彼岸の入り。新宿某寺にて眠る亡父の墓を掃苔し、初台に移動。新国立劇場小劇場にて、ドイツの若手劇作家ローラント・シンメルプフェニヒ作の舞台『昔の女』(演出はペンギンプルペイルパイルズの倉持裕)を見る。
長男も成長し、結婚24年目を迎えたある夫婦のもとに、夫の昔の恋人だという女が突如として名乗り出て、「永遠に愛し続ける、という約束を今こそ履行してもらう」と執拗に主張し、平和な一家は一晩にして崩壊する。時間軸を3分前とか、10分後とかずらしつつ差異と反復によって進行していく展開が興味深い。
とはいえ後半の、なにやらサイコスリラー風というか、はっきり言うとエイドリアン・ラインのごときこけおどし演出と音響効果は、ああしかできないだろうが、こんなもんかなという印象もあって、シンメルプフェニヒの本も、どこまで凄いかというと、これも保留である。
帰宅後、録り貯めてあったHDDにて内田吐夢監督の帰国後第2作『たそがれ酒場』(1955)を10年以上ぶりに見て、大いに感動。銀座あたりにある大衆酒場の一晩をワンセット・ドラマで多彩に描き込んだ後、看板となった暗闇の店内で交わされる、小杉勇と小野比呂志、両老優の会話、珠玉の味わい。会話といっても小野比呂志はまったくの無口な役だから、小杉勇の独壇場なのだが。
嗚呼、『限りなき前進』(1937)と『土』(1939)の小杉勇を、また見たくなってきたのである。
長男も成長し、結婚24年目を迎えたある夫婦のもとに、夫の昔の恋人だという女が突如として名乗り出て、「永遠に愛し続ける、という約束を今こそ履行してもらう」と執拗に主張し、平和な一家は一晩にして崩壊する。時間軸を3分前とか、10分後とかずらしつつ差異と反復によって進行していく展開が興味深い。
とはいえ後半の、なにやらサイコスリラー風というか、はっきり言うとエイドリアン・ラインのごときこけおどし演出と音響効果は、ああしかできないだろうが、こんなもんかなという印象もあって、シンメルプフェニヒの本も、どこまで凄いかというと、これも保留である。
帰宅後、録り貯めてあったHDDにて内田吐夢監督の帰国後第2作『たそがれ酒場』(1955)を10年以上ぶりに見て、大いに感動。銀座あたりにある大衆酒場の一晩をワンセット・ドラマで多彩に描き込んだ後、看板となった暗闇の店内で交わされる、小杉勇と小野比呂志、両老優の会話、珠玉の味わい。会話といっても小野比呂志はまったくの無口な役だから、小杉勇の独壇場なのだが。
嗚呼、『限りなき前進』(1937)と『土』(1939)の小杉勇を、また見たくなってきたのである。