ウィトゲンシュタイン的日々

日常生活での出来事、登山・本などについての雑感。

本福寺水御堂 ~安藤忠雄の寺院建築を訪ねて~

2019-01-06 23:57:24 | 旅・おでかけ

11月9日(金)

高松で開催される学会に参加するため、ダーリンと前日に高松に向かう。
当初は空路で向かおうと考えていたが、高松空港を利用したことがある知人から
高松空港は霧が出やすく航行が不安定になることがあると伺ったため、取りやめた。
姫路駅まで新幹線を利用し、3日間レンタカーを借りて

姫路→明石→淡路島→鳴門→高松(2泊)→坂出→児島→姫路→市川町→姫路

という経路で、10日と11日午前中の学会を絡めて
行きたい所に行ってみようとなったわけだ。


昨年の秋に、兵庫県小野市にある浄土寺を訪れた際
平氏の南都焼き討ち後、東大寺再興にその晩年を懸けた俊乗房重源と
重源の意志を仏師として支えた快慶が生み出した
この世の極楽とも言える浄土堂の美しさに圧倒された
その際、淡路島にある本福寺の本堂・水御堂(みずみどう)は
安藤忠雄が設計するにあたり、浄土堂の西日の採光を踏襲したものであると知った。
その時から、高松に行く時は淡路島を経由して水御堂を参拝しようと目論んでいたのだった

姫路駅で駅レンタカーを借り一路淡路島に…、と行きたいところだったが
初めての地である姫路・明石周辺の食べ物屋にいたく興味を示したダーリンは
あっちに寄りこっちに寄りして、明石海峡を渡ったのは14時30分になっていた。

本福寺は、東浦ICを降りてすぐだった。
創建は平安時代後期とのことだが、漆喰塀に囲まれた本坊(?)は地方の温泉旅館のように見える
「本堂→」の標識に従い、墓地の脇を抜けて裏手に進むと
玉砂利の築山の上に、コンクリートの塀が立ちはだかっていた。


オオーッ

もう、この段階で、なんだかわからないが感慨極まり二人で嘆息。

細い道に導かれ、結界らしき塀に四角く開いた入口に向かう。

道は入口から右手に屈曲し、奥のコンクリート塀に挟まれた空間を歩くが
奥の塀は左に湾曲しているため、進むにつれて視野が広がり
解放空間に出ると水御堂の水盤が目に飛び込んでくる。

ダーリンは、写真撮影に夢中である。
季節が季節なら、蓮の花が水盤一面に咲いていることだろう。
権力の象徴である大屋根を避け、水盤を池にして仏教の原点である蓮の花を咲かせ
その蓮の中に入っていく寺にしたい、という安藤の考えが具現化された設計だそうだ。

水御堂の入口は、この水盤中央にぽっかり開いた場所、まるで冥府への入口のようだ。

この下で、本当に浄土寺浄土堂の西日が堂内を包むような採光が見られるのだろうかと
懐疑的になるくらい目視できる場所は暗い。

ところがどうだ
下りた場所から係の方に指示されるがまま奥を見ると
浄土寺浄土堂で感激したのと同じく、蔀戸から西日が射し込み
堂内がまるでほんわかと暖かい光に包まれるように輝いているではないか

こ、こ、これは美しい



堂内は、廊下部分のみ撮影が許可されている。
足元灯に導かれながら進み、まずはご本尊に参拝する。
ここは多くは語るまい。

廊下はぐるりと周れるが、靴を脱いで上がる場所と反対側に出てしまうので、引き返す。

浄土寺浄土堂のような堂内の解放感はないが
浄土堂にこの世の極楽を造った重源の理念をそのままに
安藤忠雄がこの寺を設計したであろうことは、ひしひしと伝わってきたのだった。


この寺院建築については好みの分かれるところで、酷評も目にしたが
建築に携わる夫と、まあそこそこ寺院を見て歩いている私の感想は一致した。

いいじゃんなにより、美しい

安藤忠雄らしさが出ているね。建築に至るまでのエピソードも彼らしいよ

『建築手法』(安藤忠雄・二川幸夫 共著)によると
当初、安藤の案に住職をはじめ300余りの檀家全てが反対したそうだ。
設計理念を説明しても反対され続けたため、安藤は京都の真言宗本福寺本山の立花大亀に相談。
すると、立花は安藤の案に賛成し、2、3人の檀家代表にその意を伝えたところ
次の檀家の集まりでは、檀家の意見は180度変わってしまっていて、全員賛成だったという。

重源さんの採光手法を踏襲して、現代建築に活かしてくれたことがとてもうれしいよ~

惜しむらくは、本堂内部かな。
だとしても、水御堂参拝後は、ダーリンも私もとても気持ちが晴れ晴れとし
清々しいものを感じたのだった。

本福寺水御堂は、1991年に竣工され、1993年に第34回建築業協会賞を受賞している。
この美を生み出した設計者の安藤忠雄もすばらしいが
予定調和を嫌う安藤忠雄の厳しい要求に応えた施工業者こそ称賛されるに値すると
ダーリンと話したことは言うまでもない



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