おんらく館~のこぎりものには福がある~

のんびり・ぼちぼち・気の向くままに・・・

調律研修会

2019-12-17 | 調律
年末になると、忘年会を絡めて各班の研修会が増えてきます。
今年もいくつか案内が届きました。

そのうち2つの研修会に参加しました。

1つ目は「刃物研ぎ研修」

えっ、と思われるかもしれませんが、調律の仕事の中で細かい修理というのはわりと頻繁にあります。
そして木材とフェルトが主な材料のピアノはその工作に刃物は欠かせません。
その切れ味はやはり大事になってきます。といいつつ僕自信その辺の管理はかなりいい加減なんですが…(^_^;)

まあとにかく正しい研ぎ方が分かればそれは一生もんなのでぜひにと思い、埼玉県まで行ってきました。


なごやかなムードの中研修は始まりました。

基本は皮切り包丁を研ぐ。というのがメインなので、片刃の刃物研ぎです。

その最初が、なんと砥石の説明と砥石の平面出しから!
ガチです!


続いて、裏面(平らな方)を研ぐのですが、理想の刃先を出すために今度はゲンノウで叩きます。

上手に研ぐコツ程度に考えていた自分はもう目から鱗ですよ…(゜ロ゜)

ちなみにそのように甘く考えていた自分は中学生の頃買った彫刻刀セットを持っていったんですが、全然嫌な顔をされずに優しく手順を教えてくれました!
途中打ち合わせの電話でしばらく退席していましたが、それでも格段に切れ味が復活した感じです。

他にハサミを持ってきた人もいて、そのやり方も隣で見せてもらえました。
耐水ペーパーでかなり復活することが分かり、これはすぐに実戦で使えますね!

打ち上げにも参加しましたが、終始なごやかで優しいムードで楽しく勉強出来ました。

もう1つはグランドのハンマーに絞った徹底修理。



写真のハンマーは、研修で使ったものです。

根元の方から順々に、(細かい名称説明は今回控えます)

フレンジのセンターピン交換ですが、通常は徐々に太いものに替えていきますが、では一番太いピンでなおガタが出た場合はどうする?

ということで細いピンに替えるための工作を習いました。
ブッシングフェルトもあわせて替えますが、この場合の動きの堅さも堅めにするということで、現物をいただけたのでその後の変化が実際に分かり、すごくありがたいです。

続いてローラーの潰れの修理。

最後は交換なんですが、予算も高くなるし、ということでとりあえず簡易に直す方法。

今回実際にやったのは皮の張り替えですが、それ以外の方法も教えていただきました。
また隣に座ってる会員さんからもまた違うやり方の情報も教えてもらったりで、こういうところも充実していきます。

調律師さんはみんな何でも知っているんじゃないの?と思われてるかもしれませんが、残念ながらそんなことはなく、知らない人ほどパーツの交換や買い換えを勧めるんじゃないでしょうか?(^_^;)

最後はハンマーのパンク。

K社のハンマーがわりとパンクしてるのをみますが、これも交換の前にとりあえずこうすれば直るよ、という方法。

ただしハンマーの場合は特別な理由がない限り、交換が前提になります。

こちらの研修も打ち上げまで参加しましたが、この班はとにかくみんな仲良しでワイワイと終始賑やかで楽しかったです。

何人か二次会に流れたようでちょっと後ろ髪を引かれましたが、この時すごい寝不足状態で一次会で帰りました。
それでも電車で寝過ごして、気が付いたら終点を折り返して逆方向を走ってたという…(ー。ー#)

早速今後の仕事に生かしていきたいです。












梅雨とピアノ

2019-07-08 | 調律
今年の梅雨は雨が多くて涼しいですね。。

まあ、昨年のような猛暑に比べれば今年の方が過ごしやすいと思ってしまいますが。
西日本の豪雨災害にあわれた方にはお見舞い申し上げます。。。


そんな雨の多い昨今、ピアノの不調も今年は多く聞きます。

だいたいが「音が出ない」「鍵盤が上がらない」といったものです。


近いところでピアニストの友からも「最高音のハンマーが動かなくなった」とお知らせがあり伺う予定でした。
もっとも彼のところは除湿機を買ってガンガン運転を続けたら最善した。ということで行かなくて済みましたが。

