政府の公文書隠ぺいが続いています。その中でも防衛庁・自衛隊の日報の隠ぺいは特別重要な意味を持っていると私は思います。南スーダンの日報、イラクの日報の隠ぺいには強い政治的な意味があると感じられるからです。
どちらの日報も憲法上自衛隊に禁じられている戦闘地域への派遣を隠そうとしていることが明白だからです。派遣した地域に戦闘があった事実を隠して、「派遣先は非戦闘地域だから憲法違反ではない」と言おうとしていることです。まさに憲法にかかわる嘘をつき国の将来を危うくするものです。
このような隠ぺい工作を見ていると、私は日本の歴史を思い出します。軍による隠ぺい、軍隊の動きを国民に知らせず、国を戦争に引きずり込んでいき、ついには悲惨な敗戦に至った歴史です。
私の僅かな知識をたどってみても、軍が国民を欺いた事実を挙げることができます。いくつかの例をあげましょう。
1928(昭和3)年中国の張作霖が爆殺されたときには、実際には日本の関東軍が殺したにもかかわらず中国側の仕業だということにしました。爆殺事件の立案者、実行者は、日本の現役軍人であったにもかかわらず、処罰もされませんでした。
もう一つ挙げましょう。1931年(昭和6年)奉天(現在の瀋陽)郊外の柳条湖付近の南満洲鉄道線路上で爆発が起きました。現場は、3年前の張作霖爆殺事件の現場からわずか数キロの地点です。関東軍はこれを張学良の東北軍による破壊工作と発表し、直ちに軍事行動に移り、関東軍による満州(中国東北部)全土を占領しました。
日本の国の進路を決める重大な時に、軍による情報の隠ぺい・偽造が行われ、国の進路を誤ったのです。ここで正しい情報が国民に伝えられたらならば、その後の歴史は大きく変わったのではないでしょうか。
私たちは、いまこそ政治、特に自衛隊(=軍隊)の情報が国民から隠されることがないように、監視する必要があるでしょう。