美島菊名の写真展『BLUE FILM』を新宿眼科画廊にて。
白の壁面に掲げられた写真はいずれも、現代日本人とおぼしきポートレイトである。「ブルーフィルム」と聞いて私のような俗物が想像するものとは、似ても似つかぬものだ。ポートレイトの主人公たちは皆、少しうれしそうな表情を浮かべている。彼ら彼女らのリラックスした表情の源泉が、その肢体にまとい付いた異物の存在であることは明らかだ。
花びらの冠を被って裸身をステンレスのバスタブに浸かるロングヘアの少女。おびただしい花びらの衣裳に守られてふと乳首をあらわにすることに同意している少女。手の甲を花卉のピンクに染め、肘を茎の緑に染めて恍惚となる女性のバストショットも、2枚ほど展示されている。クマのぬいぐるみやバービー人形に囲まれてご機嫌な女性たちもいる。肉体がいずれは滅び、霧散してしまうということは、いかに愚かな人間でも心得ている宿命だが、それを忘却するための装置というものが、生には必要なのである。
仮装などという演劇的なスタイルで非日常に連れ去るのではなく、上のようなちょっとした道具立てによって日常の瑣末さに踏みとどまらせた上で、半身だけ〈自分〉でなくする、そういう偏差を産み出して、美島菊名という写真家は悪戯っぽくシャッターを切っているように思える。
本展は7月20日(日)まで新宿眼科画廊で開催された
http://www.gankagarou.com/
白の壁面に掲げられた写真はいずれも、現代日本人とおぼしきポートレイトである。「ブルーフィルム」と聞いて私のような俗物が想像するものとは、似ても似つかぬものだ。ポートレイトの主人公たちは皆、少しうれしそうな表情を浮かべている。彼ら彼女らのリラックスした表情の源泉が、その肢体にまとい付いた異物の存在であることは明らかだ。
花びらの冠を被って裸身をステンレスのバスタブに浸かるロングヘアの少女。おびただしい花びらの衣裳に守られてふと乳首をあらわにすることに同意している少女。手の甲を花卉のピンクに染め、肘を茎の緑に染めて恍惚となる女性のバストショットも、2枚ほど展示されている。クマのぬいぐるみやバービー人形に囲まれてご機嫌な女性たちもいる。肉体がいずれは滅び、霧散してしまうということは、いかに愚かな人間でも心得ている宿命だが、それを忘却するための装置というものが、生には必要なのである。
仮装などという演劇的なスタイルで非日常に連れ去るのではなく、上のようなちょっとした道具立てによって日常の瑣末さに踏みとどまらせた上で、半身だけ〈自分〉でなくする、そういう偏差を産み出して、美島菊名という写真家は悪戯っぽくシャッターを切っているように思える。
本展は7月20日(日)まで新宿眼科画廊で開催された
http://www.gankagarou.com/