ピアノの素材は生きてますので極端な湿気、乾燥は嫌います。

その友人にも伝えましたが、湿度計を置いて不具合の出る限度を知ってください。
何%を超えると調子が悪くなる、というようなことが分かれば除湿機を入れる、エアコンをドライにするなどご自身で対策も出来ます。


またお客さまからよく「梅雨時は調律やめた方がいいでしょうか?」と聞かれますが、
もし梅雨時にピアノの調子が悪くなるのでしたらこのタイミングでないと修理改善が出来ません。

同じ理由で冬場の乾燥で不具合の出るピアノも多いです。
特に最近の住宅環境は冬の湿度が極端に下がるところが多いですので。

乾きすぎは木材の割れの原因にもなりますし、同じように湿度計を置いて気をつけてください。
30%を下回らないように。

今でしたら80%を超えないように。

人が不快に感じるときは、楽器も不快に感じています。













調律世界大会その2

2019-05-29 | 調律
つづきです。。


もう一つ「桒形亜樹子のチェンバロレクチャーコンサート」というのが思いのほか面白かったですね。
失礼ながらこの先生のキャラに寄る面白さも相当加わっていたようにも思いますが・・・



用意されたチェンバロというのが、上下2段鍵盤で、それぞれ違う弦を演奏できます。

つまり、上下段で違う調整の調律を用意することが出来るわけです。



片方をミーントーン(長三度純正中全音律という古典調律)、片方を平均律(現在一般的に行われている調律)にして、必要に応じて弾き比べをしながらの講義でした。

例えば、バロック時代の曲を平均律で弾いてみたり、バッハの平均律クラヴィアを平均律とミーントーンで弾き比べてみたり。

またそれに対していちいち「私はこれは好きだ、嫌いだ」と感想を加えたり。。。(笑)


それはともかく、実際に音を比較しながら演奏を体験できるというのはやはりスバラシイと思います。

自分は今「平均律」しかやりませんが、「古典調律」というのも以前よりちょっと興味が湧きました。


ついでに記しておきますと、「平均律」は長三度がキタナイ、というのが普通に耳にする評価なんですが、「平均律」に慣れている自分の耳には「古典調律」の五度の唸りの方がよほど気になってしまいました。
つまり、どこをキレイ、キタナイというのは結局慣れなのだな、と・・・


更には、常識として教わった「古典調律が色々変化していって平均率にたどり着いた」というのは実は真っ赤なウソである、という説には驚きました。

なんと紀元前400年(だったかな?)には平均律を思わせる記述も残されているようで、それはピタゴラス音律よりも古いということです。

またその後の歴史の中でも随時あちこちで平均律をあらわしているだろう文献が残っているとの事。

つまりミーントーン、キルンヴェルガー、ヴェルクマイスターなどの古典調律は、平均律を横目で見ながらも「より美しい和声」を求めて作られたものなんだな~ということ。。
それからフランスだったか(いちいち記憶があいまい・・・)、都市と田舎で音楽の調整が違ってたりなんてこともあったようです。

楽器にしても「リュートやヴィオラダガンバ」などは当時から平均律だったようで、鍵盤楽器は必ずどこかに不協和音が入ってしまうため、鍵盤数を増やして純正調のものをこしらえたりもしたそうです。


実はこのレクチャーの後に、楽器博物館に行って来まして、その実物というのを早速拝むことが出来ました。



写真からでもかなり尋常でないことが分かると思います(^^;)


ただし、この楽器博物館、展示楽器に触れることが出来ないので肝心の音がサッパリ分かりません。

結構フラストレーションを溜め込んでしまいました。。。(苦笑)


まあそれでも興味深かったり単純に面白かったり出来るものも多数あり、充実はしました。


その中で、昔のピアノにはペダルが沢山ありました。というもの。



その説明がこちら




また、両側から演奏できるピアノとか






ピアノじゃないし、たまたま船の模型から作りましたよ、っていうヴァイオリンとか。



弾きにくそうだし、音もどの程度のもんだか・・・?(^^;)

あとは見てるだけで圧巻のアジアの楽器。



などなど・・・
触れないけど撮影は自由でした。

夜はコンサートも開催されました。



初日がピアノソロ。二日目がピアノと尺八によるジャズ!



