天気:曇り濃霧、気温:10度C(昼)
鹿嶺高原を訪ねてから、もう3日が過ぎた。山道を歩きながらあれこれ考えていたことも、いつの間にか薄らいで曖昧になり、書くにあたっては、行く先も覚束ないままに林道を歩き出したちょうどあのときのような気分がする。
このコースの印象をあえてなぞらえるなら、仙丈から塩見に通ずる千塩尾根か。ただ、巨木は生えていないし、この尾根と比べれば明るく、登山道はしっかりしている。新緑のころ、紅葉のころが特に素晴らしい、静かな、まず誰でも歩ける尾根道だ。若干の急登を強いられる個所もある。が、そのくらいは甘受しよう。水場はないと考えた方がよい。
鹿嶺高原で1泊すれば、余裕の山行になるが、営業しているかどうかは要確認。
問題は日帰りをどう評価するかだ。同行のヤマかっちゃんは、一般向きではないとする否定派。だが、幾日かをかける縦走では、行動時間が10時間を超えることはいくらでもある。
エスケープルートは、半対峠へ登ってくる伊那側の林道のみ。フトノ峠から小黒川林道に下るコースは、今度は逆に小黒川林道から登ってみようと考えている。林道沿いのあの古ぼけた道標にはなぜか魅かれる。
富士見側にゴンドラができてから、入笠山は以前より大衆化した。悪いこととは言ってない。しかし以前のように、青柳から歩いて登ってくる人はまずいない。また、交通規制を一方的に進めたために、自動車を利用しようとする登山者は混乱し、やってこなくなった。これだけの理由ではないが、仄かなランプの灯の下で山の夜を楽しもうとするような登山者はいつしか去り、経営を断念しようとしている小屋もある。
ゴンドラで来た人たちは、山の深さを知ろうとしない。かくして、伊那側の魅力的な場所のことなど知らずに帰る。
この牧場のキャンプ場や古びた山小屋は、「知る人ぞ知る穴場だ」と言われながら今日まで来た。それでよかった。少し疲れ、人生の行く末が見えてきたオジサンやオバサンの方が此処にふさわしいと言う人もいた。それでもよかった。20年以上も毎年来ても此処は変わらないと言う人たちもいる。それだからよかった。若い男女が大騒ぎするようなこともない。それもよかった。
年齢なぞどうでもいい。男だ女だも関係ない。ただ、山のことが好きで、少し古臭さのにおう、そう、かって辻まことが「岳人」の表紙に描いたような、あんな朴訥な登山者でもいたらいい。いや、来てもらいたい。
さすればこちらからのお返しは、満天の星空と、もうすぐやってくる白い季節の、雪深い森の奥にある静寂(しじま)・・・。
鹿嶺高原を訪ねてから、もう3日が過ぎた。山道を歩きながらあれこれ考えていたことも、いつの間にか薄らいで曖昧になり、書くにあたっては、行く先も覚束ないままに林道を歩き出したちょうどあのときのような気分がする。
このコースの印象をあえてなぞらえるなら、仙丈から塩見に通ずる千塩尾根か。ただ、巨木は生えていないし、この尾根と比べれば明るく、登山道はしっかりしている。新緑のころ、紅葉のころが特に素晴らしい、静かな、まず誰でも歩ける尾根道だ。若干の急登を強いられる個所もある。が、そのくらいは甘受しよう。水場はないと考えた方がよい。
鹿嶺高原で1泊すれば、余裕の山行になるが、営業しているかどうかは要確認。
問題は日帰りをどう評価するかだ。同行のヤマかっちゃんは、一般向きではないとする否定派。だが、幾日かをかける縦走では、行動時間が10時間を超えることはいくらでもある。
エスケープルートは、半対峠へ登ってくる伊那側の林道のみ。フトノ峠から小黒川林道に下るコースは、今度は逆に小黒川林道から登ってみようと考えている。林道沿いのあの古ぼけた道標にはなぜか魅かれる。
富士見側にゴンドラができてから、入笠山は以前より大衆化した。悪いこととは言ってない。しかし以前のように、青柳から歩いて登ってくる人はまずいない。また、交通規制を一方的に進めたために、自動車を利用しようとする登山者は混乱し、やってこなくなった。これだけの理由ではないが、仄かなランプの灯の下で山の夜を楽しもうとするような登山者はいつしか去り、経営を断念しようとしている小屋もある。
ゴンドラで来た人たちは、山の深さを知ろうとしない。かくして、伊那側の魅力的な場所のことなど知らずに帰る。
この牧場のキャンプ場や古びた山小屋は、「知る人ぞ知る穴場だ」と言われながら今日まで来た。それでよかった。少し疲れ、人生の行く末が見えてきたオジサンやオバサンの方が此処にふさわしいと言う人もいた。それでもよかった。20年以上も毎年来ても此処は変わらないと言う人たちもいる。それだからよかった。若い男女が大騒ぎするようなこともない。それもよかった。
年齢なぞどうでもいい。男だ女だも関係ない。ただ、山のことが好きで、少し古臭さのにおう、そう、かって辻まことが「岳人」の表紙に描いたような、あんな朴訥な登山者でもいたらいい。いや、来てもらいたい。
さすればこちらからのお返しは、満天の星空と、もうすぐやってくる白い季節の、雪深い森の奥にある静寂(しじま)・・・。