入笠牧場その日その時

入笠牧場の花.星.動物

(続・続)秋の鹿嶺高原を訪ねる

2013年10月24日 | 入笠周辺の山と谷
 天気:曇り濃霧、気温:10度C(昼)



 鹿嶺高原を訪ねてから、もう3日が過ぎた。山道を歩きながらあれこれ考えていたことも、いつの間にか薄らいで曖昧になり、書くにあたっては、行く先も覚束ないままに林道を歩き出したちょうどあのときのような気分がする。
 
 このコースの印象をあえてなぞらえるなら、仙丈から塩見に通ずる千塩尾根か。ただ、巨木は生えていないし、この尾根と比べれば明るく、登山道はしっかりしている。新緑のころ、紅葉のころが特に素晴らしい、静かな、まず誰でも歩ける尾根道だ。若干の急登を強いられる個所もある。が、そのくらいは甘受しよう。水場はないと考えた方がよい。
 鹿嶺高原で1泊すれば、余裕の山行になるが、営業しているかどうかは要確認。
 問題は日帰りをどう評価するかだ。同行のヤマかっちゃんは、一般向きではないとする否定派。だが、幾日かをかける縦走では、行動時間が10時間を超えることはいくらでもある。
 エスケープルートは、半対峠へ登ってくる伊那側の林道のみ。フトノ峠から小黒川林道に下るコースは、今度は逆に小黒川林道から登ってみようと考えている。林道沿いのあの古ぼけた道標にはなぜか魅かれる。

 富士見側にゴンドラができてから、入笠山は以前より大衆化した。悪いこととは言ってない。しかし以前のように、青柳から歩いて登ってくる人はまずいない。また、交通規制を一方的に進めたために、自動車を利用しようとする登山者は混乱し、やってこなくなった。これだけの理由ではないが、仄かなランプの灯の下で山の夜を楽しもうとするような登山者はいつしか去り、経営を断念しようとしている小屋もある。
 ゴンドラで来た人たちは、山の深さを知ろうとしない。かくして、伊那側の魅力的な場所のことなど知らずに帰る。

 この牧場のキャンプ場や古びた山小屋は、「知る人ぞ知る穴場だ」と言われながら今日まで来た。それでよかった。少し疲れ、人生の行く末が見えてきたオジサンやオバサンの方が此処にふさわしいと言う人もいた。それでもよかった。20年以上も毎年来ても此処は変わらないと言う人たちもいる。それだからよかった。若い男女が大騒ぎするようなこともない。それもよかった。
 年齢なぞどうでもいい。男だ女だも関係ない。ただ、山のことが好きで、少し古臭さのにおう、そう、かって辻まことが「岳人」の表紙に描いたような、あんな朴訥な登山者でもいたらいい。いや、来てもらいたい。
 さすればこちらからのお返しは、満天の星空と、もうすぐやってくる白い季節の、雪深い森の奥にある静寂(しじま)・・・。
 

 
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(続)秋の鹿嶺高原を訪ねる

2013年10月23日 | 入笠周辺の山と谷
 天気:曇り、気温11度C(昼)



 (フトノ峠の標識を目にしてから鹿嶺高原を折り返す間に、ずっと思案していたことがあった。それは、当初の予定を変えて、フトノ峠からは小黒川林道に通ずる古い峠道を下ってみようかということだった。
 というのは、以前から名前だけは知っていたこの古い峠道には関心があったし、もしかしたら新しい登山のコースになるかもしれないという期待もあった。また、往路に要した時間からして、何かあれば夜道を行かねばならぬ可能性もあり、そうなればヘッドランプがなくても道に迷う心配のない、小黒川林道へ下りた方が安心だというふうにも考えたのだ。)
 
 フトノ峠で小黒川林道に下る道を探すも、判然としない。もっとも、現在も通行する人などいるとは思えない。時間をかけたくなかったから、地形的にここら辺りだろうといい加減な勘を頼りにクマ笹の中に踏み込む。しばらくして、道と思しき踏み跡は獣道と区別がつかなくなり、仕方ないから最悪の場合は自力で行くしかないと覚悟を決める。
 そうやってるうちに、「フトノ峠を歩く」なぞという当初の計画は霧散してしまう。が、ともかく先を急ぐしかない。どれほど歩いたことだろう、30メートルばかり下に林道らしきが見える。そのころには勾配も徐々に険しさを増してきていたから、躊躇なく林道を選ぶ。道は緩やかに下降していて、まだ新しい轍らしきも付いている。
 以後は、この林道がはたしてどこへ通じているのかを気にしながら、とにかく歩く。体調は悪くなく、ヤマかっちゃんの握ってくれた塩だけの握り飯を歩きながら食べ、空腹感をいやす。
 林道の行先が、期待から「あそこ、あそこしかない」という確信に変わるのは、遠くでするチェーソーのかすかな音を聞いてからだ。そこで初めて今いる位置を把握し、背中を押し続けていた焦燥感も和らぐ。1週間ばかり前に、はるか上空に架線を設け間伐作業をしている現場を、OZW夫妻と小黒川林道を下る途路に目にしていたからだ。





 出ました出ました、ようやく小黒川林道へ。後はさらに馬力を上げて歩くだけ、歩くだけ、この谷の見事なまでの紅葉も、カメラにおさめるそのわずかな時間すら嫌って。それにしてもこの絢爛たる紅葉はどうだ、感服、平身!