そうそう、会場はコングレスセンターというところで



屋上広場みたいなところがあって、そこにショパンの像もありました。



さすが浜松!


ついでに、物販コーナーに展示してくれていたチューニングハンマーのいろいろ。



面白いでしょ!(^^)















調律世界大会

2019-05-27 | 調律
正しくは

「第21回 IAPBT 浜松大会」

IAPBT(International Association of Piano Builders and Techbicdians)
目的:日政治的に世界のピアノ技術者及び製作者の輪を構築し、その自由を奨励する。
目標:技術情報や関連するあらゆる事項についての交換手段を提供しその自由を奨励する。

1979年発足以来、隔年世界各地に於いて、各国代表による総会やシンポジウム等を通じ技術情報の交換や有効を深めて参りました。今年20年ぶりに静岡県浜松市で開催されます。

というものに参加してきました!


「世界大会」という名称でずっと言われていたのでタイトルもそうしましたが、その字面とは違う内容のものでありますね。。。(笑)
調律技術を競い合う、というものではありません。念のため(^^)




5月25日、26日の2日間にわたって行われ(海外からの方は27日にヤマハ、カワイの工場見学がツアーとして入っていましたが)、アクトシティ浜松コングレスセンターを借りて物販やセミナーを繰り広げられました。
各日夕方からはコンサートもあり。


物販や紹介コーナー



日本の調律師協会全国各支部がそれぞれ、自分の地域のアピールや商品の紹介をしています。
日ピで作ったというTシャツと、技術書、ちょっとした工具、部品を買いました。

別のフロアにて、今月頭に購入したチューニングハンマー製造の「ひびき工房」のブース。
朝一から大勢の人で賑わっています。





セミナーは、各メーカーや理論、製作等12あり、それを各日4会場で1日3枠で行われています。
つまり最大で6つ、全部は見られません。なので面白そうなものを取捨選択するわけですが・・・


自分が見た中でも面白いと思ったのが3つあったので、それで良しとしましょう!(^^)


そのひとつが「リラピアノ修復の軌跡」



こんな形のピアノです。


昨年11月、栃木の小野工房に行ったときにあったピアノ、そのときはまだボロボロでした。
それを如何に修復、復元したか?という内容でしたが、何しろ半年前の状態を見ているので余計に興味深かったということもあるのでしょうね。

鍵盤アクションモデルもありまして、それも作ったとの事!(こっちのほうが大変だったとか?)




他のリラピアノに多いアクションが下の写真


比べてみると分かりますが、形が全然違いますね。

今回の修復ピアノは、鍵盤がくの字型に曲がっていてアクションが下に沈みこんでます。
このお陰で色んな調整が大変。。。



破損したりなくなっているパーツを新たに作りつつ、なるべくオリジナルを残すよう試行錯誤しながら製作されたそうです。


最後には外装を取り外して触らせてももらえました。




鉄骨がなく、細い鉄の弦(現在は鋼鉄弦)。そしてハンマーはフェルトではなく皮製。
よって音は現在のものとは全然違いますが、これはこれで味があり、最近はこの音も好きになっています。
鍵盤のタッチの深さも現行ピアノの半分くらいなので、同じ曲でもテクニックや印象はまるで違うものであることが容易に想像できますね。


つづく















パーツの自作

2019-05-21 | 調律
お世話になっているライブハウスのピアノ。

古いNYスタインウェイ!

先輩調律師から引き継いでやらせてもらっています。。。


で、その中のソステヌートの突き上げパーツですが、最初から壊れてました。。。(^^;)
どう見ても強度の面で設計が悪いのではないか??

だましだまし何度か修理してましたが、ついに回復不能と判断して、同じようなものを自作しました。



言うまでもないですが、右が元のパーツ。左が自作パーツ。

中央にある(謎の)丸パーツは省略しました。
どう考えてもこのパーツのお陰で貧弱になってるし、これをつける意味が分からん。。。

ご教授いただけましたら、素直にお聞きしたいところですが・・・



で、ちょっとドキドキしながら組み込んでみました。

若干削りなおしの寸法あわせをしましたが、なんとか無事に装着!
動いてくれました。

あとは経過観察ですね。。。



マスターから「器用ですね~」と感心されましたが、調律師さんって結構こういう工作上手な人が多いと思う。