静岡のむかし話/静岡県むかし話研究会編/日本標準/1978年
ぼろぼろの着物を着たみすぼらしいとしよりが、泊めてくれるようお願いしたのは、欲の深いおじいさんのところ。
ここであいてにされず、心の優しいおじいさんの家にいって泊めてもらったとしよりは、宝の槌をお礼に差しだします。
「ほしい物の名前を三度呼んでから横に振ると、名を呼んだものがでてくる。しかし二つの物を一度に出そうとよくばると、たいへんな不幸なめにあう」という。
ここまでは、よくあるパターン。
心の優しいおじいさんが、「こんな、はずかしいもんだけえが、まあ一つあがんなさいや」と、ほかやけのイモをとりだします。食べ物が具体的にかたられているのはめずらしく、冬だったら雰囲気が出ます。欲の深いおじいさんも、囲炉裏のはしにすわって、おいしいおかずで夕ご飯を食べているところに、みすぼらしいとしよりが、たずねてきます。
おじいさんは、すぐには宝の槌をつかいません。日照りでお米の収穫不足が二年、三年とつづいたとき、宝の槌を思い出し、米をだすと、こまっているひとにも米をわけて、よろこばれます。
うらやましがったのが、となりのよくばりじいさん。宝の槌をかり、米と、それをおさめる蔵を同時に出そうとします。それが「米食らぇー、米食らぇー」と聞こえて、ネズミがやってきて、少ししかない米を全部たべてしまい、ひどい貧乏になってしまいます。
よくばりじいさんのところで、汚い物などがでてくるより親しみやすいでしょうか。