
朝方に重機を下へ運ぶために大型トラックが来た以外は終日、人も、車も通らない。静かな初冬の山に戻り、きょうも小屋や周辺の冬支度に追われた。洗濯、露天風呂の養生、そして迷っていた水道の水を落として取水場の本管を開ける、といった作業に「済み」の印を入れた。これで、牧を閉ざす前にやるべきことはほぼ終わったことになる。
その中でも、特に水回りについては、水道を落としてしまえば不便この上ないことになるからと、ぎりぎりまで延ばしに延ばしてきた。しかし、明日あたりから一段と寒くなるようなので、ついに水道を止める決断をした。これで来春まで不便を覚悟しなければならない。因みに、ここには水道栓だけでも15か所、その他本管と繋がるバルブが8か所もある。行ったり来たり、上ったり下りたりを、幾度となく繰り返したから、きょうでも8千歩以上歩いている。
冬季でも本管の水を流して取水できるようにしたのはそれほど古いことではない。恐らく3年前、2016年だったと思う。当てずっぽうに取り出したその年の作業日誌には11月、しきりに「初の沢」の文字が出てくる。前任者の時代に崩落で管が露出し、垂れさがってしまった部分を新しくして、埋設し直すというかなりの大仕事をした。それ以来、厳冬期でも、取水場へ行けばこんこんと流れ出る水を利用することができるようになった。
その日誌には「籾殻」という文字も出てくるが、これには笑う。1本の棒を天秤棒にして、前後に大きなビニール袋に入れた籾殻を担いで初の沢の奥まで運んだことをよく覚えている。籾殻は、凍結を防止するために保温材にしたのだが、明日はそこへも行ってみるつもりでいる。
牧を閉じるに際し、毎年やっていたことを参考にする。そのために、忘れていたことはないかと過去の作業日誌を開き確認するわけだが、あんなことや、こんなこともあったかと、つい、切りのない思い出に更けることにもなる。
そろそろ快適な小屋の方をお勧めしたい。
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