日々雑記

政治、経済、社会、福祉、芸術など世の中の動きを追い、感想を述べたい

医療・介護をめぐる最近の動き(1) 6月に見られた政府の動き 医療介護総合法と「骨太の方針」

2014-07-31 16:03:24 | 日記

最近のニュースの中から医療、介護を中心に政府の政府の動きを追ってみました。

6月のニュースの中では医療・介護総合法案の国会審議が中心でした。6月2日には参議院で審議に入り6月18日に可決成立しました。この法案は医療・介護に関する19の法律をまとめて改定しようとする法案であり、国民の生活に重大な影響がある法案であり、多くの団体や医療・介護関係者の反対も多かったのですが、わずか17日間のスピード審議で成立しました。そのため審議は決して十分だったとはいえません。自民党、公明党の強引な国会運営で成立したと言ってよいでしょう。

法律の内容は、広い範囲にわたりますが、大きな争点になったのは介護保険のことでした。

第一は、介護保険の利用料のうち、一定額以上の収入がある利用者の負担割合をこれまでの1割から2割に引き上げたことでいた。もう少し具体的に言うと夫婦世帯で年収359万円(単身者280万円)以上の世帯は2割負担になったのです。この案について国会審議では大きな問題になりました。政府はこれだけの収入がある人は年間60万円の余裕があるから2割を負担できるはずだと主張しました。しかし審議の過程でこの60万円という数字には何の根拠もないことが明らかになり、厚生労働大臣はこの説明を撤回し、「反省している」とまで言いました。それにもかかわらず法案を強引に通しました。

第二は、要支援者への訪問・通所介護を介護保険の保険給付から外し、市町村の地域支援事業に置き換えたことです。これまで介護保険で提供されていたサービスを市町村のボランティアなどにまかせるものです。この案に対しては210の地方議会が意見書を出し「市町村に受け皿はなく、実施すれば地域格差が生じる」と異議を唱えました。また専門家の間からは、「認知症初期などには専門家の関与が必要であり、ボランティアが介護することは無理がある」との反対意見が強く出ていました。

この改定案はそれ以前にモデル事業が行われました。このモデル事業に参加した荒川区では、介護保険で要支援1に認定されている女性が区の地域包括支援センターの職員に介護保険の「生活援助」をやめてボランティアの家事援助に変更するよう再三迫られたといいます。この方は介護保険サービスの3倍近い利用料で、先行きが不安だと訴えています。

今回の厚生労働省の計画でも介護保険の「卒業」をせまる仕組みが明記されているそうです。

これでは介護保険に強制的に入り、保険料を納め、介護認定を受けているにもかかわらずサービスを受けられない―――という「受給権の侵害」が起こっています。

第三の問題は、特別養護老人ホーム(特養)の入所を要介護3以上の人に限ったことです。現在特養の待機者は52万人いますが、そのうち17万8千人は要介護1、2の方たちです。特養入所が必要かどうかは、決して介護度だけでは決められません。それを介護度だけで線引きをするのは無理があります。無理に線引きをすれば、今待機している17万8千人の人たちは待機者の中にも入れられなくなります。

もともと、介護保険は強制加入の「社会保険」です。この制度のもとでは、特養入所が必要な人には入所を保障するのが介護保険の役割ですが、現在でも特養が足りないためにこんなに多くの待機者がいることになっています。政府の財政措置が不十分だからです。それで待機者の数を見かけだけ減らすためにこのような制度を作ろうとしているのです。

これまで述べた三つの問題はいづれも介護保険の根幹を揺るがすような重大な問題であり、「改悪」といってよいでしょう。

医療の問題にも触れておきましょう。

第四の問題は「医療計画」の問題です。都道府県主導で病床の再編・削減を推進する仕組みを作り、病院が従わない場合、病院名の公表、各種補助金や融資対象からの除外などの制裁措置をとります。

これまで日本の医療を支えてきたのは、質の高い開業医と民間病院、公的病院の努力と自発的な連携です。この制度のもとで、国民が自由に病院を選んで受診し、安い料金で診療を受けられる国民皆保険制度が維持されてきたのではないでしょうか。またその結果として世界で一、二をあらそう長寿国を実現させることができたのだと思います。「医療計画」による強権的なベッド規制は国民皆保険制度の根幹を揺るがすものです。

