ねこのき/長田弘・作 大橋あゆみ・絵/クレヨンハウス/1996年
オレンジいろの、ながいしっぽのねこは はなのすきな おばあさんのねこでした。
あるひ、オレンジいろの ながいしっぽの ねこは あさがきても かえってきませんでした。いつもは あさがくるころ どこからか かえってきたのですが・・。夜になっても、空の星を かぞえおわっても ねこは かえってきませんでした。おばあさんのねこは くるまに はねられたのです。
おばあさんは ちいさな にわに しんだねこを そっとうめました。
きせつがすぎて、はるがくると にわに ちいさな 芽が顔を出しました。ちいさな芽は まいにち ぐんぐん おおきくなって みどりの はっぱをつけて あっというまに りっぱな きに そだちました。
はなの ていれをしていた おばあさんが ふしぎな きを みあげると そこには オレンジいろの 実が ひとつなっていました。
おばあさんの うえた 花が いっせいにさきみだれた すばらしい 朝、オレンジいろの実 がおちました。
それは オレンジいろの ちっちゃな こねこでした。
背景の地の色は、黄色、青、黄土色、紫と各ページさまざま。字は大きめ。
各ページに えがかれている 庭や植木鉢の花も やさしい感じで 落ち着きます。
ひとりぼっちの おばあさんが ねこを 失った悲しみを かたられることはないのですが、それがかえって 悲しみの深さを あらわしていました。
「こころという にわにそだつ いっぽんの ゆめのき。これが おばあさんの ゆめのきです。ねこのきです。」というのは、おばあさんの こころの 声だったのかも。