さっき、箱崎エアターミナル(東京・日本橋箱崎町)で、黒眼帯をつけた初老の男性とすれ違った。これが初めてではない。このあたりの夜道で何度となく出くわし、地下鉄丸ノ内線の車内でも見かけたこともあり、銀座の四丁目交差点でも会ったこともある。フォード、ウォルシュ、ニコラス・レイばりの黒眼帯を、コスプレ的にではなく日常的に利用している人は、この大東京でもめったに見ない。おそらく、本当に独眼なのだろう。
しかし、そういう物珍しさもさることながら、ジャケット、シャツ、時には紐ネクタイなど、着こなしの洒落た感じが尋常ではなく、間違いなくただ者ではあるまい。と言っても、やくざというのではない。もっと、なんというか、ジャズ評論家か何かかしら?とも考えたりする。ジャズ評論家という人と親しく接していないので、勝手なイメージで言っているだけである。ただ、たいがいはディスク・ユニオンの例の黒地に赤文字のビニール袋(それも12インチのLPサイズの袋)を小脇に抱えている。そんな初老男性はただ者ではないだろう。
この男性のことを、いくつかの場で話したことがある。私は交友には恵まれていて、何か疑問や不明点があっても、たいがいは誰かの知識なり調査なりのおかげで解決できてしまう。物知りの知人に囲まれた──まるで百科全書の森に抱かれて生きているかのような──果報者の人生を、一度きちんと感謝せねばならない。しかしながら、わが百科全書たる知人友人たちをもってしても、その黒眼帯の男が何者なのか、いまだ判明し得ていない。「こんど会ったら、挨拶しちゃえばいいじゃん」「え」「なんなら荻野さんの知り合いに加えちゃったらどう?」
残念ながら先ほどの邂逅の際には、声をかける勇気が湧かなかった。エアターミナルの長い廊下で、私はまたしてもなすすべなく、その姿を目で追うことしかできずに終わった。先方もトイレに向かっていくようだったし、仕方あるまい。また次もあるだろう。こんなに何度も会ったのだから。
しかし、そういう物珍しさもさることながら、ジャケット、シャツ、時には紐ネクタイなど、着こなしの洒落た感じが尋常ではなく、間違いなくただ者ではあるまい。と言っても、やくざというのではない。もっと、なんというか、ジャズ評論家か何かかしら?とも考えたりする。ジャズ評論家という人と親しく接していないので、勝手なイメージで言っているだけである。ただ、たいがいはディスク・ユニオンの例の黒地に赤文字のビニール袋(それも12インチのLPサイズの袋)を小脇に抱えている。そんな初老男性はただ者ではないだろう。
この男性のことを、いくつかの場で話したことがある。私は交友には恵まれていて、何か疑問や不明点があっても、たいがいは誰かの知識なり調査なりのおかげで解決できてしまう。物知りの知人に囲まれた──まるで百科全書の森に抱かれて生きているかのような──果報者の人生を、一度きちんと感謝せねばならない。しかしながら、わが百科全書たる知人友人たちをもってしても、その黒眼帯の男が何者なのか、いまだ判明し得ていない。「こんど会ったら、挨拶しちゃえばいいじゃん」「え」「なんなら荻野さんの知り合いに加えちゃったらどう?」
残念ながら先ほどの邂逅の際には、声をかける勇気が湧かなかった。エアターミナルの長い廊下で、私はまたしてもなすすべなく、その姿を目で追うことしかできずに終わった。先方もトイレに向かっていくようだったし、仕方あるまい。また次もあるだろう。こんなに何度も会ったのだから。
お疲れ様でした。まさか私の目の黒いうちにアトレティコの優勝場面に出会えるとは、そしてそれがシメオネというOBの手塩にかけたチームづくりによって実現するとは、思いもよりませんでした。まれに見る素晴らしいシーズンだったと思います。