どんぴんからりん

昔話、絵本、創作は主に短編の内容を紹介しています。やればやるほど森に迷い込む感じです。(2012.10から)

舌もとりを悪うする薬・・岡山

2022年09月10日 | 昔話(中国・四国)

          岡山のむかし話/岡山県小学校国語教育研究会編/日本標準/1976年

 

 「舌もとり」というのは聞きなれませんが、「いじのわるいおしゃべり」という注釈がついています。

 夫に死なれ、こどもふたりをそだてている若い後家。しゅうとめが口やかましい、意地悪うするので、実家に帰ろうかとも思うたが、子どもを残してはかわいそうと、がまんして暮らしておった。

 ある日、どうにもこらえきれんようになって、医者のところにいって「舌もとりを悪うする薬をつかあさらんか」と頼むと、「薬はつくるが、よくしゃべるしゅうとめの口を、しゃべらないようにするからには、わしにもあんたにも、罰が当たるかもしれない。その薬を飲ませる前に、わしの分が三十日、あんたの分として三十日、つごう六十日、しゅうとめを大事にしてくれ。六十日たったら薬をとりにきなさい」といわれます。

 それからというものその後家さんは、しゅうとめが、夜起きかけると、すぐよって助け起こし、肩をなぜ、こしをさすってあげ、便所にはつれていく、夜はあいさつ。めしも、これまでは、しゅうとめにたずねもをせずにつくっていたのを、なににするか聞いてからこしらえ、しゅうとめの食事に、よう気をくばってあげた。

 それでも、しゅうとめは相変わらず、何かにつけてよめをののしっていた。それでもがまんしていた後家さんでしたが、どうしてもがまんできず、五十日たって、お医者のところにいき、五十日で薬をつくってくれるよう、頼んだ。

 すると医者は、薬をのませるまえに、よめにいった妹のところにいって、しゅうとめの好きなものをこしらえてもらい、それをしゅうとめに食べさせてから、薬をのませなさいと、薬をわたしてくれた。

 親類のところでつくってくれたのは、ぼたもち。大好物のぼたもちを食べると、しゅうとめの態度はころっとかわり、「いままで悪くいったり、無理ばかりいうて、すまないことだった。すまん、すまん」といい、それからは、しゅうとめは、よめを大切にするし、よめは「おかあさん、おかあさん」というて、ほんまの親子のように、なかよく暮らしたそうな。

 

 昔は、大家族で、よめさんも苦労の連続。現在、しゅうと、しゅうとめと同居する家族の割合は、どうでしょうか。