「味噌買い橋」は岐阜版で語られているでしょうか。
・味噌買橋(日本昔話百選/稲田浩二・稲田和子:編著/三省堂/2003年改訂新版)
飛騨の国の乗鞍の西の麓の沢上というところに長吉という正気な炭焼きがおったんじゃと。
ある晩、夢のなかに白いひげのおじいさんがでてきて、「高山の町にいって味噌買い橋に立っていてみろ。とってもいいことができるぞ」といわれ、高山の味噌買い橋にいったら、いいことがきけるというので高山まででかけます。
五日目に、橋のふもとの豆腐屋の主が、声をかけます。長吉が夢の話をすると、豆腐屋もおなじような夢を見たが、「たわいもない夢なんぞ本気になれない。お前もいい加減にして帰ったらどうかの」といいます。
ところが豆腐屋の夢というのは、乗鞍の麓の沢上に長吉という男がいる。その男の家の庭の松の木の根っこを掘ったら宝物がでてくるという。この話を聞いた長吉が、庭の松の根方を掘ってみたら、金銀や宝物が、ざんぐごんぐと出てきたから、いっぺんに大した金持ちになったと。
長吉は、村の人から福徳長者と呼ばれて、いい生涯をおくったんじゃと。
「味噌買橋」は、岐阜県高山市の小学校の先生が翻案したものが広まったものといいますが、徳島でも語られています。
・みそ買い橋(徳島のむかし話/徳島県教育会編/日本標準/1978年)
話者と再話者の名前が記載されています。話者の方がアレンジしたものでしょうか。
沢上、炭焼きは、豆腐屋が同じで、名前は長兵衛ででてきます。三省堂版では、出かけますが、徳島版は家から五日間通います。
四日たってあきらめかけますが、「いい炭が焼けるようになるまでじゃって何日もかかったもんじゃ」とあきらめないところに、炭焼きが生かされています。三省堂版では、かならずしも炭焼きでなくても成立します。
こうした昔話では、もうすこし脚色して、地名も地元で語ることができそうです。