これまで見てきたように、医療・介護総合法案は介護保険制度と国民皆保険制度を後退させるものでした。なぜこんなことが起こったのでしょうか。国民の健康と福祉を守るべき政府がなぜこんなことをしているのでしょうか。

私は、この法律と同じ6月に出され、閣議決定された「骨太の方針」「改訂成長戦略」にあると思います。

この方針では、社会保障費の削減・抑制を課題として方針を列挙しています。人口の高齢化などに伴う社会保障費の「自然増」までも「聖域なく見直し」「徹底的に効率化・適正化する」と宣言しています。この方針は小泉純一郎政権が強行して日本中に「医療崩壊」「介護難民」を生みだした政策と同じものです。

骨太の方針はまた「自助・自立のための環境整備」を強調しています。これまで自助・共助の後に述べられていた「公助」は完全に姿を消しました。国の責任を大きく後退させ、個人や家族に負担を強いる「自己責任」だけを強調し、憲法25条にもとづく国民の生存権保障や社会保障の向上・増進に対する国の責任を放棄しています。

「改訂成長戦略」では医療・介護を「産業化」「営利化」の方向に持ち込もうとしています。

このような基本方針のもとで、国民の社会保障は掘り崩されています、

この後、7月に入ってからの動きをまとめるつもりでしたが、話が長くなってきたので次の機会に譲ります。

 

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武器輸出の拡大 「死の商人」国家は許せない

2014-07-22 12:25:08 | 日記

安倍政権は先日のNSC関係閣僚会議で、迎撃ミサイルPAC2の部品の輸出を決めました。

安倍内閣成立以来日本の武器輸出拡大に向けた動きは加速しています。

4月には「武器輸出三原則」を撤廃し、あらたに「防衛装備移転三原則」を閣議決定しました。新原則は、武器輸出の禁止によって「国際紛争等の助長を回避する」としてきた根幹理念を放棄しました。

「新三原則」では、輸出を認めない国の範囲を狭め、米国やイスラエルなど紛争当事者への輸出も容認します。輸出を認める場合としては「日本の安全保障に資する場合」など、政府の判断次第で相手国をいくらでも拡大できる内容になっています。武器の種類についても限定しておらず、部品・関連技術だけでなく完成品の輸出も可能となりました。さらに、輸出先での管理については、F35戦闘機や「ミサイル防衛」装備など日米が共同開発した武器を、米国が日本の事前同意なしに他国へ売却することも可能になりました。

これに先立ち、安倍首相が昨年4月から今年1月にかけて行った外遊に同行した軍需企業11社が、自民党の政治資金団体「国民政治協会」に2012年の1年間で、計約1億円の献金をしていたことが分かっています。2012年の政治資金報告書では、三菱重工1000万円、日立製作所1400万円、東芝1400万円、いすず自動車1310万円、富士通1000万円、IHI 800万円、三菱電機910万円、住友商事600万円、三菱商事600万円、NEC 700 万円、川崎重工250万円です。

世界最大規模の武器国際展示会(ユーロサトリ)が6月16日パリ近郊の見本市会場で開幕しました。初参加の三菱重工業をはじめ日本企業13社が参加しました。安倍政権が3月に防衛装備移転三原則を閣議決定し、これまでの武器輸出原則禁止を撤廃したことを受けたものとみられます。吉田正一防衛大臣官房審議官は「日本の誇るべき技術力を発揮する環境が広がることは、産業を育成する上でいいことだ」と述べ、武器輸出によって経済成長を図る考えを示しています。

武器輸出で「国司競争力」強化をはかる「死の商人」国家への道は、国のあり方を根本的に変えるものであり、絶対に認められません。

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太平洋戦争中の「安全神話」 この国の伝統なのか?

