やさしい魔女/作・ジーン・マセイ 絵・エイドリアン・アダムズ 訳・おおいし まりこ/新世研/2002年
ハロウィーンの日、深い霧にまぎれて、24人の魔女たちが魔方陣をかこんであつまり、もうひとりの魔女をまっていました。もうひとりは魔女になって三週間しかたっていない新人のリトルです。
リトルは忘れ物がないか部屋の中を歩き回っていましたが、フクロウが持ってきてくれたほうきにのって ようやく魔方陣へ。
今日、魔女たちは、お月さまを ぴかぴかに みがきあげることになっていましたが、一番についたものには、新品のクモの巣のベールが、ほうびです。ふんわりとして、なめらかで、世界中さがしてもこんなに美しいベールには、おめにかかれません。
でかける前に、もちものの点検です。ひとふりするとドロンと消える透明パウダー、つぎに「空とぶほうき」。このほうきは、魔法をかけたり、ねがいごとを かなえたりするとたちまち消えて二度と手にはいりません。
さあ出発というわけでしたが、新人のリトルは、練習するチャンスがいっかいもなく、ぶっつけ本番。空を飛ぶことはできず、地面すれすれにいくだけ。
まじりけなしの黒ねこから、ともだちになってほしいといわれ、かぼちゃから かぼちゃランプになりたいといわれ、ほうきで魔法をかけてしまいます。それで ほうきは消えてしまい 月にはいけなくなってしまいます。「どうせ 一番になんて なれっこなかったんだから」と自分をなぐさめたリトルの目から涙がぽろんぽろん。
さらに男の子が おばけに おわれるのを なぐさめようとすると、男の子は魔女だといって、ふるえあがる始末。しかたなく透明パウダーをふりかけ男の様子をうかがうと、男の子は誰もいないことに気づき、家にかえろうとしますが、こんどは あたりが真っ暗で こわがります。それでも、黒ねことかぼちゃランプが手伝い、てくてく歩きだします。
魔法の道具を使い果たしたリトルは、フクロウの背中に乗って、魔方陣までもどり、仲間の魔女のかえりをまちます。
何をやっても失敗ばかりのリトルは、毒きのこにこしかけ 足に両ひじをついて、あたまをかかえこんだまま動こうともしません。そのリトルに黒くもが、めずらしいきのこだと思って、グルグルはいまわり、キラキラ輝く糸をはきだしながら、おおいます。それはクモのベールでした。
やがてかえってきた魔女たち。お月さまへ一番のりしたトールは、とびっきりのベールを手に入れましたが、それより素敵なリトルをおおっているベールに、目を疑いました。
何が起こったかは、フクロウの出番でした。
「やさしい魔女」は、魔女のなかでは、あまり歓迎されない存在。しかし、魔法の道具をなくしても人助けするやさしさを持つ魔女も いるようですよ。
結びは、「ハロウィーンまつりの日に、ひとりしょんぼりしている子に親切にしてあげましょう。ひどい目にあわないように、ちゃんとみまもってあげましょう」。
まもなくハロウィーンですが、文章がながいので、四年生以上でしょうか。