ちいさな あかいにわとり/大塚勇三・再話 日紫喜洋子・絵 福音館書店/2022年(2016年初出)
むかしむかし、森の小さな家に、こねこと、こねずみと、小さな赤いにわとりが住んでいました。
朝、かまどに火を起こすときも、部屋の掃除をするときも、朝ごはんを作るときも、赤いにわとりは、「誰がやる?」と聞きます。すると
「あたしは、やらないよ」
「ぼくも、やらない」と、こねこもこねずみも、まったくやるきがありません。
ところが、朝ご飯ができると、「あたしが たべるよ」「ぼくも、たべる」という始末。それでも、赤いにわとりは、「きみたちが いつでも わたしを 手伝うって 約束するなら べつだけど」というと、「てつだうよ」「てつだうよ」というので、みんなで 朝ごはんを 食べました。
朝ご飯を食べ終わると、きつねがやってきて、「だれが、おれの せなかを かいてくれるかね?」
ここでも、こねことこねずみは、「やらない」といいますが、赤いにわとりは、きつねのせなかを かいてやり、耳もかきました。
これですむわけがありません。にわとりを 地面に ほうりなげ 袋におしこんでしまいます。にわとりは「だれが わたしを たすけてくれる?」とさけびますが、「しらない」とこねことこねずみ。かくれたつもりのこねことこねずみも、かくればしょから 引きずり出され、袋の中へ。
その日は、ひがかんかん照っていて、暑い日。家に帰る途中、くだびれたきつねが、地面に袋をほうりだし、日陰で ひと眠りしているあいだに、赤いちいさなにわとりは、羽の下から ハサミと、針と糸を取り出し、こんどは、みんな協力して、袋から外へ。それからこねこもこねずみも、石をもってきて袋に入れ、縫い合わせます。
それからのきつねは・・・?
危機を脱出したこねこと、こねずみは、それからは にわとりの することを手伝うようになります。きつねに こぶが 二つできる結びも楽しい。
「ちいさなあかいにわとり」としていますが、絵ではめんどり。めんどりではなく、「にわとり」としたのは何か意味があったのでしょうか。
あわせて読みたいのが、「オンドリとネズミと小さい赤いメンドリ(愛蔵版おはなしのろうそく6 東京子ども図書館編)」。
オンドリとネズミ、小さな赤いメンドリがでてきます。ほぼおなじようにすすんでいきます。
「目をさましたきつねが、魚たちの魔法のほら穴にとじこめられしまい、それからは、きつねのすがたを見た人がいない」と急に魔法のほら穴に閉じ込められるより、大塚さんの再話のほうが はいりやすいでしょうか。さらに「おはなしのろうそく」では、はじめから「とてもわるい大きなキツネ」「わるい子ギツネ」とあるのですが、この絵本では、そうした表現はありません。