6月29日の朝日新聞朝刊1面トップの記事を見て驚いた。「被曝量、自己管理を提案 福島で政府説明会 再除染応ぜず」という記事だ
政府が福島県田村市の除染作業完了後に開いた(非公開の)住民説明会で、空気中の放射線量を毎時0・23マイクロシーベルト(年1ミリシーベルト)以下にする目標を達成できなくても、一人ひとりが線量計を身につけ、実際に浴びる「個人線量」が年1ミリを超えないように自己管理しながら自宅で暮らす提案をしていたことが分かった。
田村市都路(みやこじ)地区は避難指示解除準備区域に指定され、自宅に住めない。政府が計画した除染作業は一通り終わったが、住宅地は平均毎時0・32~0・54マイクロにとどまり、大半の地点で目標に届かなかった。政府は今月23日に住民説明会を一部非公開で開いた。
朝日新聞が入手した録音記録によると、住民から「目標値まで国が除染すると言っていた」と再除染の要望が相次いだが、政府側は現時点で再除染に応じず、目標値について「1日外に8時間いた場合に年1ミリを超えないという前提で算出され、個人差がある」と説明。「0・23マイクロと、実際に個人が生活して浴びる線量は結びつけるべきではない」としたうえで「新型の線量計を希望者に渡すので自分で確認してほしい」と述べ、今夏のお盆前にも自宅で生活できるようにすると伝えた。
説明会を主催した復興庁の責任者の秀田智彦統括官付参事官は取材に「無尽蔵に予算があれば納得してもらうまで除染できるが、とてもやりきれない。希望者には線量計で一人ひとり判断してもらうという提案が(政府側から)あった」と述べた。除染で線量を下げて住民が帰る環境を整える従来の方針から、目標に届かなくても自宅へ帰り被曝(ひばく)線量を自己管理して暮らすことを促す方向へ、政策転換が進む可能性がある。
環境省は取材に対して説明会での同省の発言を否定した。録音記録があり、多くの住民も証言していると伝えたが、明確な回答はなかった。
この記事は今のところ他紙の続報がないので調べようがありませんが、「録音記録がある」「多くの住民も証言している」という以上、朝日新聞としても相当な自信があるのでしょう。もし事実であるとすれば大変なことだと思います。
政府は放射能汚染がどうして起こったのか、誰の責任だと考えているのでしょう。住民自身は何の落ち度もなく平和に暮らしていたのではないでしょうか。そこに突然原発事故が起こり、放射能が降ってきたのです。また事故は自然現象でもありません。安全神話を振りまきながら原子力開発を推進した政府に責任があります。また地震、津波によって事故が起こる可能性が国会で指摘されているのに、何の手も打たずに運転を続けてきた東京電力にも責任があります。このような経過を考えると、放射能汚染を取り除き、事故前の環境に戻すのは政府と東京電力がやるべきことではないでしょうか。
責任論の前にも、国民の健康を守るのは政府の仕事ではないでしょうか。ここで憲法を持ち出すのは気恥ずかしいことですが、憲法25条には「国は・・・公衆衛生の向上及び増進に努めなければならない。」ともあります。国民の健康を守るのは国の責務なのです。
除染が困難なのは当たり前ですがそれでもしなければならないことなのです。
もう一つは、住民の健康管理、被ばく管理の問題です。朝日新聞は次のように解説しています。
地域の放射線量が目標値に下がるまで国の責任で除染を進め、避難区域が解除されてから自宅へ帰る。原発事故で避難した住民の多くはそう思っているに違いない。だが、政府が23日の住民説明会で提案したのは、除染目標を達成できなくても自宅に戻り、線量計を身につけながら被曝(ひばく)線量を自己責任で管理するという生活スタイルだった。
23日の説明会では、除染目標に届かなくても帰還をなし崩し的に進める政府の本音がにじんだ。国費で開発した小型線量計を自宅に戻る希望者に無償配布して被曝量を抑える生活を工夫してもらい、帰宅者を増やして避難区域解除の環境を整える狙いが垣間見えた。
被ばく管理を「自己責任」にして、被曝量が多かった人に対して、政府が「被曝量を少なくする努力をしないのは本人の責任だ」と言い出すのも間近だと考えるのは、「下司の勘繰り」でしょうか?