荻野洋一 映画等覚書ブログ

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『コッポラの胡蝶の夢』 フランシス・F・コッポラ

2008-07-17 01:49:00 | 映画
 フランシス・F・コッポラ10年ぶりの監督作『コッポラの胡蝶の夢』を試写にて。
 老境に入った巨匠が、数々の失態や破綻の疵を、長い時間をかけて静かに清めた後に、ご意見無用といった勢いで、私たちに本作を投げ込んできている。オリヴェイラの過激さにはまだ到達していないが、それでもかなり有望だ。このような異色の老境なるものが、こんなコッポラのような既知の存在から登場しようとは。

 サンスクリット語から始まって、古代エジプト語、バビロニア語、シュメール語と、新進女優のアレクサンドラ・マリア・ララが夜な夜な口走り始める後半あたりから、痛快なモンタージュが横行する前半にもまして、いい意味でのデタラメさが加速する。山脈の中の高い山だけをチェックしているような、大雑把な映画なのだが、それでいいのだ、と言わせる力が、この『コッポラの胡蝶の夢』には漲っているようだ。

 エスクァイアマガジンジャパンからコッポラ関連本が出るとのことで、有難いことに原稿依頼をいただいた。今これから、コッポラを考えるというのは、じつに楽しい作業ではないだろうか。



8月30日(土)より、渋谷円山町 シアターTSUTAYA(Q-AXシネマ改め)他、全国順次公開
http://www.kochou-movie.jp/