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『不思議な少年』(その2)(2018.8.27更新)

2018-08-27 07:53:08 | 日記


 ↑ この本は言い忘れていましたが、先に読んだ『人間とは何か』とあわせて一つの作品だと言っていました(翻訳者の中野好夫氏による)

 こんにちは。

『不思議な少年』2回目です。

 さて、この『不思議な少年』は後半で雰囲気がかわります。
理由はこの本の後書きを読むとわかるのですが、本作品は未完成でありのちに残された人が編集してひとつの話にしたからなのだそうです。

 人間の弱さについてサタンが話し始めます。人間が強い者に迎合してしまいがちであることを語り始めます。
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(p.196)もともと大多数の人間ってものはね、未開人にしろ文明人にしろ、腹の底は案外やさしいものなんで、人を苦しめるなんて、ほとんどできやしないんだよ。だが、それがだよ、攻撃的で、まったく情け知らずの少数者の前に出ると、そういう自分を出し切る勇気がないんだな。

(p,197)君主制も、貴族政治も、宗教も、みんな君たち人間のもつ大きな性格上の欠陥、つまり、みんながその隣人を信頼せず、安全のためか、気休めのためか、それは知らんが、とにかく他人によく思われたいという欲望、それだけを根拠になり立っているんだよ。そりゃ、そうした制度は、永久につづくだろうさ。つづくどころか、いよいよ栄え、いよいよ君たちを圧迫し、侮辱し、堕落させることだろうよ。
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 つづいて、戦争にいたる大衆心理について、サタンは語ります。けっこう長いので要約しますね。

 戦争をあおる声の大きな人間がでてきて、みなは最初反対するがそのうちその声の大きな扇動者のいいなりになる。そのいいなりになる人間は、言論の自由をとなえる者を弾圧し始める。しかし、そのいいなりになる者も、自由をとなえるものと同じ心をもっているのだが、いいなりになる者は「口に出していう勇気がない」ことからそうなっているのだ。そして、全国民が戦争、戦争と叫び出す。あえて正義の士でもいようものなら、蛮声をはりあげて襲いかかる。あとは政治家どもが安価なウソをでっちあげ、被侵略国の悪宣伝をする。国民はうしろめたさがあるせいか、気休めに、それらのウソを喜んで迎えるようになる。

 なんだか今の世の中のことが描かれているような気がします。

 この『不思議な少年』はとても読みやすいです。しかし、中で述べられていることは人間の弱さをうまく言い当てた、考えさせられるものだと思いました。マーク・トウェインといえば、明るい物語を書く作家と思っていましたが、このような内容もかくのだなあと思ったしだいです。

 さて、人生で、私は声の大きな扇動者に抗することができるでしょうか・・・。サイレントマジョリティーになるでしょうか・・・。あぶないなあ・・・。

 本日もお越し下さりありがとうございました。