 かくも雑駁な記録とはいへ、考えることはいろいろとある山歩きで、そのことを次回に書きたい。
 
 山田さん、冬季利用についてはもうすぐここにその詳細を載せます。お待ちください。
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  秋の鹿嶺高原を訪ねる

2013年10月22日 | 入笠周辺の山と谷
 天気:晴れたり曇ったり、気温:15度C(昼)





 コースレコード:
 出発8:15 - 半対峠10:00 - フトノ峠11:55 - 鹿嶺高原12:30 - フトノ峠13:1 0 - 小黒川林道14:30 - 南沢3:10 - 帰着:3:45 (所要時間:7時間30分、 但し含む 休憩時間3分1回)

 渋るヤマかっちゃんを半ば恫喝して出発したのが、予定より15分遅れの8時15分。ヤマかっちゃんは、猫と犬という奇妙な家族構成で、その朝いずこからか再登場を決めたのだった。
 
 高座岩まで行かぬうちに、ヤマかっちゃんの愛犬「二歩」は姿を消す。半対(はんずい)峠までは緩やかなアップダウンの尾根道を快調に行く。コースはハッキリしていて標識も1キロごとにあり、赤布も概ね適切。
 
 半対峠からがキツイと、このコースをすでに体験した北原のお師匠より聞いていたが、上り下りが大きくはなったがさほどのこともない。出発時は快晴だったのに、霧が乱舞して視界はよくない。白岩岳も仙丈も北岳も雲の中。その日最初で最後の休憩をとるも、このころからヤマかっちゃんの調子が下降線を描き始めた。そしてついには鹿嶺高原まであと4キロという地点で、登山続行を断念。やむなく彼を捨てる。
 
 実は二人ともヘッドランプを持っていなかった。そのため、できれば明るいうちに帰りたかった。ヤマかっちゃんもそのあたりのことを忖度して、歩行速度を落とさないようにと、彼だけ一足先に引き返すことにしたのだろう。山の経験は充分あるはずだから、言うとおりにした。
 
 フトノ峠を過ぎ、鹿嶺高原まで2キロを急ぎ、昼少し過ぎに到着。期待の甲斐駒は、やはり雲に遮られて見えない。やむなくすぐ折り返す。20年以上も前、まだ小さかった娘が怖がった見晴台が懐かしかった。娘やその時同行のHRS君、二人の姪のことも思い浮かべながら帰りを急ぐ。(つづく)
 
 
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  入笠牧場は「銀河鉄道の始発駅」を僭称させてもらいます

2013年10月20日 | 入笠牧場からの星空
 天気:雨、気温:10度C(昼)


                                  秋のオリオン    




     真夏の天の川




     オリオン昇る



     アンドロメダ銀河
 
 お待たせしました。今日はあまり余分なことを書きません。素晴らしい星の写真はすべてUme氏の作品です。氏は、入笠の写真を撮り続けて40年のベテラン。今回は此処を訪ねた人が、肉眼で見ることのできる、入笠牧場の自然な夜空にこだわってくれました。

 ハードボイルド川島氏、これでよいですか?
 Umeさん、ありがとうございました。またぜひ、入笠の素晴らしさを伝えることができるような作品を、お願いいたします。
 今夜は激しく雨の降る夜。明日晴れたら、鹿嶺高原往復25キロに挑みます。また、その報告もお楽しみに。





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 罠師の戯言,徒し事

2013年10月19日 | キャンプ場および宿泊施設の案内など
 天気:曇り、気温:10度C(昼)

   
      罠に掛かった穴熊
                                    

 牛が下りてしまって、いつものことながら虚脱感ヒシヒシ。まあしかし、呆けてばかりいるわけにもいかないから、とりあえず昨日捕獲しておいた穴熊をリリースすることにした。
 穴熊と言えば、ときおり聞く「たぬき汁」とは、実は穴熊の間違いではないかと思う。それというのも、このあたりの猟師の話では、穴熊が野生動物では一番美味しく、通には好まれているのだそうだ。外見が似ているから、「穴熊汁」がいつの間にか「たぬき汁」になってしまってもおかしくはないような気がする。
 なぜそんなに評価の高い穴熊をリリースしてしまうのかというと、この動物は森の掃除屋さんだからだ。それに愛嬌があって可愛いし、鹿のように作物に害をおよぼすわけでもない。
 コツンと頭を叩いて失神させ、それから罠をはずしてやる。いくら臆病な動物でも近寄れば必死で抵抗するし、熊手のような爪は鋭く危険だ。

 鹿は草を食べつくす。あまり徹底的に食べられると、もうそこには牧草が生えてこなくなる。何もしないでいるわけにはいかない。鹿の繁殖率は高く、放っておけば4,5年で頭数は倍になる、と前にも書いた。
 今日も牧区を見回れば、かなりの数の鹿が我が物顔で草を食べていた。最近は小鹿ばかりが掛かり、殺処分は精神的に負担が大きい。しかし、鹿が冬に備えて栄養を付けようとするこの時期にやらねばと、思い切ってくくり罠を10台ばかり一気に仕掛けた。大型の囲い罠は昨日のうちに準備を終えた。捕獲目標は今年も100頭。

                                    
                                くくり罠

 昨日のブログへは、好意的なコメントを幾人からもいただきました。ありがとうございました。今後ともブログ、そして何よりも「銀河鉄道の始発駅」を僭称する入笠牧場(及びその施設)を、よろしくお願いいたします。
 2夜を過ごした牧場を下りて、今夜は下界へ帰ります。
 

                 

 
                                

 
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