日々雑記

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「アベノミクスの陥穽」を読んで(2) アベノミクスではデフレ・不況から抜け出せない

2013-04-14 11:48:47 | 日記

前回に引き続き「アベノミクスの陥穽」を紹介します。今日は「第一章 アベノミクスではデフレ・不況から抜け出せない」です。

以下本書第一章の要約です

まず「アベノミクス」の特徴はその政略的なところにあります昨年の選挙の前から念入りに計画を練り、「スピード感を持って」一定の景気回復の「気配」を示すことにあります。こうした「気配」を7月の参院選挙の前にみせ、その余勢をかって自民党の議席を増やし、憲法改定への道を開こうとしています。
また、景気が回復したからと言って、消費税増税に持ち込もうという戦略です。

「第一の矢 大胆な金融政策」の目的は、日銀に「無制限の金融緩和」を約束させることによって、投機的な資金を呼び込み、「ミニバブル」を起こすことです。本書の出版後に起こったことを見ると、著者の見通し通りのことが起こっています。
「第一の矢」のもう一つの目的は、「第二の矢 機動的な財政政策」の財源作りでもあります。
「アベノミクス」には「第三の矢」「第四の矢」が隠されています。昨年の三党合意による「社会保障制度の見直し」という「第四の矢」、「消費税増税」という「第五の矢」です。また消費税増税によって生まれた「財政的なのゆとり」の大半が、「国土強靭化」や「成長戦略」すなわち公共事業のために使える仕組みになっています。消費税増税分が社会保障ではなく「第二の矢」のための回されるということです。

第一の矢、無制限の金融緩和」では、「輪転機をぐるぐる回して無制限にお札を刷る」という発言こそ取り下げましたが、日銀に強制して国債を大量に買わせようとしています。もともと国債を日銀に引き受けさせることは財政法で禁じられています。いわば「禁じ手」なのです。太平洋戦争の時に大量の国債を日銀に引き受けさせ日本経済の破たんを招いた苦い経験から定められたものです。
このような政策を続けるならば、国際的に「円」と日本国債への信用を失わせることになるでしょう。

「第二の矢、機動的な財政政策」は、十年前まで何度も繰り返されてきた「公共事業ばらまき」政策の復活です。財源は「第一の矢」建設国債の増発によるものです。最後のつけは消費税増税に持ち込まれます。「財政再建」は放り出されてしまいました。13兆円もの資金を投入すれば一時的にはGDPが上がるでしょう。しかしこれまで21回も行われてきた公共事業ばらまきの経験から考えると一時的な効果に終わるでしょう。公共事業の中身も問題です。復興・防災事業に3.8兆円を投じる以外は大企業向けの支出です。
「緊急経済対策 」による雇用創出は60万人と言われているがその根拠は不明です。ある銀行の独自の試算を行い10万人程度としています。一方で電機産業で13万人のリストラ計画が進行中ですが、これに対する問題意識は見られません。

「第三の矢 産業投資立国」はどうでしょうか。
特徴的なのは、原子力発電所をどうするかということに全く触れていないことです。「可能な限り原発依存度を出来るだけ減らす」しか言っていません。しかも、自民党の中でも最も原発に執着してきた甘利明氏を経済再生担当相に起用し経済財政諮問会議には財界代表として原発製造会社である東芝社長を登用して、原発推進の姿勢を明らかにしています。「成長戦略」の政策立案のかなめとなる産業競争力会議には閣僚のほか、学識経験者二人、民間の他の8人はすべて現役の経営者ばかりです。それも「グローバル展開」を目指す財界人ばかりです。結局「産業競争力会議」は日本企業の海外展開のための戦略を検討することに終始するに違いありません。
「世界で一番企業が活動しやすい国」を目指すとも言っています。しかしここで言われる「企業」はもっぱら世界市場での国際競争力を競っている企業のことでしょう。日本の企業の圧倒的多数を占める中小企業や自営業にとって「活動しやすい国」を目指しているようには見えません。

「アベノミクス」は、結局、国民の暮らしと日本経済に何をもたらすのか。
当面の円安をどう見るか。異常な円高の修正は見本経済にとって悪いことではありません。しかし「無制限な金融緩和」によって円安に誘導し、投機的な資金の流入によって相場が乱高下するようでは、日本経済にとって良いことではありません。また円安誘導に対しては、海外から「通貨戦争」に火をつけるものだという批判が起こっています。

当面の円安傾向、カンフル剤としての公共投資、無期限・無制限の金融緩和に他の要因も加わって「ミニ・バブル」的な動きが出て来るでしょう 。しかしカンフル剤による「ミニ・バブル」は真の景気回復ではありません。「アベノミクス」は二極化する景気回復を促進し、大多数の国民にとっては、むしろ貧困と格差の拡大をもたらす可能性があります。
またカンフル剤の効果はすぐに切れて悪質な「スタグフレーション=不況が深まる下でのインフレーション」 になるでしょう。

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以上は本書第一章の要約です。(一部省略したところもあります。)
「アベノミクス」が一時的な景気上昇を演出しながら、一方でリストラ合理化と賃金抑制を放置しています。それにもかかわらずメディアは景気回復をはやし立てています。その大宣伝のもとで安倍内閣の支持率は空前の高さを示しています。私は、アベノミクスの本当の姿を明らかにしなければならない時期だと考えています。



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2 コメント

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二宮厚美講演と湯浅誠発言より (おおかわ)
2013-04-15 21:31:24
4月6日の神戸大名誉教授二宮厚美さんの講演ではデフレ不況の的を射貫かない安倍政権3本の矢の話がありました。また、3月28日朝日新聞では「企業優先、格差拡大の恐れ」と成長戦略に疑問を投げかけています。消費税増税、憲法改悪、原発問題などと合わせて「政治について語る時間と空間を日常生活の中にどう織り込み、両立させていくか。」(世界5月号湯浅誠氏)という課題への取り組みの必要性を述べています。
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Re:二宮厚美講演と湯浅誠発言より (pe-chang)
2013-04-18 18:40:10
コメントどうもありがとうございます。湯浅氏の発言いいですね。そのような時間、空間を作って行きたいと思います。
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