らないんだな、これが。
甘味と酸味と香りが三拍子そろったいちごを選ぶというのは至難の業。
しかし、下手な鉄砲も数撃ちゃ当たるもので、なんとなくおいしいいちごがわかるようになってくる。
30分食べ放題だが、30分もかからないうちにお腹はいっぱいになり
ゲップまでいちご味に(おっと、失礼)。
帰りはセンターの方が自動車でハウスまで迎えに来てくれて、受け付け前まで送ってくれる。
韮山いちご狩りセンターから韮山駅までは、のんびりと歩く

韮山駅に向かう途中にあったマンホールの蓋。
富士山と、いちごと、反射炉のデザインは、なかなか良い感じ。
この日は生憎富士山が姿を現すことはなかったが、ここで立派な富士山を見られたから良しとしよう。
のんびり歩いて韮山駅に着いた時、上り電車がホームに入ってきたのが見えたのだが
のんびり行こうと決めていたため乗る気もなく、のんびり駅舎で佇んでいたら…
「お客さん達どこに行くの?」
と、駅員さんに尋ねられた。
「三島です。」
と答えるか答えないかのうちに
「はい、これ持ってすぐ乗って三島でこれを出して運賃払ってね
と、有無をも言わせず停車中の電車に誘導された。
私たちが乗った直後にドアは閉まり、発車
のんびりモードのこの日、唯一の慌ただしい出来事だった


ぽぴさん、一日お付き合いくださり、ありがとう
お蔭様でとてもリフレッシュできました。
今日は体が軽い
よーし、活動、再開



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4 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
伊豆もいいですね (芝刈り爺さん)
2014-03-11 07:57:35
運慶の有名な仏像が、あるとはつゆ知らず。でした。
伊豆のお寺も桜もウメも、菜の花もイチゴもいいですね。

本、たくさん売れますように。フェイスブックで宣伝しておきます。ところで本について書いたあのブログは?なんというのでしたっけ??
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願成就院、穴場です (ぴすけ)
2014-03-11 12:02:27
芝刈り爺さん、願成就院は穴場です。
慶派の仏教彫刻を見るだけでなく、温泉や今回は行きませんでしたが、韮山の反射炉・江川邸など、観光も充実しています。
仏像を拝みに行くだけではちょっと…、という方も、良いのではないでしょうか。

私が新しく開設したブログは、「喫煙を考える」です。
http://blog.goo.ne.jp/kituenwokangaeru
フェイスブックで御紹介いただけるとのこと。
ありがとうございます。
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15日「発端丈山を代わりに歩いてきます。 (can)
2014-03-11 16:54:31
15日(土)代わりに葛城山から発端丈山を歩いてきます。
仏像よりも山歩きのほうが自分には向いているので。
〇〇ぱなし、同感ですが、穏便に・・・・。便利になることは、人間を”バカ”にする側面があることを認識すべきなんでしょうね。
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富士山が見えますように (ぴすけ)
2014-03-11 17:00:46
canさん、富士山が見えると良いですね
発端丈山からの下りはどちらへ?
長浜へ下りる道は、駿河湾と淡島を眺めながらの、気持ちの良い下りでおススメです。
お気をつけて、良き山行を
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