数日後にAさんと一緒にケアマネのYさんが訪ねてきた。Yさんは素朴な感じの穏やかな男性だった。前回Aさんと打ち合わせた今後のサービスについて具体化していくことになった。
まず通所リハビリについて。話をしているうちに、Yさんの所属している企業がいろいろなサービス施設を経営していることが分かった。その中には通所リハビリの施設もあるという。妻も興味を示した。何よりも送迎があることが気に入ったようだった。「それでは一度見学に行こう」ということになった。
歩行器についても具体化が進んだ。福祉用具を作ってレンタルしている会社はいくつかあるらしい。どの会社のものにするか話をしたのち、次の機会にP社のカタログを持ってくるという。
通所リハビリ見学の日はすぐにやってきた。出迎えの車に乗っていく。同じ市内なのでそんなに遠くない。老健施設に併設された新しい建物だ。玄関を入るとすぐにリハビリ室だ。広い空間にいくつかのリハビリ器具がおかれている。器具の数はそんなに多くはない。老人たちが器具を使ったり、室内を杖で歩き回ったりしている。椅子に座ってお茶を飲んでいる人もいる。ここでは時間の流れがゆったりとしている。
5階にも案内される。ここでは知的な訓練が行われているらしい。20人くらいの高齢者が椅子に腰かけ、ホワイトボードでゲームのようなことをしている。和気あいあいとしていい雰囲気だ。
妻が気に入ったようなので、この施設に通うことに決める。「要支援2」だと毎週2回利用できるそうだが、とりあえず週1回、午前だけ行き昼食を済ませて帰宅するという。
この日は忙しかった。もう一つ仕事があった。午後にはケアマネと一緒にP社の人が来た。二種類の歩行器を持ってきた。妻は早速歩行器を使って歩く。行きつけの診療所まで行ってみる。すぐ近くだが、自動車道路の信号を渡らなければならない。杖で歩くより大分楽だというので、妻が気に入ったのを置いていってもらう。
P社は家屋改修もやるとのことで、手すりを付けるための図面を書いていく。
こうして、介護保険利用のための準備は進んだ。しかし本人にとってはこれからが大変だ。歩行器は便利だというものの、なれない器械なので相当に疲れるものらしい。通所リハビリは新しい人間関係を伴うので、慣れるまでにはいろいろな問題が生じてくるだろう。