大前研一のニュースのポイント

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知的財産の基本すら分かっていない中国。このままでは「致命的」だ

2008年10月07日 | ニュースの視点
中国がIT(情報技術)製品のソフトの設計情報開示を新しく求める制度の導入計画を進めていることを受け、日米欧の経済界が共同で懸念を表明する検討に入った。

ソフトの設計情報は通常、知的財産権の保護対象となる機密情報であるほか、外国企業にとって貿易の障壁になりかねないと再考を促すとのこと。

この制度は過去に聞いたことがないほど身勝手な法律だと思う。

「ITセキュリティー製品の強制認証」という名目のもと、パソコンはもちろんのこと、デジタルテレビ、携帯電話といったかなりの広範囲の家電製品に対してその設計図の開示を求めるというものだ。

あまつさえ外国企業が中国政府に対して情報を開示しない場合には、中国国内の販売を禁止するというのだから驚きだ。

建前上は「中国政府に対して」開示するといっても、例えばIC技術などの専門的な設計図を政府の役人が見ても理解できるわけはない。

結局、中国のメーカーに持ち込まれ、外国企業が持つ技術情報が中国企業に渡るということになるのは目に見えている。

中国は「IP(Intellectual Property)=知的財産」というものの基本を理解していないと批判されても仕方ないだろう。

同じようなケースとして、米マイクロソフトが反トラスト法違反について欧州委員会と争っていたことを思い出す人もいるかも知れないが、今回のケースでは対象となっている企業の状況もマイクロソフトが置かれていたものとはかなり違う。

そして何より中国政府と欧州委員会では真の目的が全く違うところにあると言わざるを得ない。

中国がこのような態度に出るのは、自国のマーケットにそれだけの「自信」があるからだろう。

業界団体の試算によると、日本企業の対象製品は現在の中国国内での売上高で1兆円規模に上る可能性があるとのことだが、欧州や米国にしても中国は無視できない大きな市場になっていることは確かだ。

しかし、例え中国といえども、自国マーケットへの自惚れが過ぎると「致命的」な結果をもたらすことになると私は思う。

食品業界では中国産食品や製品に対する不信感への対処として「CHINA FREE(チャイナ・フリー)」といった現象が起こった。

中国がこの身勝手な法律を押し通そうとするなら、あらゆる業界で「CHINA FREE(チャイナ・フリー)」現象が発生する可能性もあると思う。

さらには、中国市場での売上を失っても構わないから中国への輸出も取りやめるという国も出てくるだろう。

そのような事態は中国にとっても致命的だ。

世界の中でも無視できないほどに大きく成長した中国市場だからこそ、中国は本当の意味での競争原理とは何か、そして規制とは何かということをしっかりと考えてもらいたいと思う。

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