同業のピアニストたちの間でも羨望を集めたルプー。
ルプーのリサイタルには同業者たちがこっそりと聴きに訪れていたそうです。
2022年に病で逝去しましたが、2019年に引退されています。
その引退も、これで最後と世間に発表するでもなく、ひっそりと引退されました。
今頃なぜルプー?と思われると思いますが、東欧のピアニストを調べていて、ちょうどルプーのことを書くために少し調べてみたところです。
先程の引退のことは「ルプーは語らない」という本に書かれています。商業主義が肌に合わず、レコーディングやインタビューから徐々に遠のいて行かれたようですが、そのお人柄は決して人づきあいが良くないとういうものではなく、温かなお方だったということが、その本に書かれています。
さて、日本のマネージメントをしていたカジモトのサイトを見ましたら、ルプーの追悼文が掲載されていました。
だいぶ前に読んではいたと思いますが、そこにあった日本でのリサイタルの記憶でいくつかの曲のことをカジモトの方が書かれていました。
その中にあった、シューマンのクライスレリアーナについて、「ぞっとするような夜の世界の幻想性」とありました。
興味を持ったのでyoutubeで探して聴いてみました。
クライスレリアーナをこんなにじっくりと聴かせてくれる演奏もそうないと思います。
まず音が言うまでもなく素晴らしい。適度な重さが載り純度の高い音。
何の小細工もなく、ルプーが心の底から感じたものをそのまま音に載せている感じです。
生で聴いたら、あの弱音に別世界に連れて行かれそう。
シューマン自身がこの演奏を聴いたら、こんなに凄い曲を自分は書いたのかと驚きそうな気がします。ルプーの手にかかると神がかりなものになる。
ぺライアと弾いたモーツァルトのk.242のコンチェルトも、ありえないくらい素晴らしいです。
特に第1楽章は永遠に聴いていたいくらいです。聴くだけで幸福感に包まれます。
今頃ですが、神に近い人じゃないかと思ってしまいます。
学生の頃、ルプーが来日した時のリサイタルをテレビで放送していました。
見ましたが、何か研ぎ澄まされた人だな、と思いました。
そんな感想しか持てませんでしたが、わからないなりにこの人は特別な人だと感じたのだと思います。
一度も生で聴けなかったのが悔やまれます。
Schumann Kreisleriana op. 16 Radu Lupu
Radu Lupu & Murray Perahia: W. A. Mozart - Pianos Concerto No.7 in F Major, K 242