ツォトネ君のリサイタルに行ってきました。
ジョージアの少年でヴィルサラーゼの従妹のお孫さん。
既にヴェルビエ音楽祭にも出演しています。
まだ14歳ですが、作曲家としても立派な曲を作っています。
現代曲が得意なようで、最近はミュンヘンでラトル指揮でシェーンベルクのピアノ協奏曲を演奏したそうです。
今回、初来日公演。
今日の東京が日本での初コンサート。
東洋の小さな国の知らない人ばかりの前に、一人でステージに出ていくのはどんな気持ちなのだろうと思いながら登場を待っていました。
ステージに出るまでに時間がかかったので、ちょっと不安に思いながら待っていました。
最初はシューベルトの即興曲4曲です。
特に1番は内面的な曲で、大人が演奏してもその音楽の深さに覚悟が要るような曲。
そこから演奏を始める14歳。
堅実に穏やかに、非常に落ち着いて弾き進められました。
2,3,4番と進むにつれ音色が豊かになり、少し気持ちが解放されてきたのかなと思いました。
後半の夜のガスパールを含め、体がまだ大きくはないので体重が軽いと思われ、十分に聴き応えがあったかと言われれば、まだそうではありませんでした。
フレーズの頂点に行くエネルギーも本当はもっとほしかったです。
しかし作曲家目線で曲を見ている気がして、演奏家として音楽を作り上げるより、細部で何を作曲家はしているかを見せてくれた気がしました。
バスラインや内声でどのようなことをしているか見せてくれ、分岐点となるような音を少し長めに聞かせてくれたり。
演奏家はそのような要素がエネルギーとして増大して行くと思うのですが、彼の場合は提示してくれて、見せてくれて、真摯に尊敬している気持ちを表していた気がします。
年齢的なことがあるので、表現としてそれを目指しているのか、体力的にまだ可能ではないのか、人生経験によって滲み出てくるものがまだ足りないのかが、今回の演奏だけではわかりませんでした。
しかし、この響きが好きなんだと、音に魅了されている少年という印象は生で聴いても変わりませんでした。
自作の曲はどれも素敵でした。
何かの曲に似ているものが多く、この曲なんだっけ?と思いながらモヤモヤしながら聴いてしまいました。
ドビュッシーのような音が一番多かったかもしれません。ラフマニノフとメトネルも少し顔を出していましたし、細かいパッセージはラヴェルっぽかったです。
考えてみたら自作の曲を前半、後半に入れてプログラムを組めるとは、やはり異次元な少年です。
大作曲家の作品と並べると幼さが見えてしまったりしますが、彼の曲はそのようには感じませんでした。
大作曲家の作品が大きな曲だったので、それに張り合うような曲を入れていないのも良かったのかもしれません。
追記:
アンコールの曲は日本デビューのために作曲した曲だったそうです。
ドビュッシーのアラベスク2番の様な出だしだなと思いながら、東洋風な音もあり、全体に優しさを感じ、おしゃれでいい曲だなと思い聴いておりました。
それが日本のために作ったと知り、このような印象を持ってくれたのかと嬉しい気持ちになりました。
https://www.instagram.com/p/C7sfm6VS0xC/
インスタの動画が貼り付けられないのでURLを貼っておきます。
初めて彼のインスタを拝見しました。
ドビュッシーの水の精を練習している動画があって、これを聴いてラヴェルのオンディーヌの演奏が理解できました。スカルボもなんか今頃納得。
既に十分、個性があります。
自分の考えに基づいてどの音も導き出しているように思います。
こうしなきゃいけないかな、等とは全く思っていない感じがします。