2014-07-18 12:03:48 | 日記

大阪空襲訴訟弁護団の大前治氏の論文を読みました。次の論文です。具体的でわかりやすい文章です。

「空襲は怖くない、逃げずに火を消せ」―――防空法がもたらした空襲被害
       ―――大阪空襲訴訟が問いかけた政府の責任(前衛 2014年8月号)

この論文を読んで私の第一の感想は「そんなことがあったのか」でした。私は戦前の生まれ、太平洋戦争中の小学生だった。子供だったので戦地のことは知りません。国内(「銃後」と言った)のことも難しいことは知りません。だけど毎日目にすることは知っていると思っていました。その私が全く知らないことが書いてありました。

私が満州(中国東北部)にいたせいかもしれません。しかし日本に引き揚げてきてから友人たちと話をしていてこんな話を聞いたことがありません。しかしこの論文は詳しく論証されています。実際に空襲の被害者が増えています。ここに述べられていることは疑いようもありません。

持って回った言い方はやめましょう。

話はNHKドラマ「ごちそうさん」で始まります。私は見ていませんが、「主人公の夫が『空襲が来たら火を消さずに逃げろ』と発言して逮捕されたり、空襲時に地下鉄駅への避難が禁止される場面が描かれた」そうです。

大前氏は具体例を挙げます。谷口佳津江さん(当時7歳)は、大阪空襲の際、母から姉と二人で逃げるように言われて送りだされたといいます。後に母は遺体となって発見されたといいます。これは10万人の死者を出した東京大空襲の後だったということです。

著者の大前氏によると、このような例は偶発的なことではなく、政府の方針に従ったためだというのです。1937年(昭和12年)に出された「防空指導一般要領」では老幼病者以外については原則として避難をみとめませんでした。

1941年(昭和16年)の防空法では、空襲時に避難、退去を禁止することができるようになり、これに反した場合には実刑に処せられることになりました。1942年(昭和17年)の刑事特別法では防空の妨害をした場合に懲役または死刑に処することがきめられました。

一方で「空襲は怖くない」「焼夷弾は簡単に消せる」と宣伝しました。また報道管制も行い、当時すでに、焼夷弾を消すことはできないことが分かっていたにもかかわらず、手で消すことまで宣伝しました。

もっとひどいのは、防空壕は「床下に作れ」という指示でした。これでは焼死、窒息死などが増えるだけです。実際そのような被害者が多数出たということです。

空襲に対して「逃げるのではなく耐えろ」という方針が貫かれたわけです。その方針が「安全神話」と「秘密保護」「報道管制」によって強制されたのです。

いままた「安全神話」と「特定秘密保護法」によって原発事故や戦争を耐えろと言われる時代が来ないよう頑張らなくてはなりません。

 

 

 

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原子力規制委員会の川内原発再稼働は「新しい安全神話」だ

2014-07-17 18:20:35 | 日記

原子力規制委員会は九州電力川内原発1,2号機が再稼働の規制基準に「適合している」とする審査書案を了承しました。再稼働の合格証書です。

本当に安全なのでしょうか。

中身をみると、地震、津波、火山噴火の危険をどれも低く見積もっています。火山については「予兆があれば停止する」としていますが、現在の火山学では巨大噴火の予測は全くできていません。まして予兆があるものかどうか、あっても原子炉を止める余裕があるものかどうか全く分かっていません。それにこの地方には数万年前には巨大噴火の火砕流が到達した可能性があると言われています。九州電力もこのことを認めています。
原発を考えるときには数万年以上の安全性を考えなければならないのに、その危険性を無視しているのです。

福島では、地震の後電源がなくなり、メルトダウンが起き、大事故になりました。メルトダウン対策について、安倍首相は「世界一厳しい安全基準」と言っていますが、実のところヨーロッパで義務付けられている基準より低いところもあるということです。

事故時の避難計画は、審査の対象にすらなっていないそうです。鹿児島県知事は「要援護者の避難に30キロは現実的ではない。10キロで十分。」と言っています。アメリカでは避難計画がなければ認可されないということです。

