荻野洋一 映画等覚書ブログ

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河原宏先生追悼

2012-03-04 20:32:20 | 
 政治学者の河原宏(日本政治思想史)が2月28日に亡くなった(朝日新聞の死亡記事)。83歳だった。私の大学時代、ゼミ指導教授としてたいへんお世話になった恩師である。恥ずかしながら、私が提出したゼミ論文をそこそこ気に入ってくれ、その後もお手紙を頂戴するなど、社会人としてまったく頼りない私の身の上を心配していただいた。
 著書に『日本人の「戦争」 古典と死生の間で』(1995)、『「自在」に生きた日本人』『日本思想の地平と水脈』(1998)、『日本人はなんのために働いてきたのか』(2006)など多数。このうち『日本思想の地平と水脈』は一般の出版社ではなく、「古稀記念論文集刊行会」から発刊されたもの。こういうものが出るというのは、河原先生を慕う立派な方々が弟子をみずから任じているからこそであって、凄いことだと改めて思う。私などは単にゼミ卒業生というだけで、OB会のたぐいにも出席したためしのない木っ端にすぎない。

 4年生の時、ゼミ合宿で伊豆へお伴したこともある。宿ではたしか、優等生の発表を申し訳程度に聴いたのち、さっさと飲み会となった気がする。飲み会を途中、浴衣姿で抜け出し、友人Hと連れだって温泉街を夜の散歩としゃれ込んだりした。土産物屋や射的屋の灯りが非常にまぶしかったのを覚えている。
 またゼミの時、第二次世界大戦終戦直後の混乱期の話となり、「ヒロポンを打つと、いつまでも寝なくて大丈夫となる。三日三晩めちゃくちゃに働いて、そのうえ野球にも張りきって興じていた。そのあと寝だめをするのだ」などといった思い出を語っておられた。これが思い出なのかはさておき、私自身にとっては案外こういう些末な話が、大学時代のもっとも鮮明な思い出として結晶化していたりするのである。