日本軍の従軍慰安婦問題をめぐって一部勢力の「河野談話」再検証、見直しの動き、NHK経営委員百田氏の発言などが目立っています。一方、このような動きに対して、韓国をはじめ、アメリカ、ヨーロッパなど世界各国から批判の声があがっています。
このような時期に、共産党の志位委員長がタイムリーな見解を発表しました。
「歴史の偽造は許されない――『河野談話』と日本軍『慰安婦』問題の真実」と題する見解です。
この見解は文字にすると二万字近い長文です。「しんぶん赤旗」約3ページにわたります。しかし事実関係を具体的で簡潔な文章で書いてあるので読みやすいものです。
私に言わせれば、内容は非常に倫理性の高い文章であり、世界からの批判に十分耐えられる、日本人の良心を示す見解だと思います。ぜひご一読なさることを勧めます。
全文をご覧になるためには ここ をクリックして下さい。
同じサイトには志位氏が見解を発表した時の動画を見ることができます。
内容はこれまでのすべての論点に及び、全文は、上記のウェブサイトで直接お読みいただくか、動画を視聴していただくほかありませんが、ここでは私のつたない要約を書いておきましょう。
まず「河野談話」の内容については次の五つの事実について認定したとまとめています。そうして「河野談話」は、① 「慰安所」と「慰安婦」が存在したという事実、② 「慰安所」の設置、管理等に軍が関与した事実、③ 「慰安婦」とされる過程が「本人の意思に反していた」=強制性があったという事実、 ④「慰安所」における強制性=強制使役のもとにおかれていた、という事実、 ⑤日本を別にすれば、多数が日本の植民地の朝鮮半島出身者だった。募集、移送、管理等は「本人の意思に反して行われた」=強制性があった、という事実。―――この五つの事実です。
その上で、「河野談話」否定派は、③の「慰安婦」にされるときの強制性についてこれを否定しようとしていますが、本当に大事なのは④の「慰安所」における強制性、監禁拘束されて日本軍兵士の性的相手をさせられたことにあると述べています。これこそ世界の人たちが「軍性奴隷制」と呼んでいるものです。
次に「河野談話」に対する攻撃は、「河野談話」にいたる経過を無視していると述べていますが、ここでは省略しましょう。本文をお読みください。
志位委員長の見解の次の主題は「日本の司法による事実認定」に移ります。
「見解」では、これまで元「慰安婦」が日本政府を被告として日本の裁判所に損害賠償請求訴訟をおこした10件の判決について検討しています。これらの判決は、どれも損害賠償請求を認めるものとはなりませんでしたが、10件の裁判のうち8件では、「河野談話」が認めたのと同じように、「慰安所」への旧日本軍の関与、「慰安婦」とされる過程における強制性、「慰安所」における強制使役などを全面的に認める認定をしています。
これらの裁判では、一人一人の元「慰安婦」について詳細な事実認定が行われた上でこのような事実認定となりました。
このように「加害国」である日本の裁判所が、このような認定を行ったことは重い意味があります。
こうした判決を考えると「河野談話」の真実性はいよいよ確かなものになったと言えます。
次の論点は、第一次安倍内閣の時代に政府が出した答弁書です。この答弁書は「強制連行を直接示す記述はなかった」とあります。たしかに日本の公文書の中にはなかったといえます。しかし政府が間違いなく知っていたと言える文書があります。一つは戦後現在のインドネシアで行われたBC級戦犯裁判の記録です。ここにはオランダ人女性を強制的に連行して「慰安婦」にしたことが書かれています。
もう一つは東京裁判の裁判文書です。ここにも同様の記述があります。
どちらの裁判の結果も、1952年のサンフランシスコ講和条約で日本が受け入れたものです。
志位氏の「見解」では、「事実と異なり、有害極まる役割を果たしている政府答弁書の撤回を求める」と要求しています
志位「見解」は最後に、日本は「歴史に正面から向き合い、誠実かつ真摯に誤りを認め、未来への教訓とする態度を」取るべきだと結論付けています。