使用済み核燃料の処理という根本的な問題は全く解決されていません。日本中に貯まっていく使用済み核燃料は数万年以上にわたって放射能を出し続けることになります。

福島事故からわずか3年余り、事故の原因すら分かっていません。このような時期に出された今回の規制委員会の決定は「新しい安全神話」をばらまくものです。そうして全国の原発を再稼働させる第一歩とするものです。このようなたくらみを国民は許さないと思います。

 

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集団的自衛権行使容認 海外メディアの反響―――日経新聞から

2014-07-11 09:00:00 | 日記

 7月8日の日本経済新聞が「集団的自衛権、全面賛同少なく 海外メディア論評 」という記事を載せえいます。世界各国の新聞を集めたものです。「集団的自衛権行使容認」に基本的に賛成している日本経済新聞の記事だけに面白いと思いましたので、ここに転載しておきます。

記事でお分かりのように、「国民の支持を得ていない」、「中国韓国と対立激化」、「武力行使の三要件があいまい」―――などの声が多いようです。

 


 

(以下「日本経済新聞」から引用)

集団的自衛権、全面賛同少なく 海外メディア論評


安倍晋三政権が集団的自衛権の行使を認める憲法解釈の変更を閣議決定してから8日で1週間がたつ。この間の海外メディアの論評を点検すると、もろ手を挙げての賛同意見は少ない。国民不在の決定、中韓との対立激化、運用基準のあいまいさを問題視する向きが多く、国際的な理解を得るに至っていない現状が浮き彫りになっている。

 「国民の大半は平和憲法の新解釈を否定している」。第2次世界大戦で同じく敗戦国となったドイツのシュピーゲル誌(電子版)は1日付で、安倍政権の解釈変更は国民不在の決定だと断じた。独紙フランクフルター・アルゲマイネも「戦争の記憶のある中高年らに不安を抱かせている」「社会を二分した」と指摘。アジアではシンガポールやブルネイの新聞が「有権者の半数が反対」などとするロイター通信の記事を掲載した。

 「米を助け、地域の平和と安全を保つ」(4日の米フォックス・ニュースに出演した中国専門家ゴードン・チャン氏)といった肯定的な受け止めはもちろんある。だが「単に『普通』の国に少し近づいただけ」(3日付の英フィナンシャル・タイムズが掲載したデビッド・ピリング元東京支局長の記事)といった消極論が中心。同盟国の米ニューヨーク・タイムズ紙も社説で、警戒感の高まる中韓を念頭に「アジアにおける心配の種を増やした」と批判した。

 中韓との関係悪化以上に懸念が集中したのが、憲法解釈の変更という方法論だ。4日付のタイ紙バンコク・ポストは米戦略国際問題研究所(CSIS)幹部グロサーマン氏の「日本の過剰な軍改革」と題する寄稿を掲載。「安倍氏が憲法改正の意欲を示して首相に就いたことを思い出してほしい」「武力行使の3要件は潜在的に拡大解釈されやすく、関連法改正で定義するとしてもその運用は危機時の政治判断の影響を受ける」との見方を示した。

 インターネットで記事を配信する外交誌ディプロマットは、新華社など中国メディアの報じ方を分析。「安倍氏の戦略は地域安保の脅威というだけでなく、日本の立憲主義や法の支配への脅威だと警告する記事が多い」としたうえで「あたかも安倍氏の頭越しに中国が(懸念を持つ)大多数の日本人に近づこうとしているかのようだ」と指摘した。

 集団的自衛権を適切に行使する能力の不足をやんわりと指摘したのは英国放送協会(BBC)。2日付の電子版に載せた英王立国際問題研究所(チャタムハウス)幹部の寄稿は「オーストラリアやフィリピンとの防衛協力が可能になる」「国連安全保障理事会常任理事国入りの追い風」としつつも「緊迫下での意思決定や危機管理の経験が乏しい日本政府にとって、必ずしも前向きな進展とはいえない」と断じた。

 「景気回復に失敗すれば、集団的自衛権に対する国民の反対論を利用し、安倍氏を首相の座から追い落とそうとする勢力が自民党内からも出てくる」。CSISのグロサーマン氏の寄稿はこう結び、安倍氏の「本業」の成否も、今回の閣議決定の先行きを左右するとの見方を示している。

 

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