廣木隆一の新作『きみの友だち』が素晴らしい仕上がりを見せている。この廣木という監督は晩成型というか、もちろん若い頃から活躍してはいるのだが、ここ数年着実に進化を見せている。少年と少女を主人公とする廣木作品としては『4TEEN』(2004)というWOWOWドラマがあったが、今回はあの時の経験を肥やしに、さらに磨きをかけている。
最近フランシス・F・コッポラの『アウトサイダー』(1983)を再見する機会があったのだが、これに匹敵する青春悲話だと言っても過言ではない。輝かしく光り、散っていく悲哀と、再生の希望を託した一篇であり、芦澤明子のカメラは、その光景をぐっと引きでこらえつつ、少しずつドリーしながら捉えていく。山梨という、自然に恵まれつつも盆地的に閉塞した地形の中でうごめく10代の生が一度きりのものとして写しとられている。
うごめくといっても、はちきれんばかりのエネルギッシュでスポーティな青春ではない。身体的なハンディキャップゆえに他のクラスメートのように謳歌しえなかった女子生徒たちの、どちらかというとスタティックな、歩みの緩やかな物語ではある。
また、引きの画といっても、例えば青山真治や諏訪敦彦の画面のような強いインパクトを残すというものではなく、相米慎二のように一瞬一瞬が怒濤のようなものでもない。もう少し職人芸的な世界ではあるのだけれども、画面を大切にしようという作者たちの真心が伝わってくる。主要登場人物を演じた10代の若き演者たちにとっても、一生で1度きりしかできない演技だっただろう。
『アウトサイダー』の終盤では、大火傷で死んでいくジョニーが親友のポニーボーイに“Stay gold...(黄金のままでいろよ)”と遺言を残して息を引き取る感動的な場面があったが、『きみの友だち』の終盤の病室の、白日夢から現実に引き戻される一連はこれに匹敵する感情の表出がある。個人的には『天然コケッコー』よりも遙かに優れた作品だと思う。
7月26日(土)より新宿武蔵野館他、全国順次公開
http://www.cinemacafe.net/official/kimi-tomo/
最近フランシス・F・コッポラの『アウトサイダー』(1983)を再見する機会があったのだが、これに匹敵する青春悲話だと言っても過言ではない。輝かしく光り、散っていく悲哀と、再生の希望を託した一篇であり、芦澤明子のカメラは、その光景をぐっと引きでこらえつつ、少しずつドリーしながら捉えていく。山梨という、自然に恵まれつつも盆地的に閉塞した地形の中でうごめく10代の生が一度きりのものとして写しとられている。
うごめくといっても、はちきれんばかりのエネルギッシュでスポーティな青春ではない。身体的なハンディキャップゆえに他のクラスメートのように謳歌しえなかった女子生徒たちの、どちらかというとスタティックな、歩みの緩やかな物語ではある。
また、引きの画といっても、例えば青山真治や諏訪敦彦の画面のような強いインパクトを残すというものではなく、相米慎二のように一瞬一瞬が怒濤のようなものでもない。もう少し職人芸的な世界ではあるのだけれども、画面を大切にしようという作者たちの真心が伝わってくる。主要登場人物を演じた10代の若き演者たちにとっても、一生で1度きりしかできない演技だっただろう。
『アウトサイダー』の終盤では、大火傷で死んでいくジョニーが親友のポニーボーイに“Stay gold...(黄金のままでいろよ)”と遺言を残して息を引き取る感動的な場面があったが、『きみの友だち』の終盤の病室の、白日夢から現実に引き戻される一連はこれに匹敵する感情の表出がある。個人的には『天然コケッコー』よりも遙かに優れた作品だと思う。
7月26日(土)より新宿武蔵野館他、全国順次公開
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